見出し画像

オニオントーストにブレンドコーヒー

浅草にひさしぶりにきて朝を「アロマ」でとることにする。

カウンターだけの小さな喫茶店。ご主人ひとりでやってらっしゃって、もう80はすっかり超えてらっしゃるんだと思う。
なのに矍鑠。ただ仕事のスピードはゆったりで、ほのぼののんびり、幸せな気持ちになれる。いいお店。
目立つところに「オニオントーストはテイクアウト致しかねます」って張り紙がある。
「致しかねます」て言葉遣いがまずステキ。

おいしいというので人気の商品だけど、時間が経つと品質が著しく損なわれてしまデリケートな料理だから、お店で食べるに限るのでしょう。
そのオニオントーストをお願いし、ブレンドコーヒーをお供にします。

コーヒーカップにお湯を注いで温めて、パンをトースターに入れてパチンとスイッチ入れる。カウンターの上に置かれたコーヒー用のミルクのピッチャーの周りに氷をギッシリ入れて冷やしてる。昔ながらの工夫でしょうネ…、なんだかやさしくニッコリします。

香ばしい匂いがしてくる。
パンがじっくり焼けてく匂い。
トーストの焼ける香りに胸がギューンってなっちゃうってなぜなんだろう。
幸せな朝の匂いだからかなぁ…。
トーストにバターをカリカリ塗る音がして、コーヒーの匂い追いかけやってくる。
まず熱々のコーヒーをカップに注いで、オニオントースト。
コーヒーのカップは分厚く、ずっしり重い。しっかり蓄熱してるから中のコーヒーがずっと熱くてフーフーしながらズズッと啜る。
たっぷりの空気と一緒に口の中へとやってくるから、コーヒーの香りが一層はなやかになる。目が覚める。

紙ナプキンの上にトースト。こんがり見事に焼けていてお皿に乗せる前にしっかり休ませ蒸気を逃しているから、敷いた紙ナプキンが濡れず乾いたままというのがまたステキ。

トーストではさんでいるのは生のタマネギと薄切りピクルス。塗っているのはバターだけ。なのに不思議なほどに豊かな味がするんです。

辛みと旨みと酸味がトーストの甘みと混じって味がととのう。おいしい料理を構成する必要なものがすべてある。しかも「過ぎたもの」がなにもない。
おいしいけれど、おいしすぎない。それが朝にはありがたく、何度食べても食べ飽きない魅力になっているんでしょうネ。

急がずのんびりしみじみ食べて、朝の時間をぼんやりたのしく無駄遣い。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?