オキニイリのパニーニ。二口分だけお供えにする
月命日の今日。タナカくんの大好物を食べてはじめようと「パニーニ一番」。
「パンとエスプレッソと。」が運営してるパニーニの専門店。
タナカくんが原付きにのって買いに来て、ひとつはバイクを運転しながら、2個目を家で食べ直すってくらいに本当に好きだった。
乾かぬように湿度を保った冷蔵ショーケースに10種類ほどのパニーニが並ぶ。
いつも選んだのは「プロシュートルッコラのパニーニ」。エスプレッソをお供にたのむ。
「おひさしぶりです」ってお店のスタッフから声がかかった。ほぼ半年ぶりのひさしぶり。
「いつもマキアートをたのんでらっしゃいましたよね」っても言われる。
マキアートが好きでずっとたのんでいたけれど、プロシュートのふくよかな塩気と脂のコクに、エスプレッソの苦味と酸味があうということに前回気づいて、今日もそれ。
屋根付き屋台のような小さな店です。
壁なし、ドアなし、冷房なしのほぼ屋外のベンチの前で健気に首ふる扇風機。ありがたいことに今日は曇天。日差しやわらか、のんびりと待つ。
プシューとエスプレッソマシンから噴き出す蒸気。
パンが焼ける香りがしてきて鼻をくすぐりお腹を鳴らす。
5分ほどで出来上がり。
パニーニを包んだ紙には「8212」と数字のスタンプ。
読みはパニーニ(笑)。
電話番号も8212なら言うことなしなのに残念ながら別の番号。
やわらかい光を浴びて、中のパニーニが透けて見えるのが艶っぽい。
包みから取り出すパニーニはずっしり重く、焼けたパンの香りがひときわ強くなってく。
ずっしり重い。
そしてあたたか。コロンと丸く、つぶれたラグビーボールのような愛らしさ。
表面にストライプ状の凸凹がある。
波型の鉄板を押し付け焼いた証の凸凹。はみ出す生ハム、そしてルッコラ。いつもの景色にウットリします。
バクッとかじると焦げた表面がカリッと歯切れ、生地はふっくら。ほどよき塩味、自然な甘みに小麦の香りが混じってゆっくりやわらかになる。
ルッコラがザクザク歯切れ、そこに生ハムがねっとりからんで混じり合う。ルッコラの香りに渋み、ハムの塩気に脂の甘み。
調味料はオリーブオイルだけなのに、味がしっかり整うんですネ。パンに比べてルッコラや生ハムの量は少なく、なのにその存在感は強烈で、まごうことなきイタリア料理の味がするのがオキニイリ。
酸味の強いエスプレッソをクイッと飲んで、酸味がひいた頃合いで水を口に含むと不思議。うま味や甘みが舌の中から湧き出してくる。
今日はお供え用に二口分ほど残して紙に包んで家に持ち帰る。空の向こうでよろこんでくれはずです…、席を立つ。