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雨の土曜日にアナゴフライと鳥豆腐

銀座の路地がボクを呼ぶ。

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大衆割烹三州屋。銀座二丁目のビルの谷間に小さな路地。その突き当りに大きな看板、暖簾が揺れる。
その暖簾には店名と一緒に「御食事」「活魚一品料理」と書かれてる。
御食事とは飯とおかず、そして汁。お腹を気軽に満たすことができるということ。

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活魚一品料理はそれを肴に酒を飲んで語らい、たのしい時間をお過ごしくださいということで、つまり食堂使いもできる居酒屋。でもそう直接的に言うと想像力を発揮させる余地をなくして粋じゃない。
「大衆割烹」という時代遅れに聞こえる言葉も、この場所、この店、この風情にはぴったり感じる。オキニイリ。

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平日は近隣のサラリーマンで昼は混雑するお店です。けれど土曜日。しかも雨。お店の中はのんびりしていてボクものんびり食事をたのしむことにする。

アナゴのフライがありました。このお店のランチ商品でとびきり好きなオキニイリ。一緒に鳥豆腐をたのむ。

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昼も夜も、ここにくると必ずたのんでいたのが鳥豆腐。注文するとあっという間に提供される。だから特に夜はまず座るとこれを注文し、一緒にビールをたのんで飲む。タナカくんはなにか食べるものがないとお酒を飲まない人で、だからこういう料理はありがたかった。

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しかも熱々。皮をきれいに剥いた鶏肉はホロホロ崩れるほどに煮込まれ豆腐に味がしっかり染み込む。春菊の緑の香りがおいしくて食べるとお腹があったまるから、酒のあてにはますます良かった。一緒についてやってくるちり酢がこれまたシャキッと酸っぱくおいしくて、汁というより小さな鍋って感じさえする。

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ご飯に漬物、それから赤味噌のなめこ汁。
これにアナゴのフライがついてフライ定食のひと揃え。

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大きく、太った分厚いアナゴ。
細かなパン粉をぎっしりつけてサクッときれいに揚げられている。
パン粉の色は明るくて黄金色と呼ぶにふさわしいうつくしさ。
噛むとカサッとパン粉が前歯をくすぐってブルンとアナゴが歯切れてく。
ふっくら、むっちり。
弾力のある歯ごたえがしばらく続いてそれもとろけて消えていく。アナゴの香りと強いうま味がパン粉の風味で引き立てられて、ウスターソースをたっぷりかけてると油の香りがスッキリしてくる。オゴチソウ。

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千切りキャベツにサラダに芥子。レタスに薄切りキュウリ、トマトを塩で軽くもみマヨネーズをまとわせ作った野菜の洋風おひたしみたいなサラダがおいしく大好きで、しかも缶詰の黄桃がひと切れ入っているのがたのしい。甘酸っぱさが口を整え、フライをおいしくしてくれる。

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汁の中にはなめこがたっぷり。しかも上等ななめこのせいで汁全体がとろとろとろみがついて喉を撫で回す。カブとキャベツのぬか漬けもよき状態でご飯がすすむ。添えられているレモンが大きな串切りで、すべてにおいてサービス精神旺盛なのことにニッコリします。
座っただけで5万、10万という寿司屋があってしまっている銀座は格好悪いけど、こういうお店がずっと続いていく銀座ってかっこいいなと思う昼。


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