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神田まつやの天南ばん

電車に乗る前に火点時の町を歩いてみたくて秋葉原から淡路町に向かってテクリ。
駅に近づくにしたがっておいしい匂いが漂ってくる。「神田まつや」の匂いです。

提灯、行灯に灯は点っていないけど、昔風情の店の窓から明かりがこぼれて手招きしてる。
軽く虫養いでもしておこうかと中に入ると、これがにぎやか。
ほとんどの人がお腹を満たすためにそばをたぐる昼時と違って、蕎麦前でお酒をたのしむ人がほとんど。
昼とは違ったしっとりとしたにぎわいがある。

天南ばんを注文します。ここで一番のオキニイリ。

温かいそばに海老の天ぷらと包丁を入れて長方形にととのえた白いネギ。
天ぷらそばも当然あって、それは丼の端から端をまたぐように大きな海老の天ぷらを2本使った贅沢なもの。
それに比べて天南ばんの海老は小さめ。
男性の人差し指くらいの大きさでしょうか…。

それを3尾。
まずそれぞれを天ぷらにする。
3尾ならべて衣でつないで筏のように仕上げたものが使われている。

そばの天ぷら。
特に汁そばに浮かべて食べる天ぷらは衣が命。衣が汁を吸い込んでとろけることで汁もそばもおいしくなってく。
だからこの天ぷらに出会ったときにはたちまち虜になっちゃった。
食べてるうちにつないだ衣が崩れ、海老の天ぷらが一本、一本離れてきます。

崩れた衣には海老の香りが移ってこの上もなく贅沢な天かすみたいな役目を果たす。
海老はこぶりながらも加水をしない自然な海老。ほとんど伸ばさずだから腰を曲げた姿でだから食感むっちりたくましく、しっぽもカリッと揚がって旨い。

カエシの風味がどっしりしていて後味酸っぱいお江戸のそば汁。麺が吸い上げ口の中へとやってくる。
ざっくり歯切れるそばの食感、そばの味や風味はかすかで唇を撫でる感じや喉越しを味わいおいしい汁をこころおきなく味わうためにある料理。
その汁にコクや風味をつける役目が天ぷら衣。そう思ったら合点がいきます。

熱い汁そばにも蕎麦湯がついてくるのがここの流儀。
そばをたぐっておいしいように濃い目の汁に仕上がっていてそば湯で割って飲んでということ。

ネギを加えてそば湯を注ぐとカエシの味が一歩下がって出汁のうま味や風味が顔をのぞかせる。なんとも粋なおゴチソウ。


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