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生まれて今まで一番たくさん食べたかつ丼

金曜日の夜、尾張屋で夕食をとる。

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いつもやっているのかどうかわからないほどぼんやりした外観で、昼はサンプルケースのカバーが開いているかどうかが手がかり。

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夜になるとメインの袖看板が点灯しているかどうかがひとつの目印で、もうひとつはサンプルケース。四段構造の棚のそれぞれ背景の色がほんのちょっとだけ違ってて、これがキレイなグラデーション。
お店に入るといつものおばさんがニッコリしながら、湯呑をひとつ取り出してお茶を注いでトンと置く。もう「お一人ですか?」とは聞かれないのがありがたいやら、さみしいやら。
かつ丼たのんでちょっと待つ。
「卵はかためで」っていい忘れた…、って思っていたらボクの代わりに「卵かためで」ってインターフォンで2階の厨房に注文がとぶ。しばらく待ってお待たせしましたって出来上がり。

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とんかつのパン粉衣をやさしく覆って仕上がるふっくら卵。
出汁を吸い込み、沸騰しながら煮上がった証の細かな穴がポツポツ開いている。
もっとおいしいかつ丼はたくさんあるに違いない。
うちの近所にも一軒、この上もなくおいしいとんかつ屋さんのかつ丼がある。
けれどボクが生まれて60年。
一番食べたかつ丼は間違いなくこのかつ丼で、だからおいしい、まずいって基準でどうこう言えないほどに愛らしくってなつかしい。

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分厚いとんかつ。筋を切ってふっくらさせて、肉はやわらか。パン粉衣も分厚くて肉を食べてるというよりも出汁を含んだおいしい衣を食べているような感じがするのが、いかにもそば屋のかつ丼的。
出汁を含んで固まった卵もフワッとやわらか。シャキシャキ感を残して煮上がった玉ねぎも、パン粉衣の油の風味が混じってどこを食べてもかつ丼味になっているのがたまらない。

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玉子丼に親子丼、かつ丼、天丼、かわったところでにしん重なんてご飯メニューがあって全部食べてみたけれどかつ丼が突出しておいしかった。にしんそばが好きなタナカくんがワクワク顔で食べたにしん重。どんな味?って聞いたら、おいしいけどユニークだねって評して二度と注文しなかった(笑)。

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たっぷりの汁がほぼふわふわ卵に閉じ込められてる。だからご飯の殆どは白いまま。なのにふわふわ卵をお供に最後の最後までおいしく食べられる。

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いりこの出汁がほんのり苦くスッキリ酸っぱい味噌汁は、瀬戸内の田舎の汁の味がする。カリカリたくわんで器をキレイに拭って完食。オキニイリです、オゴチソウ。


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