地焼きの鰻は味わい格別
昼に鰻を食べようと「なまずや」っていうお店を訪ねる。
岐阜界隈に何店もお店のある小さなチェーンの一店舗。実は7年ほど前に一度来たことがあり、ところが店が改築されてすっかりあたらしくなっててびっくり。
以前の大衆的な風貌から、モダンデザインが行き届いたカフェのような造りで「これが鰻屋?」って思うほど。
ただ店の外にも流れ出すタレが焦げるおいしい匂いは鰻屋さんのそれそのもので、目からはいってくる情報と鼻が感じるものが違ってちょっとドギマギしてしまう。
座り心地のよい椅子に広いテーブル。座敷がメインの前の店に比べて椅子席メインというのがおじさん的にはありがたい。
ひつまぶしに鰻重、鰻丼、鰻定食と揃っててひつまぶしがさすが一番人気のようで、けれどボクは鰻丼派。特上鰻丼を選んでたのむ。ご飯控えめでとお願いしました。
並、上、特上と用意がある。
鰻の質の差じゃなくて、鰻の量で値段が変わる。
だから鰻はあらかじめずっと焼き続けているのでしょう…、それほど待たずに料理は到着。
どっしりとした丼にお椀に漬物。
お椀の中は肝吸いです。
蓋を開けるとご飯を覆い尽くすように鰻の蒲焼き。
これで、これ。
蒸さずに仕上げる地焼きの鰻。表面パリッ、鰻の縁がめくれるように焼きあがり、タレの焦げた香りが鼻をくすぐる。脂はツヤツヤ、分厚いかば焼きを無造作に盛り付けているダイナミックな姿にうっとり。
これで3600円とは、東京では考えられない値頃感。思わず柏手打ちたくなるようなめでたさにウットリしながら、さて、パクリ。
さっくり歯切れる。
途端にジュワッと脂が染み出し、唇濡れてひんやりとする。焦げたタレが香ばしく、強い鰻の旨味が広がる。
かなり甘めでサラッとしている独特のタレ。にもかかわらず鰻の旨みや脂の風味、そして香りが力強くてタレの甘さに負けることがない。むしろタレが甘いからこそ鰻の味に負けないのか…、って思わせるほどに地焼きの鰻の力強いこと。関東風の蒸してふっくらさせた鰻もおいしいけれど、ボクは地焼きの鰻のサクサクとした歯切れと脂の風合いが好き。
食べ進めるとご飯の間から鰻がでてくる。熱々ご飯で蒸らされて若干ふっくらやわらかになり鰻の風味が周りのご飯に移って一層おいしくなるのにまたウットリ。太い拍子木のタクワンががりっと歯応えたくましく口をすっきりさせるところも粋でたのしい。オゴチソウ。