カレー丼でもカツカレーでもなく、カツカレー丼
以前から食べたかったものを…、と泰明庵にやってくる。
食事時を過ぎたのんびりした時間です。
相変わらず厨房周りの壁いっぱいに商品の名前と値段を書いた札が張り出されていて、なんともにぎやか。
目当のものを注文し、ぼんやり待ちます。
予約の電話や問い合わせが結構ひんぱんにかかってくる。そのほとんどがランチは予約できるのかとか、あの商品はあるのか、あるいはいつまでやるのかと普通の蕎麦屋ならば受けないであろう内容。
有名店です。けれど有名になる準備も覚悟もまるでしないで、勝手に有名になっちゃった店。その対応がしっかりできているわけでもなく、ひとつの電話にてんやわんやの大騒ぎ。受話器を置くとまた次の電話がかかってくるような、大変だなぁ…、と思わされます。SNSな時代の苦労。ご苦労様。
さて目当の料理が到着です。
お盆の上に丼、お碗、それから漬物。
さてこれが何に見えるか、自分で注文した内容をしばし棚上げして考える。
カレーがたっぷりかかった丼。
お椀に汁がなければカレー南蛮的。
けれど汁の存在と添えられているのがお箸じゃなくてスプーンとなるとカレー丼のようでもある。
さて食べようかとスプーンで軽くカレーの中を混ぜてみると、そこからカツが顔を出す。
分厚いとんかつ。つまりこれは「カツカレー丼」。カツカレーじゃなくカレー丼にカツを合わせた料理でござる。カツカレーを売る蕎麦屋は結構多いけど、カツカレー丼というのはあまり例がなく、お店の人も「丼ですよね」「ご飯ですよね」と二度確認をするほどでした。
カツは揚げ置き。けれど分厚くふっくらしていて出汁で一旦煮てるから衣はしっとり。出汁の味が中までしみてる。そこにかかったカレーはとろとろ。出汁で割って片栗粉にてトロミをつけた蕎麦屋のカレー。鰹節の香りであったり軽い酸味が特徴的で、シャキシャキを残して仕上げた玉ねぎに豚バラ肉がどさっと入って、具沢山。
食べるとカレーはすべすべで、ご飯が口の中でスルスル転がりちらかる感じが軽やか。カレーよりもみずみずしくて、食べてるうちにどんどんトロミが取れて最後は汁っぽくなる。それがやさしく独特で、あっという間にお腹に収まる。味噌汁、甘いたくさんとお供もおいしく好奇心も満たされました。オキニイリ。