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不便をたのしむカフェのお手本、グッドモーニングカフェ千駄ヶ谷

2010年。
千駄ヶ谷にグッドモーニングカフェというお店ができた。
できたときには「こんなところ?」とみんな不思議に思った。
千駄ヶ谷という街は都心にあってオフィスも住宅も少ないエリア。理由は東京体育館がドーンッとあって、ビルは少ない。緑は豊かで街全体が公園の中のようなムードはある。
つまり、ワザワザ行かなきゃいけない場所。
でもワザワザ来ても何かがあるわけじゃない場所で、そんなところでカフェなんて…、ってみんな思った。
けれどこれが大繁盛。
それまで都心になかったのびやかな空間におおらかな空気。料理もサービスもしっかりしていて千駄ヶ谷という駅でワザワザ降りる目的を作ってくれた。

ただ5年ほどして閉店。大家さんとの契約更新交渉に失敗しての撤退でした。
勿体無いなぁ…、と思っていたら場所をかえてまた開業。
その場所というのが千駄ヶ谷という街のランドマークのひとつでもある東京体育館の別棟一階。
このエリアにおけるロケーションとしてこれほど恵まれた場所はなく、でもボクはあんまり好きじゃなかった。
理由は体育館に集まる人たちの「ついで利用」の場所になってしまったから。いいカフェというのは「不便をたのしむ人たちだけで空間が満たされている」場所。
便利すぎる場所に出店してしまうとその性格が変わってしまう。

ちなみにそのお店も施設整備のためクローズしちゃった。
閉店のたびにさみしい思いをする次を期待する気持ちがどんどん濃くなっていく。
少々の不便はものとはいたしません…、と思っていたら千駄ヶ谷のグッドモーニングカフェが再開したよ…、とうれしいニュース。
流浪の果てにたどり着いたのは千駄ヶ谷の駅の反対側。新しくできたマンションの一階というロケーション。
今までのロケーションに比べて、住宅地感が強い場所です。千駄ヶ谷というよりも新宿御苑の外れといってもいいかなぁ…、一番目立たず一番駅から不便な場所。
ただ、もしかしたら今までで一番、カフェの立地としてはいいのかもって思ったりもする。ようやく終の住処を見つけたってことかもしれない。

のびやかな空間にどこに座っても厨房を間近に感じることができるレイアウト。
座り心地の良い椅子に外の気配が店の隅々までやってくる明るいムード。
卵料理をメインにしたアメリカンブレックファスト的な一品選ぶ。
卵料理はスクランブルエッグ。
グリルドベーコンを添えてもらって、ブリオッシュと食パンのトーストにサラダにバターでひとそろえ。おかわり自由のコーヒーにミネストローネがついてくる。

スクランブルエッグは世界一のスクランブルエッグのような仕上がりです。よく解いた卵をあまり触らずドレープつけて焼き上げたもの。塩でしっかり味は整い胡椒をたっぷりかけて風味を添える。
グリルドベーコンはしっとり感を残してこんがり焼き上げたもの。野菜サラダはオリーブオイルと塩、柑橘ジュースで仕上げた、さわやかにしてやさしい味わい。キャロットラペはオレンジジュースで甘く仕上がり朝の健康。ニッコリします。

パンはどちらもよく焼けている。
こんがり小麦が焼き切れて、おいしい香りが湧き立つような見事な仕上がり。
ブリオッシュ生地はさくっと軽くてほのかに甘い。スクランブルエッグをのっけて食べると、なんとおいしい。さっくり歯切れた軽やかな生地にポッテリ焼けた卵が絡む。卵が飲み込んだバターが染み出し、そのまま食べてもとろけがおいしいパンを一層とろかしていく。

むっちりとした食パンは二枚に開いてバターを塗り込めベーコン挟んで切り分け食べた。惚れ惚れするほどよく切れるナイフのお陰でベーコントーストサンドイッチがキレイにできる。前歯をカサカサくすぐりながら焼いたベーコンとバターがひんやり舌を濡らして消えていく。
料理は確実。しかもお店の人の笑顔がすばらしく、朝の散歩がたのしくなるようなステキなお店。オキニイリ。


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