エビフライで父を偲ぶ日
明日は父の誕生日。生きていれば今日で87歳でした。
父を看取ったわけではなからかなぁ…。命日を偲ぶ気持ちよりも誕生日を祝う気持ちのほうが自然に感じる。
いつ何が起こってもおかしくない状態で病院で寝たきりになっていた晩年だった。だから誕生日をむかえることができたということが格別うれしかったのでしょう。
電話をかけると自然と長話になりました。
そして最後はいつも「おいしいエビフライが食べたいなぁ」と言ってた。父にとって最高のオゴチソウはエビフライだったのです。
こだわりがありました。
エビは有頭でなくてはならず、場所は洋食店でなくてはダメ。
重たいナイフとフォークがなくてはならずパンではなくて茶碗ご飯でもなく皿盛りのライスでなくてはならなかった。
そういうエビフライを父の誕生日に食べようと思ったのだけど明日は台風が直撃しそう。それで前日、「上野洋食遠山」にくる。
上野駅の上野の森側にでた正面の商業ビルの2階にある店。
窓が大きく明るくて、オープンキッチン。どの席に座っても厨房の気配を感じることができるほどよい大きさ。
お店の人や他のお客様の視線を軽く意識しながら、けれど決して煩わしくなく、座ると自然と背筋が伸びておいしい予感に笑顔が溢れる。好きな店。
エビフライとハンバーグの盛り合わせセットをもらう。
まずサラダ。
サラダ野菜に硬めに茹でたコンキリエのパスタをのせてアラビアータ風のソースドレッシングで味わう提案。
サラダというより野菜とパスタの前菜料理のようでニッコリ。
コンソメロワイヤルがそれに続いてやってくる。
コンソメ味の卵の茶碗蒸しの上にコンソメスープを流した料理。
なめらかな卵がフルフル、舌を撫でるようにやってきてスープと一緒にとろけて消える。
味わい濃厚なコンソメは風味ゆたかで香り芳醇。最後に軽い酸味を残して口をスッキリしてくれる。
お腹の準備が整ったところでメインがやってくる。
有頭のエビ。
ほどよく大きく、しかも2尾。
ボール状に整えられたハンバーグにたっぷりのデミグラスソース。
エビフライ用に添えられているタルタルソースはたっぷりでしかも限りなく卵サラダといった仕上がり。
付け合わせのマッシュポテトの上にナスとズッキーニを飾って仕上げるうつくしさ。父のよろこぶ顔が見えるよう。
エビはむっちりよい状態。タルタルソースをのせるようにして口に運ぶも、大量のソースに負けぬ濃厚な味。
力強い香りに歯応え、甘みも十分。オゴチソウ。
残念だったのが頭が黒くなっている。鮮度に少々難ありだったのでしょう…、足や味噌まで食べることができれば完璧だったのにってちょっと思った。しょうがない。
そういえば父はフォークの背中に器用にご飯を貼り付けいつも食べてた。真似して食べる。
がっしりとした食感の肉。噛めばジュワッと肉汁染み出し、デミグラスソースも上等味でニッコリしちゃう。最後にご飯をお皿に移しソースと混ぜて残さず食べる。お盆最後の夏の昼。