端正でうつくしきそば、うつくしき味

蔵前からどこを経由して家に帰ろうか…。
そういえば大江戸線で本郷三丁目に出られたはず。そこまでいけば丸ノ内線で四谷三丁目はもう近い。
本郷三丁目にはおいしいそば屋があって、天丼の〆に食べて帰ろうと思って「蕎麦切森の」。

小さな店です。１４席しかない。
揚げたての天ぷらを一個一個運んでくれる天ぷらそばが有名で、ボクの隣でエビの頭をカリカリ食べる音がしている。
惹かれるけれど天丼を食べたばかりです。我慢する。
辛味大根そばをたのんだ。

まず辛味大根をおろして軽く搾ったものが器に入ってやってくる。タレは薄口、辛口の２種類あって断然辛口。
そして主役のそばがくる。

ザルの上にこんもりそばが盛り付けられて、そのみずみずしきこと、水から生まれて水をまとってそこにある…、ってそんな感覚。
まずはタレになにもくわえず軽く浸してズズっとすする。
ゴリゴリ歯切れるハリのある麺。そばの香りが鮮やかで、これほど細いのに力強さを感じさせる。
タレはスッキリ、醤油の香りと出汁のうま味が口に広がり、と言ってそばを邪魔しない。あとに残る酸味も軽やか。

そばをタレに浸したところに辛味大根をのせてズルンとタグってみると、不思議なほどに辛味大根を甘く感じる。辛味大根だけを食べると辛いんです。けれどタレのうま味のせいでしょう…、。

全部食べたら「熱いですよ」と鉄瓶に入ったそば湯が運ばれる。ポッテリとした濃いそば湯。ネギとわさびをタレに入れそば湯を注いで飲めばこれがびっくりするほど甘いんです。

タレだけ飲むと醤油の風味に甘みが隠れて辛く感じる。それがそば湯で甘くなる。オモシロイなぁ…、そばの世界はオモシロイ。

蕎麦切 森の (本郷三丁目/そば)