ベルクという小さな楽園
新宿のベルク。
この店がある新宿に住めていることを心から感謝できる店。
季節季節で空気が違う。時間時間でリズムが違い、そこに集まる人でムードがかわってく。お店というのは生き物みたい。街の空気と集まる人の気を餌にして息づくモノだね…、ってしみじみ思う。
ビール片手にゆっくり朝の時間をたのしむ人もいるけれど、朝のリズムは引きしまっていてせわしない。
それに比べてお昼過ぎのここのムードは本当にのんびり。午睡からあくびしながら目覚める感じが心地よい。
マイスターハム&ケーゼサンドイッチを選んで食べる。
サンドイッチとはいえパンに具材をのせただけのシンプルなさま。けれどハムはたっぷり、パンからこぼれてお皿の上に垂れ下がり、チーズはたっぷり。互いに重なり合ってパンを隠す贅沢。しかも一枚のハムに脂ののった白いところと、肉の繊維が詰まった赤いところが混在。得した感じ。
いつもはハムの上にピクルス。
チーズの上には赤いパプリカの細切りをクルスにおいて彩りとする。
今日はパプリカがなかったようで、代わりにマーシュ。
ちょっと地味めな姿もいいね…、悪くない。
ハムがのっかるパンをまずは一口パクリ。歯切れてボロっと口の中へと転がり込むパン。舌にさわる感じはしっとりしてるのに、実は乾いてスポンジのよう。口の中の唾液を一切合切吸い取り、口を乾かせる。
あぁ、大変だ…、と思ったところにハムを発見。口の温度で脂がとろけ乾いたパンを潤しとろかす。互いが互いを引き立てあうさま、あまりに見事でウットリします。
調味料はひとつも使っていないのです。なのにキレイに味が整う。
素材同士が助け合い、おいしくなっていくのでしょうネ…、ハムの脂の甘みであったり塩のおいしさ。チーズの酸味に乳製品のどっしりとした旨味が不思議と、そのままそれだけ食べるより素直に、強く感じられる。そっけないようなパンの味わいあればこそ。
ハムやパン、チーズをほんのちょっとだけ残して残りはパンで挟んでサンドイッチにしてパクリ。
前歯でパンがクシュッと潰れ、縮こまりながら前歯で歯切れ、歯切れた瞬間、口の中でバサッと散らかる。口の中は一層乾いて、慌てて舌が味わうための手がかり探してチーズやハムを探り当ててく。チーズのとろけに脂のとろけが混じってあとは一気呵成になめらかになる。あぁ、おいしいなぁ…、と味の余韻をたのしみながらカフェオレゴクリ。
ミルクの甘みと甘味が引き立つやさしいカフェオレ。
のどごしポッテリなめらかで、お腹をしっかりあっためる。
パンをちぎって浸してみると、スポンジみたいなパンが吸い込む。ゴクゴク飲んでそっと持ち上げないとちぎれてしまいそうになる。
それをパクリ…、甘さを抜いたフレンチトーストかくあるべしって感じのごちそう。すべてにおいてやわらかい。
ハムが半枚、チーズがひとかけ、パンもひとかけ、ピクルス一枚。この真中にビールがあったらほぼ完璧な宇宙ができる。いつもはみかけるビールを飲む人が今日は不思議と見当たらぬ。真面目な新宿はいささかちょっと堅苦しいや…、と思ったりする。仕事する。