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寒い冬には鍋焼きうどんもまた乙なもの

月命日の祝日の今日。浅草に足を伸ばして「尾張屋」で昼。

最近、ずっと本店を選んでいたけどタナカくんと一緒のときによく来てたのは雷門の近くの支店。ひさしぶりにそっちにしてみる。
いかにも浅草風の設えで、入り口近くの席に座ると昼は明るい。
そういえば、「ここって鍋焼きうどんもおいしいのかなぁ」ってタナカくんがぽつんと言ったことがあって、寒いときにはいいかもね…、ってつれない返事をしたらちょっとさみしい顔をして、結局、食べる機会がなかった。
寒いときには本当にいいのか、はじめて試してみることにした。

たのむと最初に木の鍋敷きがお盆に乗せられやってくる。
使い込まれておいしげで、サイドにネギと擦り生姜。
生姜の香りがなんともさわやか。
ちょっと待ちます。
うどんを煮込む時間がかかるからでしょう。
15分ほどして蓋した土鍋を布巾で包み、小走りしながらお店の人が近づいてくる。

おいしい香りと蒸気とともに鍋が置かれて蓋がとられる。
汁が小さく沸騰し、土鍋の中の具材が足踏みするように小さく揺れる。

ネギにかまぼこ、お麩にだし巻き、筍、ナルト、甘い椎茸。
エビの天ぷら一本に三つ葉が散らかる具沢山。天ぷらを揚げた油の香りに出汁の香りが混じって、鼻をくすぐるオゴチソウ。

うどんは太い。
断面丸くて出汁がしっかり染み込んで、色は飴色。

とんすいにうどんと具材、ネギに生姜をあしらって汁を注いでスルンと食べる。
コシは強くはないけれど、芯まで硬くて噛みごたえのある麺が独特。コツコツ奥歯を叩くようにしてこわれて消える。
粘ることなく潔く歯切れて散らかる様がなんとも心地よく、汁も上等。
力強い出汁にかえしに風味と自然な甘みが口に広がってすっきりとした酸味を残す。

材それぞれもおいしくととのう。
汁を吸い込みふっくらとしただし巻き卵。ザクザク壊れる筍にムチュンと歯切れる甘い椎茸。好きな具材は最後に残す。お麩にナルトにエビの尻尾をじっくり食べて、終える頃には土鍋も冷める。

汁をとんすいに全部移してゴクリと飲み干す。
寒い冬にはこれが一番だったよと、空に向かって報告しました。ちょっと泣く。


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