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関西出汁で牡蠣のそば
冬になると思い出すのが「牡蠣のそば」。渋谷の福田屋のかき南蛮と銀座のよし田の牡蠣そばがオキニイリ。
銀座のついでによし田によった。
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牡蠣そばください…、っていうと「関西風と関東風のどちらにします?」って聞かれるのです。
鰹節に昆布と塩で味を作った関西出汁。
雑節に醤油の風味をくわえた関東出汁を選ぶことができるのだけど、いつも迷う。
関東風のかけ汁はスッキリとした酸味がおいしく、天ぷらのような油を含んだ種にはぴったり。
ただ牡蠣の持ち味をたのしむのなら香りやさしい関西出汁のほうがよかろうと今日はそれ。
お店の人が「私も牡蠣には関西出汁が好きですのよ」ってニッコリしながら厨房に行く。
ボクもニッコリ。
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開店時間とほぼ同時にお店に入ったから最初は静かだったんだけど、次々お客さまがやってきてお店はたちまちにぎやかになる。おかあさんたち、蝶が舞うように軽やかに注文をとりサービスをする。
しばらく待って牡蠣そば到着。
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どっしりとした深い器に透き通った汁。ネギにわかめに紅葉の麩。
牡蠣は大ぶり。しかも4粒。
透き通った汁の中で気持ちよさげに揺れている。
まずは汁。
昆布由来の自然な甘みに豊かなうま味。
牡蠣の風味が汁に移っておいしいコトに感心します。
そして牡蠣。
ひと粒、れんげに乗せて眺める。
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太った腹に、縁でめくれる白黒フリルもくっきり。
艶っぽきさまにウットリ見惚れて喉がなります…、たまらない。
れんげに乗せるとブルンと揺れる。
牡蠣の香りが鼻をくすぐり、くちびる撫でて、トゥルンと口へとすべりこむ。
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舌が感じる重さにウットリ。歯を当てちょっと力を入れるとクチュっと潰れて、おいしい海のジュースを吐き出しとろけてく。火の入り方が絶妙で生っぽくはなく固くもなくて、とてもなめらか。
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たっぷりはいったネギもおいしい。外はシャキシャキ、芯はトロトロ。耳の奥を騒々しくする歯ざわりで、ポッテリとした牡蠣の食感ひきたてる。
そばは若干太めで汁を吸い込み角がとれて食感なめらか。
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ランチにもれなくついてくる俵むすびのゆかりの酸味、香りさわやか。牡蠣のジュースで汁がゆっくり白濁していくところ贅沢。今年も無事にありつきました…、オキニイリ。