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遅いお昼に天南ばん

仕事が長引いて昼ごはんを食べそこなった。「神田まつや」でそばにする。

昼食どきでも夕食どきでもない時間。
通し営業をしているお店。そばって小腹を満たすのにもいい料理だから、ずっと営業してくれているのはありがたい。
そう思う人も多いのでしょう…。
お店に入ると思った以上ににぎやかなことにちょっとびっくり。
感心します。
にぎやかだけどせわしなさを感じぬ状態。
だからみんなのんびりしてる。蕎麦前に酒をたしなむ人もちらりほらりといらっしゃる。
ピークタイムを外したそば屋の風情は粋です。大人の時間…、っていう感じ。

ここではいつも「天南ばんそば」。
麺が好きなそば屋ではせいろを食べたくなる。ここは汁がおいしい。だからどうしても汁そば系を食べたくなっちゃう。中でもオキニイリなのが「天南ばん」。
選ぶ理由はこの上もなく上等な天かすが添えられているから…。

天かすっていうと叱られちゃうかな…。
だってその正体はエビの天ぷらなんですもの。
小指ほどの大きさのエビを3尾、まず天ぷらにしてそれを並べて衣でつなぐ。

エビで作った筏のような仕上がりで衣たっぷり。
揚げた油の香りがなんともこうばしく汁にキラキラ油が浮かぶ。
汁を吸った衣がゆっくりほどけていって、汁に混じってそばにトゥルンとしがみつく。
衣に移ったエビの香りが芳醇でしみじみおいしくウットリします。
角がキリッと立った端正なそば。
細くて、なのに熱い汁の中にあっても歯応えなくさず凛としている。細いがゆえに汁や汁に混じった天ぷら衣を思う存分たぐりよせ、口に誘う。オゴチソウ。

七味をパラリ。辛み以上に香りがおいしい。
拍子木状に切った白ネギがパリパリ奥歯で砕ける感じが心地よく、なめらかなそばの食感を際立たす。

時間が経つと徐々にそばがやわらかくなる。
伸びるのでなく軽く粘るようなむっちりとした肉感的な食感になり、口の隅々撫でては消えていくのがステキ。
汁との一体感が増してあたかも汁がそばの形を借りてお腹にかけおりるって感じすらする。

鰹節由来の強い酸味が特徴の汁。食べ終わると割って飲むように蕎麦湯が湯桶で供される。ネギを散らして飲むと酸味がやさしく穏やかになり代わりに甘み、旨みが顔をのぞかす。

それもおいしい…、オキニイリ。


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