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更科堀井の「かき揚げ天もり」
昔、新宿に「更科堀井」を名乗るお店があった。
暖簾分けだったのかどうだったのか…、とにかく新宿の商業ビルの地下にあってそこのかき揚げ天丼をタナカくんはことの他好きだった。
コロンと揚がったかき揚げをご飯にのせて運び、目の前で沸騰させたタレをかき揚げにかけて仕上げる。
その瞬間にシュー、パチパチと油がはぜる音と一緒に油混じりの蒸気があがりおいしい香りが舞い上がる。タレをまとったかき揚げを崩しながら食べるのだけど、それはそれはおいしくて毎月必ず食べていたほど。
ところがそこは移転しちゃって移転先まで追いかけたけどその天丼はやらなくなってた。ならば本店に行けばあるかときてみても、かき揚げせいろやそばはあるけど天丼はなし。
思い出の中だけにある料理になった。
六本木や麻布十番に来るたびにお店の前のメニューを見て、やっぱりないんだ…、って言い続けてた。
春分の日の今日、ひさしぶりに麻布十番の本店にくる。
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なつかしの天丼は今日もやっぱりございませなんだ。
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かわりにかき揚げ天もりをえらんで食べる。
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丸い漆器に金属製の網を従えやってくる。
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かき揚げの具材は海老と三つ葉だけ。
上に細かな天かすをのせてくるのが独特で、新宿のお店のかき揚げも同じ仕上がり。そこに熱々のタレをかけるとジューッて音を立てて油を蒸散させたのです。
「網の上じゃなくご飯にのせてタレをかけるだけなんだけどなぁ」ってこれを見ながらうらめしそうにいつも言ってた。
なつかしい。
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上にのせられているパラパラの天かすをそばだれの器に移して食べるのが好きだったなぁ…。
油のコクや風味がそばをおいしくさせる。
タレの入った徳利に「から」と書かれているように辛めのタレで、カエシの風味やカツオの出汁の酸味に油の甘みがくわわる。おゴチソウ。
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天かすをとりさったかき揚げは衣の下から三つ葉や海老の色が浮かんで儚く、そして色っぽい。
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三つ葉は香り華やかで海老はむっちり、甘くて旨い。
一口大に箸でほぐしたかき揚げを、タレにちょこんとつけてはパクリ。そしてそばをズルっとたぐる。
表面ツルンとなめらかで、歯ごたえのあるしっかりとした麺線でそばの香りも力強い。
揚げているのに油っこくなく全部食べてもお腹を重たくしないかき揚げ。
日本の揚げ物はやはり特別。
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そばをたいらげ刻んだネギをタレに入れ、そば湯で割ってお腹をおいしくあっためる。
タレが薄まることで出汁の酸味が気配を消してうま味がグイッと顔を出す。ネギの香りや甘みもおいしい。お腹もほどよく満ちました。