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ぶっかけ中華にちょいがけカレー
病院にきたついでにオキニイリの「白河そば」。
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街路樹が並ぶ坂道の途中にあって、葉が茂る季節になるとお店が埋まってみえるほど。
木々の合間に白い日傘に黄色い看板。夏でござんす…、暑い夏。
昔、近所に住んでいた。
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ただその頃に来たことはなく、はじめて来たのは引っ越して10年ほども経ってから。近所に住んでいたときになんで食べておかなかったんだろうってはじめて食べて後悔したほど、今となってはオキニイリ。
朝早くの開店で売り切れじまい。お昼すぎには閉店しちゃうこともある。当時のボクのライフサイクルからはずれた営業時間の店だったということもありはしたけど、住んでた町をもっと大事にしておけばよかったなぁ…、って今になって思ったりする。もったいない。
前面道路は通行量がほどよくあって、路上駐車がしやすい場所。大江戸線ができる前にはお客さんはほぼ業務車やタクシーの運転手さん…、という店だった。
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安くておいしいお店を知ってる人たちが認めたお店というわけ。
ポツリポツリと途切れず人がやってくるけど大忙しになってしまうことはない。ご主人ひとりでやってても、丁寧な仕事のペースを崩すことがない。便利じゃない場所の商売のいいところ。
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オキニイリの「ぶっかけ中華」。細切りの油揚げ「きざみ」をトッピングして「もっと小さいちょいがけカレー」。「煮玉子」そえてちょうど1000円。ご主人が広い厨房を右に左に体を動かし料理を仕上げる。
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料理が出てくるカウンターの脇にはタクワン、紅生姜。手を動かしながら必ずご主人が「タクワンも一緒に食べてってね」って声をかけるのがありがたく、小皿にとってる間に料理がすべて完成。
中華麺に冷やしたそば出汁をかけて仕上げたぶっかけ中華。
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こんもりきざみ、切り海苔、ネギに天かす、それからわかめ。
箸をつっこみ麺を持ち上げきざみに出汁を吸い込ます。
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一味をぱらり。
ズルンとすする。
中華麺独特のチュルチュルとした食感なめらか。コリコリとした歯ごたえさえあり、塩で味をととのえた汁が麺の風味を引き立てる。
口の中から一直線にお腹の中へと冷たい麺がかけおりる。お腹の中から体がすずしくなっていく、暑い夏にはうれしい一品。
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ネギや山椒の風味を煮出した油「だち油」を注ぐと、和風だった汁が一気にアジアな感じにさまがわり。冷たいラーメンを食べてるみたいな気持ちがしてくる。おごちそう。
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お供のカレーがまたうまい。最初はうま味が口に広がる。
ところがあとからじわじわ辛味が姿をあらわしてくる。まるで舌から辛味が湧き出してくるようで、ヒリヒリ舌がつねられるよう。焦げたスパイスの渋みや出汁の酸味が辛みをひきしめて、ぶっかけ中華の汁を飲むと辛さが引いて出汁のうま味におきかわる。
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添えてもらった煮玉子は牛丼のタレでじっくり煮込んで仕上げたもの。白身が縮んでがっしり硬く黄身はトロンとネットリしてる。
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それにしてもぶっかけ中華の汁のしみじみおいしいこと。カレーを食べては汁を飲み、暑くなったり涼しくなったり。お腹も気持ちも満たされる。