木須肉に半ラーメン、冷奴にラー油をかけてビールを飲んだ…。
用事があって中野の南側。久しぶりの中野富士見町を歩いてみた。
タナカくんが住んでた街で、もう20年近くも前のことだけど街の景色がなつかしい。
週末のたびに過ごした街で馴染みの店が何軒かある。
一番よく利用していたお店は閉店。次に通っていたのが「尚ちゃんラーメン」っていう気軽な中国料理のお店。
彼の部屋からてくてく歩いて、中野に向かって坂道をあがった先に黄色い看板が見えてくる。気持ちが急いて足がもつれそうになる。
カウンターの中に厨房。テーブル4つというお店。
ここに来るのは大抵夜中。タナカくんの家でアニメ視聴の特訓を受け、お腹が空いたね…、って夜食を食べにやってきていた。昼に来るのははじめてで、こんなに明るい店だったんだって思ったりする。それにしても尚ちゃんがほとんど白髪になっていました。タナカくんが見たらびっくりしたろうなぁ…。
この街から引っ越して無沙汰してたら家を建築家に改装してもらう番組にひょこっと出てて変わらぬ姿に「この人は歳をとらないねぇ」って言って感心してた。誰でも歳をとるもんです。
席に座るとまず瓶ビール。冷奴をとりメニューを決める。
生ビールもあるんだけれど瓶からグラスに注いでもらうのが好きでいつも瓶ビール。冷奴の豆腐は木綿。麻婆豆腐用にしっかり水気を抜いた豆腐にたっぷりのネギ。醤油にラー油をかけるとビールのお供にぴったり。
冷奴でビールを飲む人っていうのをボクは生まれてはじめて見て大いにびっくりしたものだけど、ひさしぶりにそうしてみるとしみじみおいしくホッとする。
木須肉と半ラーメンのセットをたのんだ。
タナカくんはいつもここでは木須肉。
長崎ではね、きくらげと卵の炒めものはムースーロー。
酢豚のことはスーパイコっていうんだヨ…、ってはじめてここに来たときに言って木須肉をたのんでた。
人気の店で特に深夜は料理がなかなか出てこないことが多かったからのんびりビールをたのしめた。今日はあっという間に料理ができて、カウンターの上がたちまちにぎやかになっていく。油をたっぷり飲み込んでふっかり仕上がった卵。クニュクニュとした肉厚のきくらげにシャキシャキ感が残った玉ねぎ、豚バラ肉。醤油ベースのスープのあんがとろりとかかって濃厚味。容赦なくご飯を口が所望する。
尚ちゃんが常連さんとお喋りしてて「UberEats」が届けさせてくれって言ってくるんだけど、うちの料理みたいに油をたっぷり使っててうま味調味料どっさりの料理は熱々だから食えるんだ。冷めたら食えたもんじゃない」って。よくわかってるなぁ…、かっこいい。
こんもりとキレイに盛り付けられたご飯は箸できれいに持ち上がる。醤油スープのラーメンはほうれん草の香りが溶け出し健康的にさえ思えるやさしさ。奴の豆腐に木須肉をのっけて食べるのが好きだった。真似して食べてちょっと泣く。
次々やってくるのは20代、30代の大食い男子。彼らのもりもり食べる姿が眩しいほどで、おじさん圧倒されつつ食べ終えて、おごちそうさまってお店を出てマスクをしながら歩いていたら、口の中にずっと餃子があるような匂いを感じる。そういえば尚ちゃんラーメンに来た翌朝は部屋がニンニク臭かったって、昔のことを思い出す。