ソーシャルワークを極める講座NO.10 基礎年金の保険給付の種類
今回の内容は、ユーチューブライブで視聴できます。また、アウトプットの練習としてガンガンノック編もあります。
年金の保険給付の種類について触れておきます。
年金の保険給付としては、3種類あります。
老齢給付、障害給付、遺族給付です。
国民年金(基礎年金)であれば、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金があります。
厚生年金であれば、老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金があります。
以下では、基礎年金のそれぞれの給付の内容を確認しておきます。
1.老齢基礎年金
老齢基礎年金の給付は、一定の年齢(原則、65歳)になったらもらえる年金給付です。
要するに、老齢基礎年金は「老齢」ですから、老齢を理由として基礎年金の給付を受ける場合になります。
老齢年金は、どんなに短期間でも保険料を納付すれば老齢年金が受け取れるのか。
老齢年金には、老後に年金を受け取るために最低限必要な期間である受給資格期間が設けられています。
老齢基礎年金の支給については、受給資格期間として、
保険料納付済期間と保険料免除期間と合算対象期間(カラ期間)
が10年以上ある者に対して、65歳から行われます。
合算対象期間は、いわゆる「カラ期間」と言われる期間です。
カラ期間は、「年金額はカラ(空)」という期間で、老齢基礎年金の受給に必要な受給資格期間をみるうえではカラ期間は含めて考えてきます。しかし、年金額には反映されません。
例えば、国民年金において任意加入が認められている時(例えば、1991年3月以前に学生だった期間、日本国籍を有しつつ海外に住んでいた期間など)に、国民年金に任意加入していなかった場合などでも、年金受け取りに必要な受給資格期間に含むことができます。
例えば、20歳から25歳までの5年間、日本で厚生年金(もしくは国民年金)に加入し、保険料を納付していた。その後、26歳から60歳までは海外に居住していたとします。
この場合、日本での5年間の保険料納付済期間だけでは受給に必要な10年は満たせません。しかし、26歳からの任意加入が認められている35年間が合算対象期間となるため、受給資格を得られるということになります。
受給資格期間は、もともとは25年でしたが、後にこれが、25年から10年へ変更されております。この変更については、消費税との絡みでごたごたがありました。
社会保障・税一体改革の一環として、2012年(平成24年)8月、年金機能強化法が制定され、受給資格期間の引き下げ、つまり、25年から10年への変更が決まりました。
そして、引き下げ分の財源は、消費税を10%に引き上げた際の増税分で確保することとされていました。
そして、年金機能強化法が成立した当初は、消費税の10%引き上げと同時に2015年10月に実施される予定でした。
要するに、消費税の10%引き上げと、受給資格期間を25年から10年に短縮することは、セットでした。
しかし、増税延期に伴い、受給資格期間の変更は先延ばしになります。
そして、さらなる増税延期が決まるなか、早く受給資格期間の短縮をして欲しいとの強い世論の後押しがありました。
そこで、将来の無年金者の発生を減らすために、仕切り直しの法律として、2016年11月に成立した改正年金機能強化法(無年金者救済法)により、2017年8月からは、25年から10年以上の受給資格期間に短縮されています。
消費税率の変遷
1989年(平成元年) 3%
1997年(平成9年) 5%
2014年(平成26年) 8%
2019年(令和元年) 10%
厚生労働省のホームページより
この受給資格期間のルール変更で、約68万人の人が、新たに年金を受給できるようになりました。
この点を裏から言うと、受給資格期間の25年を満たせない人たちは、約68万人もいたので、25年のままであれば、そういう人たちの年金保険料が、死に金になってしまう結果になっていたわけです。
受給資格期間には、保険料の納付済期間だけではなく、免除や猶予の期間や合算対象期間が含まれています。
ですから、この受給資格期間というのは、かなりいろいろなものが含まれています。
「受給資格期間」とは
・保険料納付済期間
+
・免除や猶予された期間
+
・年金制度に加入していなくても資格期間に加えることができる期間(「カラ期間」と呼ばれる合算対象期間)
これらの期間を合計したものが「受給資格期間」です。
受給資格期間が10年(120月)以上あると、年金を受けとることができます。
なお、遺族基礎年金には、受給資格期間の短縮(25年から10年へ)は適用されません。
20歳から60歳になるまでの40年間の保険料をすべて納めると、満額の老齢基礎年金を受け取ることができます。
老齢基礎年金の満額は、81万6000円です(昭和31年4月2日以後生まれの方)。
以上、老齢基礎年金が他の年金給付の基礎になりますので、まずはこの老齢基礎年金についてしっかりと理解してください。
第30回第52問の選択肢
公的年金制度の沿革に関する問題で、「将来の無年金者の発生を抑える観点から、2012年(平成24年)改正により、老齢基礎年金の受給資格期間を25年から30年に延長した。」〇か✖か
この選択肢は、誤りです。
老齢基礎年金の受給資格期間を25年から30年に延長したのではなく、25年から10年に短縮しています。
同じような問題が、第32回第55問でも出題されています。
2.障害基礎年金
障害基礎年金の給付は、一定以上の障害を持つようになったらもらえる年金給付です。
障害基礎年金の支給要件について
ここで、まず押さえてほしいのが、支給要件については、2つのパターンがあるということです。
まず一つ目のパターンでは、以下の①から③のすべての要件を満たす必要があります。
①初診日要件
障害の原因となった病気やけがの初診日が、次のいずれかの間にあること
・国民年金の被保険者である加入期間
・20歳前または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間
②障害程度要件
障害の状態が、障害認定日において障害等級の1級、2級の状態にあること
障害認定日は、初診日から1年6か月を経過した日又はその間に治った場合は、治った日(症状が固定した日)のいずれかになります。
また、障害認定日以後に20歳に達したときは、20歳に達した日に障害等級の1級、2級の状態にあることが必要です。
③保険料納付要件
初診日の前日に、初診日のある月の前々月までの被保険者期間で、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間(カラ期間は含まない。)が、3分の2以上の期間あること
*「初診日の前々月までの期間」というややこしい条件になっている理由は、年金保険料の納付期限が「翌月末日まで」のためです。
*保険料免除期間に含まれる期間として、免除期間だけでなく、学生納付特例制度等による猶予期間も含まれます。
保険料納付要件の具体例として、被保険者期間は、20歳から初診日がある月の2カ月前(2023年、令和5年7月)までの15カ月です。
このうち、保険料納付済期間(9か月)および保険料免除期間(3か月)は12カ月です。
このような例では、保険料納付済期間および保険料免除期間が3分の2以上(10カ月以上)あるので保険料納付要件を満たすことになります。
15か月*2/3=10か月
日本年金機構のパンフレットより
次に、2つ目のパターンとして、保険料納付要件の特例として、直近1年要件というものがあります。
初診日が2026年、令和8年4月1日前にあるときは、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
特例の場合は、国民年金に加入してからの期間ではありません。初診日がある月の前々月までの直近1年間の納付状況で判定されます。
ですから、「保険料納付要件(3分の2要件)」は満たせないが、「保険料納付要件の特例(直近1年要件)」は満たせるというケースもあるわけです。
また、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、③の納付要件は不要です。①初診日要件と②障害程度要件だけで足ります。
障害基礎年金に該当する状態
障害基礎年金をもらうためには、障害認定日(これは初診日から1年6か月を経過した日又はその間に治った場合は、治った日(症状が固定した日)のいずれかになります。)において障害等級の1級、2級の状態にある必要があります。
ここで言う障害等級は、国民年金と厚生年金に共通した年金独自の基準になります。
この点、例えば、障害者手帳等の障害等級とは異なります。
また、基礎年金の障害等級は、1級と2級のみであることにも注意して下さい。
ちなみに、厚生年金では、障害等級は1級から3級まであります。
日本年金機構のパンフレットより
それから、初診日に20歳未満であった者が20歳に達した日に、障害等級が1級又は2級の状態にあるときも、障害基礎年金が支給されます。
ただし、20歳前傷病の場合、本人の所得による支給制限があります。
これは、20歳前傷病による障害基礎年金が、国民年金に加入する前の保険料を納付していない期間の傷病による障害について給付を行うことになるので、その関係から、他の障害基礎年金とは異なる支給停止事由が設けられているものです。
支給停止事由としては、以下のものがあります。
①労働者災害補償保険法の規定による年金たる給付であって政令で定めるものを受けることができるとき
②受給権者本人の前年の所得が政令で定める限度額を超えるとき
など
では、支給停止事由がある場合、どうなるか。
支給停止事由によって、支給停止内容が異なります。
①の労働者災害補償保険法の規定による年金たる給付を受けることができるときは、その間、障害基礎年金の支給が停止されます。
②受給権者本人の前年度の所得額が政令で定める額を超える場合、その所得に応じて、その全部又は2分の1が支給停止となります(国民年金法第36条の3)。
なお、本人ではなく、親の所得額により支給停止になることはありません。
第29回第52問の事例問題
事例「先天性の視覚障害で、全盲のCさん(25歳、子どもなし)は、20歳になって翌月から1級の障害基礎年金を受給している。これまでは、仕事に就かず、年金以外にほとんど収入はなかったが、今年からU社に就職し、厚生年金に加入した。Cさんの視覚障害は、今後も回復が見込めないものとする。」
選択肢として、「Cさんの障害基礎年金は、就職後の所得の額によっては、その全部又は一部の支給が停止される可能性がある。」〇か✖か
この選択肢は、正しいです。
先天性の視覚障害とあるので、このケースでは、20歳前傷病の場合になります。
20歳前傷病による障害基礎年金は、国民年金に加入する前の保険料を納付していない期間の傷病による障害について給付を行う関係から、他の障害基礎年金とは異なる支給停止事由が設けられています。
受給権者本人の前年度の所得額が政令で定める額を超える場合、その所得に応じて、その全部又は2分の1が支給停止となります(国民年金法第36条の3)。
同じような問題が、第36回第54問でも出題されています。
第32回第51問の選択肢
会社に勤めている人が仕事を休業した場合などの社会保障制度上の取扱いに関する問題で、「厚生年金の被保険者に病気やケガが発生してから、その症状が固定することなく1年を経過し、一定の障害の状態にある場合は、障害厚生年金を受給できる。」〇か✖か
この選択肢は、誤りです。
選択肢では、「1年を経過し」とありますが、正しくは、1年6ヶ月です。
障害認定日は初診日から1年6か月を経過した日又はその間に治った場合は、治った日(症状が固定した日)のいずれかです。
第31回第52問の選択肢
年金保険に関する問題で、「障害基礎年金は、障害認定日に1級、2級又は3級の障害の状態にあるときに支給される。」〇か✖か
この選択肢は、誤りです。
障害基礎年金は、障害認定日に障害等級1級又は2級の状態にあるときに受けることができます。しかし、3級の障害区分は設けられていません。
ちなみに、障害厚生年金は、1級、2級だけではなく、3級の障害区分が設けられています。
第36回問題54
事例を読んで、障害者の所得保障制度に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Jさんは、以前休日にオートバイを運転して行楽に出かける途中、誤ってガード レールに衝突する自損事故を起こし、それが原因で、その時から障害基礎年金の1級相当の障害者となった。現在は30歳で、自宅で電動車いすを利用して暮らしている。
1 Jさんの障害の原因となった事故が17歳の時のものである場合は、20歳以降に 障害基礎年金を受給できるが、Jさんの所得によっては、その一部又は全部が停止 される可能性がある。
2 Jさんの障害の原因となった事故が25歳の時のものであった場合は、年金制度 への加入歴が定められた期間に満たないので、障害基礎年金を受給できない。
解説
選択肢2は、誤りです。
Jさんの障害の原因となった事故が25歳の時のものであった場合、年金制度への加入歴が定められた期間に満たないとあります。
これは、2/3要件を満たさないという意味です。
初診日の前日に、初診日のある月の前々月までの被保険者期間で、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間(カラ期間は含まない。)が、3分の2以上の期間あること
この2/3要件を満たさない場合でも、障害基礎年金を受給できる場合があります。
それは、初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの直近の1年間に保険料の未納がない場合です。
こちらの要件を満たせば、Jさんは障害基礎年金を受給できます。
第23回第55問の事例問題
事例「Cさんは、若いときから30年間、自営業者として働いてきた男性で、妻は専業主婦、18歳未満の子どもが二人いる。仕事には浮き沈みがあったので、仕事の調子が悪かった5年間、Cさんは、国民年金の保険料免除手続きをしていたが、15年間の国民年金保険料の納付履歴を持っている。最近は仕事も順調で、年金保険料を支払っていたが、不運にも交通事故に遭い、仕事を続けることができなくなった。」
選択肢「Cさんの保険料納付期間は15年間であり、加入期間30年間の3分の2に到達していないから、障害基礎年金を受給することはできない。」〇か✖か
この選択肢は、誤りです。
障害基礎年金を受給するためには、少なくとも、初診日のある月の前々月までの公的年金の加入義務のある期間の3分の2以上の期間について、保険料納付期間と保険料免除期間を合わせた期間があることが必要となります。
Cさんの場合、保険料納付期間は15年間。保険料免除期間は5年間ということで、これを合算した期間は、20年間となります。加入期間30年間の3分の2は、20年間となりますが、この20年間に到達しています。
よって、Cさんは、障害基礎年金を受給できます。
第26回第54問の事例問題
事例「Lさんは、大学在学中に20歳となり国民年金の第1号被保険者となったが、学生納付特例制度を利用し、国民年金保険料の納付は行っていなかった。大学卒業後に民間企業に就職したが、入社1年後に精神疾患の診断を受け、療養のために退職した。Lさんは障害年金を受給したいと考えている。」
選択肢「Lさんが、国民年金法が定める障害等級2級に該当すると認定を受けたとしても、学生納付特例制度により納付を猶予された保険料を初診日の前に追納していなければ、 障害基礎年金は支給されない。」〇か✖か
この選択肢は、誤りです。
日本国内に住むすべての人は、20歳になった時から国民年金の被保険者となり、保険料の納付が義務づけられています。
そして、学生については、申請により在学中の保険料の納付が猶予される学生納付特例制度が設けられています。
ここからが重要な部分ですが、障害基礎年金や遺族基礎年金については、学生納付特例制度の承認を受けている期間は、保険料全額免除期間に算入することができます(国民年金法第90条の3)。
このことによって、例えば、障害基礎年金であれば、保険料納付期間と保険料免除期間を合わせた期間が、初診日のある月の前々月までの公的年金の加入義務のある期間の3分の2以上の期間であれば、学生納付特例制度により納付を猶予された保険料を初診日の前に追納しなくても、障害基礎年金が支給される可能性があります。
保険料納付要件
初診日の前日に、初診日のある月の前々月までの被保険者期間で、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間(カラ期間は含まない。)が、3分の2以上の期間あること
例えば、被保険者期間が36か月とした場合
保険料納付済期間+保険料免除期間(猶予期間を含む)=24か月以上の期間
36か月*2/3=24か月
保険料納付済期間+保険料免除期間(猶予期間を含む)が、24か月以上であれば、OK
そして、Lさんが、国民年金法が定める障害等級2級に該当すると認定を受けた場合には、たとえ追納していなくても障害基礎年金が支給されます。
あと、障害認定日による請求(これを本来請求と言います。)のほかに、事後重症による請求という制度(国民年金法第30条の2)があります。
事後重症による請求とは、障害認定日に請求した場合に障害状態に該当しなかった者であっても、その後に症状が悪化し、1級または2級の障害の状態になった時は、 事後請求によって改めて障害年金の申請を行うことが可能であるというものです。
例えば、初診日は平成25年10月に糖尿病で初めて病院に行った日です。
初診日から1年6か月を経過した平成27年4月の障害認定日の症状は軽かったので、障害等級には該当しませんでした。しかし、令和2年10月18日から人工透析(2級相当)を開始したため、人工透析開始日以降に障害基礎年金を請求しました。
これが事後重症による請求です。
この場合、障害基礎年金を請求日の翌月分から受け取れます。
日本年金機構のパンフレットより
事後重症による請求については、その申請により、障害基礎年金が受けられることになります。
ただし、この手続きについては、年齢制限があり、65歳の誕生日の前々日までに請求書を提出する必要があります。
なお、老齢基礎年金の繰上げ支給(60歳から64歳)を受けていると、事後重症の障害基礎年金は支給されません。
第26回第54問の事例問題
事例「Lさんは、大学在学中に20歳となり国民年金の第1号被保険者となったが、学生納付特例制度を利用し、国民年金保険料の納付は行っていなかった。大学卒業後に民間企業に就職したが、入社1年後に精神疾患の診断を受け、療養のために退職した。Lさんは障害年金を受給したいと考えている。」
選択肢「障害認定日に障害の状態に該当しないとされた場合であっても、10年後に裁定請求し障害等級2級と認定されたときは、Lさんに対して障害基礎年金が支給される。」〇か✖か
この選択肢は、正しいです。
これは事後重症による請求になります。
次に、障害基礎年金の年金額について触れておきます。
2024年4月現在で、障害等級2級の受給者の年金額は、老齢基礎年金満額である81万6000円と同額です(ただし、昭和31年4月2日以後生まれの方)。
老齢基礎年金の満額ですから、20歳から60歳までの40年間保険料を納めた場合に支給される金額のことです。
障害等級1級の受給者の年金額は、老齢基礎年金満額を1.25倍した金額(102万円)になります。
また、子がいる場合は加算があります(国民年金法第33条の2)。
子の加算額は、その方に生計を維持されている子がいるときに加算されます。
なお、子とは、18歳未満を指し、障害のある子の場合は20歳未満を指します。
ちなみに、障害基礎年金には、障害厚生年金のように(厚生年金保険法第50条の2)、配偶者の加算はありません。
日本年金機構のパンフレットより
第29回第53問の選択肢
公的年金の給付内容に関する問題で、「障害等級2級の受給者に支給される障害基礎年金の額は、老齢基礎年金の満額の1.25倍である。」〇か✖か
この選択肢は、誤りです。
障害等級1級の受給者は、老齢基礎年金満額を1.25倍した金額になります。
第23回第55問の事例問題
事例「Cさんは、若いときから30年間、自営業者として働いてきた男性で、妻は専業主婦、18歳未満の子どもが二人いる。仕事には浮き沈みがあったので、仕事の調子が悪かった5年間、Cさんは、国民年金の保険料免除手続きをしていたが、15年間の国民年金保険料の納付履歴を持っている。最近は仕事も順調で、年金保険料を支払っていたが、不運にも交通事故に遭い、仕事を続けることができなくなった。」
選択肢「Cさんは障害基礎年金を受給することができるが、保険料納付は加入期間30年の2分の1なので、障害基礎年金の額は半額となる。」〇か✖か
この選択肢は、誤りです。
障害基礎年金の額は、等級により一定額になります。保険料納付済期間等の長さに比例して変わるものではありません。
第23回第55問の事例問題
同じ事例の選択肢として、「Cさんが受給する障害基礎年金には、配偶者加算がある。」〇か✖か
この選択肢は、誤りです。
障害基礎年金には、障害厚生年金のように(厚生年金保険法第50条の2)、配偶者の加算はありません。
同じような問題が、第33回第55問でも出題されています。
第29回第52問の事例問題
事例「先天性の視覚障害で、全盲のCさん(25歳、子どもなし)は、20歳になって翌月から1級の障害基礎年金を受給している。これまでは、仕事に就かず、年金以外にほとんど収入はなかったが、今年からU社に就職し、厚生年金に加入した。Cさんの視覚障害は、今後も回復が見込めないものとする。」
選択肢「今後、Cさんに子どもが生まれても、Cさんの障害基礎年金の額が加算される可能性はない。」〇か✖か
この選択肢は、誤りです。
障害基礎年金は、子がいる場合は加算があります。
3.遺族基礎年金
次に、遺族給付である遺族基礎年金の話に移ります。
遺族基礎年金は、被保険者、あるいは被保険者であった人などの主たる生計維持者が亡くなった場合に一定の遺族がもらえる年金給付です。
遺族基礎年金の支給要件について
国民年金の被保険者等が死亡したとき、死亡した者によって生計を維持されていた子のある配偶者又は子であることです。
「生計を維持されていた」という部分は、収入要件になります。
次のいずれかに該当する場合に該当します。
①前年の収入(入ってくるお金の全額)が年額850万円未満であること
②前年の所得(収入から必要経費を引いた金額)が年額655.5万円未満であること
③一時的な所得があるときは、これを除いた後、1または2に該当すること
④1~3に該当しないが定年退職等の事情により近い将来(概ね5年以内)、収入が年額850万円未満または所得が年額655.5万円未満となると認められること
このような「国民年金の被保険者等が死亡」「死亡した者によって生計を維持されていた」「子のある配偶者又は子」という要件を満たす場合に遺族起訴年金が支給されます。
「子のある配偶者」ですので、父子家庭にも支給されます。
そして、ここでいう「子」は、未婚で18歳に達する日以降の最初の3月31日までの間にあるか、未婚で1級、2級の障害がある20歳未満の者で、現に婚姻していない場合を言います。
そして、ここも要注意事項ですが、遺族基礎年金の対象には、孫は入らないということです。
この部分は、遺族厚生年金とは異なりますので、要チェックです。
遺族基礎年金の失権事由について
妻と子に共通する事由としては、
①死亡したとき
②婚姻したとき(事実上婚姻関係を含む)
③直系血族または直系姻族以外の者の養子となったとき(事実上の養子縁組関係を含む)
があります。
遺族基礎年金の年金額は、定額です。
老齢基礎年金満額と同額です。
昭和31年4月2日以降生まれの人の場合、81万6000円です。
子がいる場合は、加算があります。
第29回第53問の選択肢
公的年金の給付内容に関する問題で、「遺族基礎年金は、国民年金の被保険者等が死亡した場合に、その者の子を有しない配偶者にも支給される。」〇か✖か
この選択肢は、誤りです。
遺族基礎年金の支給要件は、国民年金の被保険者等が死亡したとき、死亡した者によって生計を維持されていた子のある配偶者又は子であることになります。子を有しない配偶者には支給されません。
ちなみに、遺族厚生年金の場合には、子のない配偶者にも支給されますので、ここは要注意の部分になります。
第32回第52問の選択肢
遺族年金に関する問題で、「死亡した被保険者の子が受給権を取得した遺族基礎年金は、生計を同じくするその子の父または母がある間は支給停止される。」〇か✖か
この選択肢は、正しいです。
遺族基礎年金の支給要件は、国民年金の被保険者等が死亡したとき、死亡した者によって生計を維持されていた子のある配偶者又は子であることになります。
ここでのポイントは、「子のある配偶者」と「子」との優先順位です。
優先順位については、「子のある配偶者」が「子」を優先します。ですから、子が受給権を取得した場合でも、生計を同じくするその子の父又は母がいる間は、支給が停止されます。
第32回第52問の選択肢
遺族年金に関する問題で、「遺族基礎年金は、死亡した被保険者の孫にも支給される。」〇か✖か
この選択肢は、誤りです。
遺族基礎年金の対象には、孫は入りません。
ここは遺族厚生年金とは異なります。
第32回第52問の選択肢
遺族年金に関する問題で、「死亡した被保険者の子が受給権を取得した遺族基礎年金は、その子が婚姻した場合でも引き続き受給される。」〇か✖か
この選択肢は、誤りです。
子が婚姻した場合には、遺族基礎年金の支給要件にいう「子」には該当しなくなります。
第36回問題52
事例を読んで、Hさんに支給される社会保障給付として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Hさん(45歳)は、妻と中学生の子との3人家族だったが、先日、妻が業務上の事故によって死亡した。Hさんは、数年前に、持病のためそれまで勤めていた会社を退職し、それ以来、無職、無収入のまま民間企業で働く妻の健康保険の被扶養者になっていた。
1 国民年金法に基づく死亡一時金
2 国民年金法に基づく遺族基礎年金
解説
選択肢1は、誤りです。
国民年金法に基づく死亡一時金は、第1号被保険者に適用される給付になります。
第1号被保険者は、20歳以上60歳未満の自営業者、農業者、学生、無職の方など、第2号被保険者、第3号被保険者でない方になります。
第1号被保険者が死亡した場合、被保険者と生計を同じくしていた遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順で優先順位が高い者)に支給されます。
民間企業で働く妻は、厚生年金の加入者に該当するので、第2号被保険者になります。
第1号被保険者ではないので、死亡一時金は支給されません。
選択肢2は、正しいです。
国民年金法に基づく遺族基礎年金は、国民年金の被保険者である者等が死亡した場合、請求により、死亡当時、死亡した者によって生計を維持していた遺族に支給されます。
「遺族」の範囲と順位は、
①子と生計を同じくする配偶者 ⇦ 男女で区別なし
②現に婚姻していない子(死亡当時に胎児であった子も生まれたときは子に含まれる)
Hさんには、中学生の子がいて、生計を同じくするので、「遺族」に含まれます。
第34回第54問
事例を読んで、ひとり親世帯などの社会保障制度に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
大学生のEさん(22歳)は、半年前に父親を亡くし、母親(50歳)と二人暮らしである。母親は就労しており、健康保険の被保険者で、Eさんはその被扶養者である。Eさんは、週末に10時間アルバイトをしているが、平日の通学途上で交通事故に遭い、大ケガをした。
1 Eさんの母親の前年の所得が一定額以上の場合、Eさんは国民年金の学生納付特例制度を利用できない。
2 Eさんがアルバイト先を解雇されても、雇用保険の求職者給付は受給できない。
3 Eさんの母親は、収入のいかんにかかわらず、遺族基礎年金を受給できる。
解説
選択肢3は、誤りです。
遺族基礎年金は、18歳未満の子がいる配偶者に対し支給されます。
そのため、22歳であるEさんの母親は、遺族基礎年金の受給者には該当しません。
また、子のある母親が、死亡した者によって生計を維持していたという収入要件もあります。よって、「収入のいかんにかかわらず」という部分も誤りです。
4.独自給付
老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の他にも、第1号被保険者の独自給付の主なものとして、付加年金、寡婦年金、死亡一時金があります。
(1)付加年金
付加年金とは、毎月の国民年金保険料に400円の付加保険料を上乗せして納めた者が、老齢基礎年金の受給権を取得した時に、老齢基礎年金に加算して、将来受給する年金額を増やせる制度です。
付加年金は、国民年金の第1号保険者を対象とする独自の給付になります。
では、将来受給する年金額をどれくらい増やせるのか。
付加保険料を納付することで「200円×納付月額」が、将来受け取れる年金に加算されます。
例えば、10年(120か月)分の付加保険料を納付すると、
200円*120=2400円が、加算されます。
40年だと、2400円*4=9600円が、加算されます。
なお、国民年金基金というものがありますが、国民年金基金は付加年金を含んでいるという位置付けのために、先に国民年金基金に入った者は付加年金の利用ができません。
(2)寡婦年金
寡婦年金というものも独自給付としてあります。
寡婦年金は、死亡日の前日において国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間および国民年金の保険料免除期間(学生納付特例期間、納付猶予期間を含む。)が合計で10年以上ある夫が亡くなったときに、その夫と10年以上継続して婚姻関係(事実上の婚姻関係を含む)にあり、死亡当時にその夫に生計を維持されていた妻に対して、その妻が60歳から65歳になるまでの間支給されるものです。
(3)死亡一時金
死亡一時金は、第1号被保険者に適用される給付になります。
第1号被保険者は、20歳以上60歳未満の自営業者、農業者、学生、無職の方など、第2号被保険者、第3号被保険者でない方になります。
第1号被保険者が死亡した場合、被保険者と生計を同じくしていた遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順で優先順位が高い者)に支給されます。
第31回第52問の選択肢
年金保険に関する問題で、「国民年金の第1号保険者を対象とする独自の給付として、付加年金がある。」〇か✖か
この選択肢は、正しいです。
創作問題
「第1号被保険者の独自給付である付加年金の付加保険料は、国民年金基金加入者でも納付できる。」〇か✖か
この選択肢は、誤りです。
国民年金基金は付加年金を含んでいるという位置付けのために、先に国民年金基金に入った者は付加年金の利用ができません。
繰り返しになりますが、横断的な問題として大事なので、確認しておきます。
国民年金、いわゆる基礎年金の障害等級は、1級と2級です。
これに対し、厚生年金の障害等級は3等級あります。
ですから、サラリーマンで厚生年金で3級の障害を持っている場合には、厚生年金としての障害年金はもらえます。
しかし1階土台部分の基礎年金の障害等級は2級までであり、3級はありませんので、障害基礎年金は出ないということになります。
ですから、この部分は、サラリーマン等の被用者の年金制度のいわゆる独自給付ということになります。
試験では、国民年金と厚生年金で共通しない給付はどれですかとか、逆に共通している給付はどれですかというような形で出題されることが多いので、この辺はしっかりと理解をしておいてください。