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SWを極める講座NO.14 介護保険の仕組み 社会保障



今回の内容は、ユーチューブライブで視聴できます。


1 総論


介護保険制度は、市町村及び特別区が被保険者の介護保障を行う制度です。

介護保険制度の仕組みは、税金方式ではなく、社会保険方式になります。
そして、実際の介護の提供は、社会福祉サービスとして行われています。

では、介護保険は、なぜ税金方式ではなく、社会保険方式にしたのかを深掘りしておきます。

ここでは、3つの理由をあげておきます。


①スティグマをなくす。


生活保護とは異なり、介護保険は、保険料を支払ってサービスを受けるので、権利意識を持ちやすい。


②財源を確保しやすい。


税金と比べて、社会保険は給付と負担の関係が明確です。つまり、何のためにお金を支払い、それによってどんなサービスを受けられるのかが明確です。ですから、財源の面で国民の納得を得やすいわけです。
これに対し、税金は一般的に使い道が特定されていません。よって、介護保険という仕組みを作るといって、増税すると言ったときに、増税した税金が本当に介護サービスに使われるかは明らかではありません。納税者としては、増税ということでお金を取られるだけではないかと思ってしまうので、増税では納税者が納得しにくいという面があります。


③財源が安定している。


仮に、税金ですと、税金を集めた後、いろいろな省庁間でやりとりをして、どこの省にどれだけという形で税金の配分をするかを決めていきます。また、景気によって税収が多い年もあれば、少ない年もあります。よって、税金ですと、その年にどれだけのお金が確保できるかが不安定となります。

例えば、省庁間の駆け引きで、厚生労働省が経済産業省に負けて、厚生労働省に回ってくるお金が少なかったとか。あるいは、酷い不景気な年に介護に割り当てられるお金が少なくなるといったリスクがあります。
ですから、社会保険方式にすれば、財源と給付の関係が直結していますし、また景気変動による影響を受けないので、財源が安定しているわけです。

以上の理由により、介護保険は、社会保険方式を採用したわけです。

介護保険ですが、細かい点は、「高齢者福祉」や、地域包括ケアシステムとの関連で、「地域福祉と包括的支援体制」という科目で基本的に勉強してもらうことになります。


2.各論


それでは、社会保障の科目で問われやすい事項を確認していきます。


(1)保険者


介護保険の保険者は、市町村及び特別区です(介護保険法第3条第1項)。

また、広域連合(複数の都道府県・市町村・特別区にまたがる広域の行政事務を処理するために設立される地方公共団体の組合)を設置している場合は、広域連合が保険者になります。



第35回第50問の選択肢

日本の社会保険に関する問題で、「介護保険の保険者は国である。」〇か✖か







この選択肢は、誤りです。
介護保険の保険者は、国ではなく、市町村と特別区(東京23区)です(介護保険法第3条第1項)。
また、広域連合(複数の都道府県・市町村・特別区にまたがる広域の行政事務を処理するために設立される地方公共団体の組合)を設置している場合は、広域連合が保険者になります。



(2)被保険者


介護保険制度の被保険者は、市町村に住所を有する人で、第1号被保険者と第2号被保険者に分かれます。

国籍要件はなく、原則として、外国人でも被保険者になれます。

第1号被保険者の対象者は、65歳以上の人です。
第2号被保険者の対象者は、40歳から65歳未満の公的医療保険加入者です。

第2号被保険者は、医療保険加入者ですから、生活保護の医療扶助を受けている人は、第2号被保険者の対象になりません。

では、生活保護受給者の40歳〜65歳未満の方が特定疾病によって介護が必要になった場合には、どのように対応するのか。

全額が生活保護法に基づく介護扶助費として支給されることになります。

なお、65歳以上の第1号被保険者は、第2号被保険者とは異なり、生活保護を受けている者でも、介護保険の被保険者になります。

では、第1号被保険者で生活保護を受給している場合、介護保険の保険料はどこから出るのか。

生活保護の生活扶助の介護保険料加算によって納付することになります。



第35回第51問の事例問題

事例「Gさん(76歳)は、年金を受給しながら被用者として働いている。同居しているのは、妻Hさん(64歳)、離婚して実家に戻っている娘Jさん(39歳)、大学生の孫Kさん(19歳)である。なお、Gさん以外の3人は、就労経験がなく、Gさんの収入で生活している。」

選択肢 社会保険制度の加入に関する問題で、「Jさんは介護保険に加入している。」〇か✖か






この選択肢は、誤りです。
介護保険の被保険者は、第1号被保険者と第2号被保険者になります。
第1号被保険者は、65歳以上の者が対象で、第2号被保険者は、40歳以上65歳未満の医療保険加入者になります(介護保険法第9条)。Jさんは、39歳です。40歳以上ではないので、介護保険の被保険者ではなく、介護保険に加入していません。



第26回第52問の選択肢

社会保険の適用対象や給付と負担に関する問題で、「生活保護を受けている者は、介護保険の保険料を拠出できないので、介護保険に加入できない。」〇か✖か






この選択肢は、誤りです。
65歳以上の第1号被保険者は、生活保護を受けている者でも、介護保険の被保険者になります。
生活保護受給者は、生活保護の生活扶助の介護保険料加算によって納付することになります。



(3)介護保険のサービス支給の対象者(受給権者)について


65歳以上の人である第1号被保険者については、要支援者、要介護者が受給権者です。

40歳から65歳未満の第2号被保険者については、老化に起因する16種類の特定疾病による要支援者、要介護者となってます。

ここでいう特定疾病とは、原因である身体上又は精神上の障害が、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する病気です。
特定疾病は、65歳に満たない年齢層でも発症が認められており、罹患率や有病率が加齢と関係する16種類の病気を指します。

*1 第2号被保険者に扶養されているサラリーマンの妻などは、健康保険料を自分で納めていないので、64歳までは扶養家族として介護保険料も支払う必要はありません。ただし、65歳になり、第1号被保険者に変わるタイミングで、年金から介護保険料が天引きされるようになります。

簡単に16種類の特定疾病を一つずつ確認しておきます。

①末期がん(これは、がんであればなんでもということではなく、医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
②関節リウマチ
③筋萎縮性側索硬化症(ALS 脳の運動神経細胞が障害された結果、筋肉が萎縮し筋力が低下する病気)
④後縦靱帯骨化症(脊柱のほぼ全長にわたって縦走している後縦靭帯が骨化して肥大し硬くなり、脊髄の通り道である脊柱管を圧迫することで四肢のしびれや知覚障害や運動障害が起きる疾患です。)
⑤骨折を伴う骨粗鬆症
⑥初老期における認知症(記憶障害のほかに、失語(言語の障害)、失行(運動機能が損なわれていないにもかかわらず、動作を遂行する能力の障害)、失認(感覚機能が損なわれていないにもかかわらず、対象を認識又は同定できないこと)、実行機能(組織化する、計画を立てる、抽象化する、順序立てる)の障害
⑦パーキンソン病関連疾患(パーキンソン症状として特徴的な筋肉のこわばり(筋固縮)、ふるえ(振戦)、動作緩慢(無動)、突進現象(姿勢反射障害)が出ます。種類としては、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病があります。)
⑧脊髄小脳変性症(SCD 後頭部にある運動を司る小脳が障害される病気で、末期には寝たきり状態になります。)
⑨脊柱管狭窄症(脊椎にある脊柱管が狭くなり神経が圧迫されて起こる病気)
⑩早老症(遺伝子の異常により起こる病気です。若年性白内障、白髪、毛髪の脱落、骨の萎縮、血管や軟部組織の石灰化などが20代から起こります。)
⑪多系統萎縮症(MSA いろいろな種類があります。❶起立性低血圧(ベッドから起き上がったときや、いすから立ち上がったときなどに、急にフラッとする)、排尿障害(膀胱に尿を貯め、貯まった尿を体外へ排泄するという排尿サイクルの過程に異常をきたす状態です。これには、排出障害(尿をうまく出せない)と蓄尿障害(尿をうまく貯めれない)があります。)、発汗低下(汗をかきにくい)など自律神経症状。❷筋肉のこわばり、ふるえ、動作緩慢、小刻み歩行などパーキンソン症状。❸立っているときや歩行時のふらつき、ろれつが回らない、字がうまく書けないなどの小脳症状が強く現れる病気です。)
⑫糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
いずれも糖尿病が進行することでもたらされる合併症です。

⑬脳血管疾患(脳出血、脳梗塞、クモ膜下出血などの疾患により、言語、記憶、行為、注意が障害される高次機能障害です。)

⑭閉塞性動脈硬化症(足の血管の動脈硬化がすすむことで血流が悪くなり、足に冷感、しびれ、安静にしているときの痛み、壊死が起こる状態です。)

⑮慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、びまん性汎細気管支炎(はんさいきかんしえん 肺胞(たくさん集まって肺を形作っている小さな袋状の組織)につながる気管の末端の管である呼吸細気管支(こきゅうさいきかんし)を中心に、慢性的な炎症を起こす疾患。肺全体の広範囲に起こるため「びまん性」、気管支の壁内とその周辺に炎症が起こるため「汎」と病名がつけられています。)により、咳痰、呼吸困難がある病気です。)

⑯両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

以上になります。





第23回第53問の事例問題

事例 「別居している一人暮らしの父親が日常生活を満足に送れなくなったので、Bさんは、父親に介護保険制度の利用を勧めようと考えている。」

選択肢として、「父親が63歳で、交通事故が原因で要介護状態になった場合には、介護保険の給付を受けることはできない。」〇か✖か






この選択肢は、正しいです。
40歳から65歳未満の第2号被保険者は、老化に起因する16種類の特定疾病で介護が必要になった時のみ要支援、要介護の認定を受けられます。
特定疾病とは、一般的に65歳以上に多く発症する病気ですが、65歳に満たない年齢層でも発症が認められており、罹患率や有病率が加齢と関係する16種類の病気をさします。
では、本問ではどうか。
父親は63歳ですので、第2号被保険者です。そして、交通事故は、加齢と関係する病気ではありません。なので、「特定疾病」には該当しません。



第23回第53問の事例問題

事例 「別居している一人暮らしの父親が日常生活を満足に送れなくなったので、Bさんは、父親に介護保険制度の利用を勧めようと考えている。」

選択肢として、「父親が67歳で、交通事故を原因とする場合には、父親は要支援認定を受けることはできない。」〇か✖か







この選択肢は、誤りです。
65歳以上の第1号被保険者の場合には、原因を問わず要介護・要支援の認定を受けることができます。特定疾病という要件はないわけです。



(4)介護保険料


介護保険料については、全員一律で同じ保険料ではありません。全員一律で同じ保険料にしてしまうと、その人の収入によっては、負担が大きくなってしまいます。
そこで、第1号被保険者の介護保険料は、所得基準を段階に分けて、原則として16段階の定額保険料に分かれています。

令和6年度から標準9段階から標準13段階へと見直しがなされています。
従来は、最も低い区分の「80万円以下」の人から、最も高い区分の「320万円以上」の人まで9段階でしたが、「320万円以上」の人が細分化され、新たに「420万円以上」「520万円以上」「620万円以上」「720万円以上」の4段階が設けられました。

これは、応能負担の考え方に基づくものになります。

つまり、その保険者(市区町村)ごとに、介護サービスの規模や被保険者数などをもとに月額の保険料基準額(現在は月額約6000円弱)というものを設定して、被保険者の所得に応じて所得段階別に決められます。

最も低い区分の「80万円以下」の人であれば、
保険料基準月額×0.285=月額保険料

第1号被保険者の保険料の保険料基準額は、その地域で今後3年間で必要になる給付総額に65歳以上の高齢者の負担割合(23%)を掛け、それに各々の財政事情を加味したうえで予定保険料収納率・被保険者数・月数(12カ月)で割って算出しています。
埼玉県八潮市公式ホームページより

*第1号被保険者と第2号被保険者の保険料の50%分の割合については、第1号被保険者の人数(3525万人)と第2号被保険者の人数(4192万人)からそれぞれの按分して負担割合を決めていきます。

計算式
3525万人+4192万人=7717万人

(3525万人/7717万人)÷2=0.228

埼玉県八潮市公式ホームページより

各市区町村が定める基準額 × 標準13段階の保険料率 =保険料

ですから、同一市町村に住んでいる高齢者であっても、収入によって基本的に保険料が違ってくるという仕組みになっています。

保険料基準額は、介護保険事業計画に合わせて3年に一度見直されます。

なお、被用者保険である健康保険では、被保険者の被扶養者になる場合、被扶養者は個別に医療保険の保険料を負担する必要がありません。
これは、第2号被保険者の介護保険の保険料についても同様です。

これに対し、介護保険の65歳以上の第1号被保険者は、被扶養者であっても、介護保険料を個別に負担しなければなりません。
被扶養者に対しても、市町村が所得段階別に定額保険料として徴収します。

ちなみに40歳以上65歳未満の第2号被保険者は、医療保険加入者になりますが、第2号被保険者の介護保険料については、国民健康保険に加入している場合と職場の医療保険に加入している場合とで取扱いが異なります。

国民健康保険に加入している場合には、介護保険料は、国民健康保険料の算出方法と同様に、世帯内の第2号被保険者の所得と人数に応じて、世帯ごとに決められます。

これに対し、職場の医療保険に加入している場合には、医療保険ごとに設定される介護保険料率(2024年度は、1.60%)と給与および賞与に応じて決められます。
そして、原則として事業主が半分を負担します。

*健康保険法第160条では、「各年度の介護保険の保険料率については、単年度で収支が均衡するよう、介護納付金(すべての第二号被保険者の介護保険にかかる保険料)の額を総報酬額で除したものを基準として保険者が定める」と規定しています。


厚生労働省の資料より(平成28年11月11日)

まとめ
40歳以上65歳未満の第2号被保険者の被扶養者は、介護保険料を個別に納める必要はありません。これは被保険者の介護保険料に扶養家族の分が含まれて徴収されるからです。
ただし、念押しですが、介護保険の65歳以上の第1号被保険者は、被扶養者であっても、介護保険料を個別に負担しなければならないということです。



第23回第53問の事例問題

事例 「別居している一人暮らしの父親が日常生活を満足に送れなくなったので、Bさんは、父親に介護保険制度の利用を勧めようと考えている。」

選択肢として、「父親が70歳で、Bさんの健康保険の被扶養者となっている場合には、介護保険の保険料は負担しなくてもよい。」〇か✖か






この選択肢は、誤りです。
65歳以上の第1号被保険者は、第2号被保険者の被扶養者であっても、個別に介護保険の保険料を負担しなければなりません。
市区町村は、被扶養者に対しても、所得段階別に定額保険料を徴収します。



第36回第51問の選択肢

社会保険の負担に関する問題で、「介護保険の保険料は、都道府県ごとに決められる。」〇か✖か







この選択肢は、誤りです。
介護保険の保険料の算定方法は、第1号被保険者(65歳以上の高齢者)と第2号被保険者(40歳から64歳の健康保険加入者)によって異なります。
地域ごとに保険料が異なるのは、第1号被保険者になりますが、第1号被保険者については、都道府県ごとではなく、各市区町村ごとに決められます。



(5)介護保険料の徴収方法


徴収方法は、第1号被保険者と第2号被保険者とで異なります。

第2号被保険者は、医療保険の保険料と一緒に徴収されます。

第1号被保険者の徴収方法は、2種類あります。

・年金から天引きされる特別徴収

・市区町村の個別徴収、つまり市区町村窓口等での支払いである普通徴収

普通徴収は、年金が年額18万円未満の方が対象です(介護保険法第131条を参照)。
年額が18万円であれば、特別徴収です。



第24回第50問の選択肢

社会保険料の徴収、納付に関する問題で、「介護保険の第1号被保険者と第2号被保険者、後期高齢者医療制度の被保険者が負担する保険料は、特別徴収の方法によって徴収される。」〇か✖か






この選択肢は、誤りです。
介護保険の第1号被保険者と後期高齢者医療制度の被保険者が負担する保険料は、原則として特別徴収の方法によって徴収されます。
しかし、介護保険の第2号被保険者の保険料は、医療保険の保険料と一緒に徴収されます。



(6)要介護・要支援認定


これは、どんなときに介護保険による介護が受けられるのか、という話になります。

要介護認定を受けた場合に、介護保険のサービスを利用できるシステムになっています。

では、介護保険サービスを利用するために、要介護認定という審査を得ることを条件とするシステムにしたのはどうしてか。

財政に余裕がない中で、限られた財源を効率よく配分するためです。
より必要性の高い人に重点的に給付するために要介護認定という審査を得ることを条件としています。

例えば、医療サービスは、注射など身体への侵襲等を伴い、利用に一定の歯止めがかかりやすいと言えます。
しかし、介護サービスは、生活に密接に関連していて、あれもこれもやってもらいたいということで、利用に歯止めが利きにくいということが言えます。
また、同じ要介護度であっても、利用者のニーズが多様であるという特性があります。
財政に余裕がない中で、限られた財源を効率よく配分するためには、居宅介護サービス及び地域密着型サービス(要介護者の住み慣れた地域での生活を支えるため、身近な市町村で提供されることが適当なサービスになります。)について、要介護度別に区分支給限度基準額を設定し、一定の制約を設けることにより、必要性の高い人に重点的に給付するために、要介護認定という審査を得ることを条件とする仕組みにしたわけです。

そして、人の判断には偏りがあります。そこで、介護保険では、全国統一の客観的な基準を設定して、より「公平」な給付をすることを目指しています。

要介護の認定は、要支援1・2、及び要介護1~5、の7段階となっています。



第31回第51問の事例問題

事例「Dさん(45 歳)は、正社員として民間会社に勤務している。Dさんの父親Eさんが脳梗塞で倒れ、常時介護を必要とする状態になり、要介護 4 の認定を受けた。」

選択肢として、「Eさんが介護保険の居宅サービスを利用する場合、保険給付の区分支給限度基準額は、Eさんの所得に応じて決定される。」〇か✖か






この選択肢は、誤りです。
区分支給限度基準額は、所得によって増減はしません。要介護度別に区分支給限度基準額を設定しています。
ちなみに、支給限度基準額を超えてサービスを利用する場合は、その超過分は原則として全額利用者の自己負担となります。



(7)介護認定審査会


保険者である市町村及び特別区の中に、介護認定審査会があります。
また、複数の市町村が共同で介護認定審査会を設置することも認められています。

介護認定審査会では、要介護認定。つまり、基本調査に基づく一次判定の結果と主治医の意見書等を基にして、どのくらいのサービスがどのくらいの量として必要なのかを決めるということをしています。これを二次判定といいます。

介護認定審査会は合議体です。
その構成メンバーは、保健・医療・福祉の学識経験者になります。

この介護認定審査会と混同しやすいのが、介護保険審査会になります。

介護保険審査会は、保険者の行った行政処分に対する不服申し立ての審理・裁決を行う機関で、都道府県に設置されています。



(8)保険給付


介護保険は、保険になるので、保険事由が発生した場合、保険給付を受けることができます。

保険給付には、大別して、
・要支援者を対象とする予防給付におけるサービスと、
・要介護者を対象とする介護給付におけるサービス
があります。

ところで、要支援状態になる、要介護状態になるという保険事由が、第三者の行為によって生じた場合、被害者は、加害者である第三者に対し、損害賠償請求権を取得します。

これとの絡みで、被害者は加害者に対し、損害賠償請求をすべきであって、その請求をしないでおいて、介護保険の給付を受けるというのはどうなのか。これは財源上問題があるのではないか。
こういう考え方もあり得ます。

現行の介護保険法では、この点については、被害者は、加害者に対し損害賠償請求をしないでも、介護保険の給付を受けることができます。
このような場合、被害者が加害者に対して有する損害賠償請求権を市区町村である保険者が代位取得することになります(介護保険法第21条)。



第23回第53問の事例問題

事例「別居している一人暮らしの父親が日常生活を満足に送れなくなったので、Bさんは、父親に介護保険制度の利用を勧めようと考えている。」

選択肢として、「父親が65歳で、交通事故が原因で要介護状態になった場合には、まず事故の加害者に対して損害賠償を請求しなければ、介護保険の給付を受けることはできない。」〇か✖か






この選択肢は、誤りです。
現行法では、父親は、加害者に対し、損害賠償請求をしないで介護保険の給付を受けることができます。あとは、市区町村である保険者が加害者に対し代位行使することになります。



医療保険と介護保険とで同一内容の給付を受ける場合、医療保険と介護保険の関係はどのようなことになるのか。

同一内容の給付については、原則として介護保険の給付が優先します(介護保険法第20条)。

しかし、異なる給付であれば、併給は可能です。

例えば、医療保険の療養の給付と介護保険の介護給付は異なるので、併給は可能です。




第23回第53問の事例問題

事例「別居している一人暮らしの父親が日常生活を満足に送れなくなったので、Bさんは、父親に介護保険制度の利用を勧めようと考えている。」

選択肢として、「父親がいったん要介護認定を受けた場合には、医療保険の給付に優先して、介護保険の給付を受けなければならない。」〇か✖か






この選択肢は、誤りです。
同一内容の給付については、原則として介護保険の給付が優先します(介護保険法第20条)。
しかし、異なる給付であれば、併給は可能です。
選択肢では、給付の内容が特定されていませんが、異なる給付であれば、併給は可能です。



(9)介護報酬


介護報酬については、厚生労働大臣が定める基準により算定されます。

厚生労働大臣が介護報酬の算定基準を定める場合、厚生労働大臣は、あらかじめ社会保障審議会の意見を聴かなければならないことになっています。

そして、なんと言っても国家試験で頻出なのは、介護報酬の算定のサイクルです。

介護報酬は、3年ごとに改定されることになっています。
ちなみに医療保険の診療報酬の改定は、2年ごとです。
介護報酬改定は、3年ごとということで、サイクルが異なりますので、要注意です。



(10)利用者負担


サービスの利用者は、原則として費用の1割を自己負担することになっています。

この利用料ですが、徐々に上がってきています。
現在は、一定以上の所得を有する第1号被保険者は、2割負担です。
そのうち、特に現役並みの所得を持ってる者については、3割負担ということになっています。

ただし、居宅介護サービス計画・介護予防サービス計画作成の費用は、要注意です。
ケアプランについては、自己負担がなく、全額が保険給付されます。

それから、利用者の負担が軽減される制度を確認しておきます。

まず災害等の特別な理由がある場合の制度です。

災害等の特別の理由があり、利用料の支払いが困難と認められた被保険者を対象として、利用者負担が減額または免除される制度があります。

また、この制度の対象にならない場合も、高額介護サービス費制度によって利用者の負担を軽減する制度もあります。

高額介護サービス費制度とは、利用者負担が1ヶ月の負担限度額を超えた場合、限度額を超えた負担分が高額介護サービス費として償還払いされるというものになります。

その他にも、施設サービスを受ける場合の食費と居住費は原則自己負担となっていますが、所得の低い者については、負担の軽減措置が設けられています。

以上の利用者負担についてもしっかりと頭に入れておいて下さい。



第31回第51問の事例問題

事例「Dさん(45 歳)は、正社員として民間会社に勤務している。Dさんの父親Eさんが脳梗塞で倒れ、常時介護を必要とする状態になり、要介護4の認定を受けた。」

選択肢として、「Eさんが 75 歳以上の後期高齢者の場合、Eさんの介護保険の利用者負担は減免の対象となる。」〇か✖か






この選択肢は、誤りです。
後期高齢者であることだけを理由として、介護保険の利用者負担の減免対象となるという制度はありません。



第31回第51問の事例問題

事例「Dさん(45 歳)は、正社員として民間会社に勤務している。Dさんの父親Eさんが脳梗塞で倒れ、常時介護を必要とする状態になり、要介護4の認定を受けた。」

選択肢として、「Eさんの介護保険の利用者負担が高額介護サービス費の一定の上限額を超過した場合、追加の利用者負担が求められる。」〇か✖か






この選択肢は、誤りです。
高額介護サービス費とは、介護保険を利用して支払った自己負担の合計金額が一定金額を超えたとき、その分が戻ってくる仕組みです。
選択肢のように、追加の利用者負担が発生するのは、認定された介護度によって決定されている区分支給限度額を超えて介護サービスを利用した時です。



(11)費用負担


財源に係ることになりますが、介護保険の介護給付・予防給付に要する費用の内訳はどうなっているか。

サービス利用時の自己負担(1割~3割負担)を除き、公費負担(税金)と保険料で半分ずつ賄います。
介護保険は、保険料50%、公費50%を財源として運営されていることが特徴の一つになります。

その保険料の中で、第1号被保険者と第2号被保険者。どちらが多くを占めるのか。

第1号被保険者と第2号被保険者の按分率(負担割合)は、政令で3年ごとに定められます。
この按分率は、それぞれの人口で按分します。

第9期(令和6年度から令和8年度)は、第1号被保険者が23%、第2号被保険者が27%となっています。この割合は、第8期と同じ割合となっております。

第1号被保険者の23%負担の覚え方

65歳以上の第1号被保険者の方が年が上なので、第1号は、ニイサンと覚えておいてください。



(12)公費負担


公費負担の中で、国、都道府県、市町村の負担割合がどのようになっているのか。

この点については、居宅給付費と施設等給付費とでは割合が異なります。

居宅給付費については、国が全体の25%、都道府県が12.5%、市町村が12.5%です。

施設等給付費については、国が全体の20%、都道府県が17.5%、市町村が17.5%です。

居宅給付費と施設等給付費とでは、国と都道府県と市区町村の割合が異なっております。

給付費等の負担内訳

それから、国庫負担については、その内訳も重要です。
つまり、国庫負担は、全ての保険者に交付される定率負担分と、保険者間の財政力格差の調整にあてられる調整交付金の約5%からなっています。
調整交付金は、後期高齢者の割合や、第1号被保険者の所得の状況に応じて、保険者である市区町村に対して交付されることになっています。


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