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映画「ナワリヌイ」から見えた、ネットで切り拓く新しい政治と報道

7月22日に新メディア酔談第3回を配信しました。みなさんもう見ましたよね?え?まだ見てない?そりゃあいかん、ぜひいますぐ、見てください↓

動画を見てもらうと、バーカウンターに座って三人で話しているように見えます。背景は私がレンタルポジサービスの画像を少しいじったもので、映画「ナワリヌイ」で何度も出てくるインタビュー映像の雰囲気↓をイメージしています。もっと暗く陰鬱な雰囲気なんですけどね。グラスがポイント。

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告知の通り、この映画を配給したトランスフォーマー社の宣伝プロデューサー・國宗陽子さんをゲストにお招きして、いろんなお話を聞きました。國宗さんがお話上手なので配信番組としていい感じになったと思います。

國宗さんのお話で面白かったのが、最初の方に出た買い付けから配給、上映までのスピーディさ。普通は買い付けから公開まで一年程度かかるそうです。そもそも映画館のスクリーンを確保しなければならないし、映画館側はあらかじめ先々まで決めておくわけですから。

でも「ナワリヌイ」は今年1月のサンダンス映画祭で上映され話題になったそうです。買い付け交渉を始めたら2月にロシアのウクライナ侵攻が始まり、交渉成立が3月。そこから6月の上映に漕ぎ着けたのだから怒涛の展開ですね。きっと大変だったでしょう。上映までにウクライナ侵攻やナワリヌイ氏の状況も刻々と変わり、つまり映画と現実が同時進行したような感覚。私たちとしても、早く見なきゃ、今でしょ!って感じになりますよね。

ウクライナ侵攻のニュースとともに、ロシアのマスメディアがいかに「統制」されているかも伝わっていたので、映画で描かれる世界と現実がまさにシンクロしていました。

などなど、面白い話が満載の配信となりました。みなさんぜひ見てくださいね!

ナワリヌイ氏はネットを駆使して政治を動かす

ここからは配信を離れて、配信で知ったこと、配信前に見聞きしたことを含めてナワリヌイ氏について語りたいと思います。この映画を通して私たちが知ることの一つは、ナワリヌイ氏の世の中へのアピール方法です。とにかくネットを上手に使う。YouTubeやSNSを巧みに使いこなし、TikTokでも当たり前のように投稿しています。

これは、彼のことをテレビ局が放送しないからです。放送しても、コメンテーターが悪口を言い放題。彼の側に立つテレビ報道は皆無のようです。だからネットを使わざるを得ないし、むしろネットを使うことで若者層に支持されている。

一方、彼に対する批判的なことを言う人も多いようです。西欧の国々でも必ずしも彼を英雄視する人だけではない。

「そこまで言って委員会NP」という、大阪の読売テレビが放送している番組があります。東京の番組ではあり得ない過激な議論をする番組として知られていますが、最近はYouTube公式チャンネルで番組丸ごと配信していて日本中で見れます。その7月10日の回で「ナワリヌイ」が取り上げられました。山口真由氏がその中で、欧米の一部のナワリヌイ評を述べています。

15分くらいのあたりで山口氏が話しています。ナワリヌイ氏は人種差別発言で過去に問題になったこともあり、西欧で批判する人もいる。目立ちたがり屋のポピュリスト、つまり民衆に受けることを言っているだけだ、ということのようです。

それを聞いて思い出したのが、今月の参議院選挙です。旧来型の野党が伸び悩んだ中で、新しい野党が躍進した。特にNHK党や参政党、彼らはちょっとナワリヌイ的なのかな?と思いました。マスメディアからは煙たがられているけど、ネットで支持を集めて議席を増やしました。ちょっと似ている気がします。あるいはれいわ新党と似ていると見ることもできる。

ナワリヌイ氏は参政党に似ているのか、れいわに似ているのか、どっちと見るかでずいぶんイメージが変わってきますよね。正直、どっち寄りなのかは私にはわかりません。それにどっちを支持するかでナワリヌイ氏の見方も違ってきますよね。

だから言いたいのは、彼を無条件に英雄視するのも危険かもしれない、ということです。ただとにかく、ナワリヌイ氏の手法と日本の新しい野党は共通してネット戦術で支持を伸ばした、ということは押さえておきたいところです。

ネットを駆使する報道集団ベリングキャット

この映画の前半では、毒殺されかけたナワリヌイ氏がドイツに逃れ、そこで報道集団ベリングキャットの手を借りて毒殺に関わった人々を探し当てる様子を丁寧に描かれています。

そのベリングキャットがどういう人々かについては、今回のメディア酔談の中で熊田安伸氏が解説してくれています。営利団体ではなく、リーダーのエリオット・ヒギンズ氏の元に集まってきた人々が結成したチームなのだそうです。ネットに上がっている様々な情報、いわゆるオープンソースを探り出し、それを元に真実を炙り出すのが彼らの手法。ジャーナリストとも言えますが、パソコン好きのオタクたち。そんな連中が本気で動けばプーチンも真っ青の真実を抉り出すことも可能なのです。

ちょうど先週の土曜日、7月23日の日本テレビ系「世界一受けたい授業」がベリングキャットを取り上げ、ヒギンズ氏が「先生」として彼らの成り立ちや手法、実績を教えてくれています。ヒギンズ氏は経理担当のサラリーマンだったそうです。TVerでしばらく見逃し配信してますので見てみてください。最初の方に登場しますよ。↓

こうして見ていくと、映画「ナワリヌイ」は現在進行形のロシアの恐るべき政治状況を描くと同時に、ネットを駆使して政治や報道の分野で新しい手法で戦う人々のドキュメンタリーでもあるわけです。PCがあれば権力の裏を暴くことができる。そんなことを私たちに実感させてくれる映画です。極めて現代的な映画ですね。きっと映画館が変わりながらロングランされると思うので、ぜひみなさん見てください!

さて2月から間が空いてしまいましたが新メディア酔談、今後は1〜2ヶ月おきに配信していきたいと考えています。次回からはNHKを中心により日本のメディアについて考えて見たいと思います。応援してくださいね!

『ナワリヌイ』 

6月17日(金)より全国絶賛公開中

監督:ダニエル・ロアー『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』
出演:アレクセイ・ナワリヌイ、ユリヤ・ナワリヌイ、マリア・ペヴチク、クリスト・グロゼフ、レオニード・ボルコフほか

2022年/アメリカ/ロシア語、英語/98分/原題:NAVALNY/日本語字幕:額賀深雪/
配給:トランスフォーマー

Twitter:@Navalny_movie    
公式サイト:https://transformer.co.jp/m/Navalny

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境治@新メディア酔談
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