森友事件は、2年前に詰んでたのに誰も降参しない詰め将棋だ
本日(3月18日)発売の週刊文春に、大スクープが掲載された。森友事件で自殺した近畿財務局の官僚・赤木俊夫氏が死の直前に遺した手記が全文公開されたのだ。そこには赤裸々に、文書改ざんが当時の佐川理財局長の指示で行われ、財務官僚たちが文書を塗りつぶしていったことが書かれている。赤木氏は抵抗もしたが指示に屈した。その重みに押しつぶされ、自らの命を絶ったのだ。
スクープをものにしたのは元NHK記者で現在は大阪日日新聞の相澤冬樹氏だ。相澤は実は私の中高の同級生だ。高校時代は学校新聞を一緒に作っていた。高校時代以来の記者人生の中で相澤は、もっとも重大なスクープを見事に世に送り出した。ここはあっぱれと素直に褒めたい。
相澤に手記を託したのは、赤木氏の遺族である奥様だ。彼女は今日、国と佐川氏を相手取って訴訟を起こした。この訴訟を通じて、果たして真実が陽の目を見るかが今後の注目点だろう。
真実は陽の目を見るかと書いたが、実際には状況証拠的に真実はほぼ見えていた。しかも2年前に。
安倍晋三首相夫人である安倍明恵氏が森友学園に不思議と肩入れしたのは事実だ。一時期はワイドショーで、連日森友学園を訪問した昭恵氏の映像が流れたのを、ほとんどの国民が覚えているだろう。よりによって戦前の教育勅語をスラスラ暗唱できる異様な子どもたちを見て「素晴らしい!」と大喜びの昭恵氏の姿がはっきりと映像に残されている。昭恵氏と森友学園は関係があったのだ。
森友事件の発端は、大阪府豊中市の木村真市議が森友に売却された土地の価格が公開されないことを不審だとして裁判を起こしたことだ。そして鑑定価格9億円もの土地を、8億も値引きして大安売りしたことがわかった。これも事実だ。そうかもしれない、ではなく、事実異常な値引きで国有地が売られたのだ。
これが国会でも取り沙汰され、安倍首相が国有地取引に関して「私や妻が関係していたら国会議員を辞める」と言ってのけた。こういう子どもみたいな意地っ張りな言い方をしてしまうのがこの首相の情けないところだが、言ってしまった。これも事実だ。
この後、近畿財務局で当該の土地取引を記録した文書が改ざんされていた。改ざんがあったのも事実だ。何しろ一部、いやかなりの部分が黒く塗りつぶされた文書が明らかになっている。誰かが塗りつぶしたのだ。財務局の人間以外誰がそんなことをする?改ざんが行われたのも事実だ。
これも国会で問題になり、佐川理財局長が何度も呼ばれて問い詰められたが、「捜査中で訴追の恐れがあるので何も言えない」と佐川氏は言い続けた。厚顔無恥とはこの男のことだろう。「訴追の恐れがあるから言わない」とは、やましいことがあるので言わないのだ、と公言しているも同然だ。彼は決して「私は改ざんにまったく関与しておりません」とは言ってないのだ。
佐川氏の答弁については、NHKが面白いサイトを作っている。
2018年3月27日の国会での証人喚問で誰の質問に佐川氏がどう答えたかを、チャットアプリの画面を模して表現している。見やすくてわかりやすい形で佐川証言をチェックすることができるものだ。彼がいかに「逃げ」の回答を繰り返したか、よくわかるので見るといいと思う。
そして5月31日、大阪地検は佐川氏をはじめとする財務官僚たちの文書改ざんについて嫌疑不十分で「不起訴」としている。なぜ不起訴なのかは疑いたくなる。今回明らかになった手記でも、大阪地検はすべて知っている、と書かれていた。なのに不起訴。ただ、「嫌疑不十分」ということは、まったくの潔白とも言えないとも解釈できる。
ここまではっきりわかっている事実は、安倍明恵氏は森友学園に肩入れした、国有地が森友学園に超低価格で売却された、安倍首相が妻か自分が関与してたら議員を辞めると言ってしまった、その後で、近畿財務局で売却に関わる文書の改ざんが行われた、佐川氏は「訴追の恐れがあるので何も言えない」と言い続けた、赤木氏は自殺した、ということだ。状況証拠的には官僚が安倍夫妻への配慮で文書を改ざんしたとしか思えないではないか。改ざんする理由が他にあるのか。そもそも改ざんなんてやっちゃいけないだろう。改ざんがあったのは事実なのに誰もそのことで叱られないなんてことがあるのか。誰がどう見ても佐川氏の指示だし、だから佐川氏は「訴追の恐れがある」と言ったのだ。関与してないなら訴追の恐れも何もないはずだ。彼は「自分が関与しております」と白状したも同然なのだ。
つまり本当はこの将棋、2年前に詰んでいたはずなのだ。棋士の勝負は先の先まで手を考えて降参する。森友問題はそんなに先まで読まなくても降参せざるを得ない勝負だった。そうならなかったのは、検察が不起訴にするというルールを超えたおかしな判断があったからに決まっている。
赤木氏の奥様の訴えを受け入れさせ、佐川氏に本当のことを言わせる。我々日本国民は、そうしないといけないのではないか。そのために我々は何かすべきではないか。そうじゃないと、この国はダメな国に成り下がってしまう。
相澤冬樹と私は、月に一回のペースで「メディア酔談」というライブ配信をやってきた。今月は急きょ予定を変更し、この重大スクープのフォローをお届けしようと思う。よかったら見てください。チャンネル登録か、リマインダーをオンにすれば見られます。あくまで「酔談」つまり酔って好き放題おっさん二人が喋る番組なので高尚なことは期待せぬようお願いしたい。
ちなみに「メディア酔談」の過去回をご紹介。
前回2月10日は元NHK会長・籾井勝人氏をゲストに「NHK会長とは何者か?」を配信しました
その前は1月31日に映画「さよならテレビ」の圡方宏史氏を迎えて「テレビになぜさよならするのか」と題してお送りしました。
かなーり面白いので、ぜひご覧あれ!
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