【佐賀】 女子三人旅(三)佐賀錦のおひなさま
小さい頃はおひなさまが怖かった。
昼間は、いいんだよ。
夜になると、暗い部屋に、自分の背丈より高いひな壇があって、ほのかなぼんぼりの灯に、数多の人形たちが、ぼんやり浮かんでいる。
そりゃ、怖いに決まってる。
田舎のお雛様は、規模が大きめなのだ。
でも……。
二歳下の妹と一緒に、ひな壇を這って登って、そこに飾ってあったお菓子をせしめたこともあったっけ。
幼児とは言え、さすがに二人分の体重に耐えかねて、金属のフレームが歪んでしまった。
後々になってもなお、母から、
「これ、あんたら悪姉妹がやらかしたんだからね」
なんて言われ続けた……。
わたしは、
「妹が欲しがったから」
と主張するし、妹は妹で、
「姉ちゃんにそそのかされた」
と言い張るし。
とりあえず、一句。
ひな壇の 菓子へと登れ 悪姉妹 坂井のどか
◯
点在する旧家を利用している〔佐賀市民俗資料館〕で、お雛様を展示しているのは〔旧福田家〕だけではなく、他の建物も同様に、おひなさま一色だった。
いっそのこと、等身大のお内裏様カップルの衣装が展示してあったりもする。
見るからに重そうだけど、一度は着てみたい。
たぶん、一度で懲りそうな気がする。
昔の貴族、よくもまあこんなすごいのを着てたもんだと思う。
大広間の一面に、雛人形がずらりと並んでいる建物もあった。
旧古賀銀行、旧古賀家、旧牛島家……などなど、ぐるっと一通り辿った頃には、いい感じで疲れをおぼえる。
それでも、わいわいと会話は絶えない。
◯
ちょっと一休みがてら、Jちゃんが経営しているグッズのお店へ移動。
つまみ細工と猫グッズのお店だ。
カウンターのあちら側におさまって、お店のあれやこれやを回してるJちゃんの姿は、しっくりと様になっている。
やがて、夕方。
「ごめんね、待たせちゃって。そろそろ、ご飯行こうか。手作り焼き餃子のお店だよ」
Jちゃんの声に、わたしの胃袋が先に返事をした。
手作り餃子のお店へ、つづく