【信州上田】2024秋の信州旅その2 別所温泉・上松やの、ご飯うまうま朝食
圧倒的な晴れ率を誇る上田も、さすがに台風となると、土砂降り不可避だった……。
朝の5時に起床し、母と大浴場へ。
露天には、六文銭をあしらった赤備えの壺湯があるのだが、あまりの雨に断念。
本来は、この壺湯のすぐ脇に生えた柿の木を見上げながら、風景を楽しみたかったけれど。
特にこの季節は、頭上に実る柿の実が、よき風情を醸してくれるのだ。
それでも、じっくりゆったり母ととりとめもなくおしゃべりをし、かつ、お風呂の脇に鎮座する素朴な河童の像を眺め、ほっこりした気持ちになる。
この河童の像は、小さな祠へ手を合わせている。
〔上松や〕さんの公式サイトに、そんなお風呂の様子が掲載してあるので、ぜひ見てみてほしい。→上松や・公式サイト
ふとお風呂の脇へ目をやると、
「あ、このサービス、復活したんだ……」
固定電話の脇に、ビールのお届けの案内が掲げてある。
コロナ禍の最中は、休止していたサービスだ。
お酒をまったく飲めないわたしでも、お風呂で飲むビールはさぞかし美味いだろうなあ、いいなあ……と感じる。
大浴場を出てすぐの「湯上処・悠」には、飲み放題の味噌スープがあって、わたしは3杯飲んだ。
透き通るように上品な味噌スープで、いくらでも飲める。
◯
さて〔上松や〕の朝ご飯。
お味噌汁は具沢山で、サラダも盛り盛り。
ドレッシングはどれも美味しそうで、信州ならではの、わさび、胡桃、りんごの三種類を選べる。当然、わたしは三種類すべてを制覇する。
手作り豆腐は、ローズソルトを指でぱらぱらとかけて食す。
お膳の中は、そろいもそろってご飯のお供だらけだ。
緑色の大根おろしは、そのままご飯の上に乗せて、醤油をひと垂らしかけてもいいし、すぐ隣の卵焼きに乗せてもいい。
肉味噌をちょこんと乗っけてもご飯が引き立つ。
鶏のナムル風はぺろりと一口で、、香の物は牛蒡の辛味噌漬けや梅干しで、またご飯が進む。
茶樹茸のきんぴらは、そのままストレートに口へと消えた。
福味鶏(ふくみどり)の手羽先と、大根のやわらか田舎煮は旨味が凝縮されていて、その汁までいじきたなくも残さず平らげる。
さすがに手羽先の骨は残したけど。
そうこうする内に、蕎麦スープが沸き立つ。
しめじとネギがたっぷり入ったスープだ。
信州蕎麦を投入し、その上に馬肉の時雨煮をてんこもりに。
よほど美味しかったのか、両親はつゆまでぜんぶ飲み干していたのが、なんだか嬉しかった。
その間、信州産りんごジュースや、新鮮な牛乳を何杯もおかわり。
最後、メインディッシュとして、銀鮭の奏龍(なきりゅう)味噌・幽庵笹蒸焼きという、めちゃかっこいい名前の鮭が、ふっくらと焼きあがってくれた。
味噌で味がついているから、そのままでも美味しいし、またご飯が減る。
さらに追加として、手前に置いてある肉味噌も乗せて食べると、濃い味が口の中でふくらんでくれる。
他に、焼き海苔もあれば、納豆ふりかけもある。
つまり、ご飯が主役。
締めには、りんごプリン。
ぷりんは宇宙の真理であり、至高の存在であるが、りんごならではの甘味と酸味が加わることで、より神の領域へと近づいている。
◯
別所温泉には、いくつかの外湯があるが、せっかくならそちらも堪能したほうがよい。
〔上松や〕さんから出てすぐのところに〔石湯〕がある。
ここには、池波正太郎の揮毫による「真田幸村公 隠しの湯」の石碑もある。
母と二人で湯の準備をして、部屋から出ようとしたら、出無精の父が珍しく、誘いに乗ってくれた。
激しい雨の中、上松やさんを出て、前を流れる湯川を覗くと、えらいことになっていた。
「やべー、こんなに荒ぶる濁流の湯川、初めて見た……!」
いつもは、やさしいせせらぎなのだが……。
石湯は、その名の通り、湯の壁面に石を積み重ねてある。
そんな風情の中、湯が石をつたって注ぎ込んでいる。
「おとん、いるかな」
「いるでしょ」
「じゃあ声をかけてみるかな……おとん、いるー?」
男湯には他に誰もいなさそうだったので、大声で呼んでみたものの、返事はなかった。
洗い場で頭を洗っていたおばあさんが、生暖かい視線を向けてきた気がしただけで、終わった。
つづく(次回、どしゃぶりの上田をゆく)
この記事のシリーズ → マガジン「信州上田の旅と美味」