【福岡】 女子三人旅(一)コシ不要の名物うどん
おひなさまの頃に訪れた太宰府天満宮は、冷たい雨。
ともすれば息が白くさえなりそうな中を、わいわいと女子3人がはしゃいで歩く。
女子同士で旅行をするなら、3人くらいがちょうど良いかもしれない。
や、メンバー次第で2人でも4人でもいいかもしれないけど。
でも、特に仲がよい友達同士なら、3人はバランスが良い気がする。
と、前置きしたものの、今回はひたすら女子旅できゃっきゃと騒ぐだけのお話。
◯
JちゃんとOちゃんとは、仲が良い三人組。
とは言え、Jちゃんは九州なので、直接会えるのは東京で、年に一回とかそのくらい。
旅は勢いが、大切。
えいやっと、福岡への飛行機を予約し、ホテルも押さえて、Oちゃんと羽田から飛んで行くことにしたのだ。
◯
うどんと言えば、コシが大切。
コシのある無しで、美味しさは大きく左右される、と思ってる。
ところが……。
福岡のうどんは、コシがまったく無いそうだ。
むしろ、コシなど要らん、とさえ言われるとか。
「でもまあ、パスタもアルデンテがある一方で、昭和の時代から受け継がれてる、たっぷりデンテも味わいがあるし。それと同じってことかな」
違うかもしれない。
福岡駅でJちゃんの車に拾ってもらってから、まずはお昼ご飯にと〔うどん平〕と銘打ったお店へ。
ここは、ごぼう天などのトッピングが評判ということで、
(コシの無いうどんかあ……)
いつもの好みとは違っても、結局のところ、
「美味しいは正義!」
なのだ。
大盛りにしたのはわたしだけで、これではまるで、わたし一人が大喰いみたいで嫌だなあ……ちらり、そんなことを考えつつも、つるんと汁まで全部、胃袋へおさまってくれた。
むしろ、あと一杯は同じのが行ける。
上品な色合いの汁には、食欲を誘うような天ぷらのあぶらが浮いていて、これだけで胃袋が轟きそう。
いざ、うどんをすくいあげ、ずるると啜ってみると、噂に聞きし通りの柔らかさで、何の抵抗もなく噛めてしまう。
単にふにゃふにゃとしたうどん、という訳では無いところが、さすが、評判になってるだけのことはあるよね。
◯
主目的は「Jちゃんに会いに行こう!」ではあるものの、福岡らしい場所をめぐるのも忘れない。
太宰府天満宮。
氷雨の降る中、靴の中も若干の洪水になりつつも、楽しく会話しながら歩き続ける。
会話の内容なんて、一切おぼえていない。
ただその刹那が楽しければ、それで良い。
それこそが、女子旅。
お参りをし、おみくじを引き、吉だの凶だのと騒いで、人がかけた絵馬を覗き込んでは「祈りが通じるといいね」と思ったりもし、寒さの中で五分咲きくらいの桜を見上げ、境内の中でひっそりと咲き誇る梅の花を愛でたりもし、池の鯉を眺めていると、
「のどかちゃん、早く早くー」
橋の上から二人に声をかけられ、そそくさと橋の階段を昇っては、うっかり傘がずれて雨にあたったりもし。
「女子同士の友情、ばんざい」
こっ恥ずかしいセリフを、二人に聞かれないよう、こっそりつぶやくのだった。
◯
夕食は、Jちゃんが探してくれたオシャレ系のお店。
ワイン系が似合そうなお店。
二泊三日の旅程で、ほとんどのチョイスはJちゃん任せだったけど、どこも良かった。
会話の中身なんて、他愛もないものばかりかもしれないけれど、こういうの、大切なんだよ。
女子同士の友情、ばんざい。
その夜、佐賀駅に程近いホテルで。
たっぷり雨を吸った靴を乾かしつつ、Oちゃんとおしゃべりに興じていた時。
ふと唐突に、わたしの心へ、何かが降りてきた。
(そろそろ……無謀ながらも、ちゃんと夢に向き合おうかな。難易度が高すぎて、ずっと怖気付いていたけど)
女子旅には直接関係のないことではあるけれど、どういう訳だか自然にそんな思いがよぎった。
たとえ無理ゲーでも、ちゃんと小説家を目指そう、て淡いながらも唐突な決意が。
翌日に続く