【上田】別所温泉・上松や(一) 料理思考室
推し温泉旅館がある。
長野県上田市の別所温泉・上松や。
いつの間にか常連になってて、すっかり顔をおぼえられてる……という次元じゃなく、予約のために電話した時点で、名乗る前に察してくれるレベルになってた。
そりゃね、毎年のように行ってれば、顔どころか声すら記憶にのこるよね。
時には、3ヶ月たたずに行って、びっくりされたこともあったし。
ということで、好きな「美味」や「土地」に思いを馳せながら、まずは最初、わたしが推してやまない「上松や」さんのことを気のすむまで好きなだけ語ってみたい。
最後に行ったのは去年の11月なので、また、そろそろ行きたくなる頃合い。
上松やさんへ到着すると、ロビーからエレベータで上がり、客室までの道のり、次のエレベータへ乗り継ぐために、少し歩く。
その途中、左側にあるドアの、小さなプレートに、
「料理思考室」
とあるのが大好き。
初めて上松やへ訪れ、これを発見した途端、料理がとても期待できる気がした。
上松やさんは、全体としてはノーマルな温泉旅館だと思う。
それでいて、どこか必ず個性がはみだしている気がする。
たぶん、上記の「料理思考室」などといった命名センスに代表されるような部分に、それがくっきり現れてるのかもしれない。
だから、リピーターになってしまったのだと思う。
料理を開発し工夫するのは、きっと板前として当たり前の努力なのだろうけど、ここで『思考』という言葉を用いるところに、他とはちょっと違う、探究心と遊び心のようなものがあって、一気に引き込まれてしまった。
きっと柔軟な思考力で料理を日夜かんがえつづけ、かつ本道を決して外さないものを客に提供する、そういう姿勢なのに違いない、と。
実際、期待は裏切られなかった。
夕食に出てきた添え書きのメニューをざっと眺めると、地産地消の料理だらけ。
料理のほとんどを地元の食材だけで実現するには、半端ではない創意工夫が必要となると思う。
山の中なのに、もし、まぐろの刺身なんかが出てくると、
「なんでや!」
つっこみを入れたくなる性分なので。
その土地だからこそ食べられるものに的を絞ってくれれないいのになあ、と。
メニューの冒頭には、たとえば『紅葉の頃を待ちわびて』や『初夏の思い出』などと、詩的情緒をかもし出す言葉を添えた上で、食前酢、先椀、前菜、造り……と続き、最後の香の物から甘味にいたるまで、その多くが信州産であることが明記してある。
お造り、つまりお刺身ですら、信州産で固めてある。
信州サーモンや岩魚などで、それを食すための醤油ですら、信州味噌のたまり醤油だったりする。
川の魚を刺身として提供するのは、鮮度や腕前に相当な自信がなければ無理だと思う。
通常、川魚は臭みや寄生虫の問題もあるので、そこをクリアするためには、かなり神経を費やさなければならないのではないだろうか。
なおかつ、量が尋常ではない。
わたしも、うちの旦那も大食漢なのに、充分なほど満腹になれるレベルなのだから。
それでいて、一品一品に料理人さんたちの創意工夫がつまっていてくれるのが、めっぽう嬉しい。
さて、いよいよ夕ご飯の時間となって……次へつづく。
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