落選した時こそ、焼肉だ!
嬉しいことや、頑張ったことのご褒美に食べる、それが焼肉。
何かをお祝いしたい時には、みんな食べに行く焼肉。
でも、わたしの場合は逆なのだ。
落選焼肉が、わたしの定番。
◯
「普通、逆だろ!」
とはよく言われるけれど、小説の賞で落選した時には、焼肉を食べることにしている。
受賞できたら、それ自体がご褒美なので、焼肉の必要なし。
考えてみて。
もし落選したら、ただただしょんぼりするだけで、何もないっていうのは、追い打ちに近いよね。
選考結果が近づくにつれて、そわそわと気持ちが削られて、本当にダメだった時の落胆といったら、もう……。
でも!
「もしこれがダメだったとしても、焼肉へ行けるしな」
と思っていたら、そのメンタルの削られっぷりは軽減される。
受賞できても焼肉へ行くことにしたら、落選のショックを軽減する意味も効果も薄れてしまうよね。
◯
歴史小説にて、とある賞で最終選考までいけた。
なので、いつもより一つ上のランクで、牛タンも食べまくれるコースにしようと決めていた。
編集者さんからの電話にて、
「残念ながら……」
と聞かされた時の、激しく奈落へ突き落とされるほどのしょんぼり感。
そんな気持ちの急落下を受け止めてくれるクッションが、焼肉なのだ。
◯
落選の報を受けた翌日、さっそくいつもの焼肉食べ放題コースへ。
いつもは豚タンまでしか注文できないコースだけど、今回は牛タンも食べまくれる。
これも、運良く最終選考まで行ってくれたおかげだ。
あまり焼きすぎない、レアがわたしの好み。
さっと炙り、さっとお皿へ。
焼きすぎて固くならない食感と歯触りが、心地よい。
とりま、6人前を一気に注文し、ひたすら焼く、食べる、焼く、食べる。
焼いている最中に振った塩が、熱と脂に溶けて牛タンに馴染む。
仕上げにレモン汁へちょいとつけて、口の中へ放り込むたび、嬉しい酸味と塩味が口中を満たす。
もちろん、他のお肉も食べる。
ほぼステーキにも等しい、巨大カルビも焼く。
脂が多いので、炎の上がりっぷりも豪快だ。
両面を焼いた後には、網の端っこへ移動し、ほぼ予熱的に熱を通す。
こうすると、焼きすぎることなく、じわじわ火が浸透し、レアあるいはミディアムに近い焼き上がりで、とても柔らかい。
ハラミ、モツ、ミスジ、レバー、じゃんじゃん焼いては、網の端っこへ移動させ、頃合いを見て引き上げる。
わたしの好みは、わさび。
これが脂っこい肉にはよく似合う。
束の間、肉々しい饗宴に舌を喜ばせながら、
「わたし、頑張った! わたし、よくやった! 結果は残念でも、これでまた、次に挑戦できる!」
本当なら、落選焼肉なんてこれが最後であってほしい。
もしいつの日か、賞に応募する必要もなくなった暁には、やがては「新作刊行焼肉」に移行できるといいな、と切に願う。
今はまだ、無念の思いを受け止めてくれる焼肉が、わたしには必要。
残念だった時にこそ、焼肉へ行こう!!
次への挑戦に必要な気力をチャージするために!!
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