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【日光】霧雨に隠れる華厳の滝と、ふんわり優しいゆば丼

 両親が、北関東へやって来た。
 日光旅行したいというので、案内役をした。

 お天気アプリでは、曇りのはずなんだけど、現地は霧雨にけむっている。
 そんな中で華厳の滝を見に行ったのだけど……。

音だけはすごいね」
想像力が掻き立てられて、いいね」

 普通の雨なら、まだよかったと思う。
 霧雨は細かすぎて、ほぼ霧である。
 乳白色の帷に隠されて、まったく見えやしない。

想像力を試される華厳の滝

 そんなわたし達の横をすり抜けていった子供が、親へ向かって元気に言っていた。
「下に降りたら、ますます見えなかったね! 上の方がマシだったね!」

 日光といえば、湯葉が名物とされる。
 京都も湯葉が名物だけど、両者には違いがある。
 どう違うの、と母に質問されたので、答えた。
「トイレットペーパーに例えると、シングルが京都で、ダブルが日光」
 実にわかりやすかった、と褒めてくれた。

 そんな湯葉を是非とも食べさせたい。
 観光地で営業しているお店は、値段だけは立派だけど質がちょっと……ということが多いのは覚悟の上で、
「えーと、華厳の滝の駐車場から歩いて3分のとこで食べます」
 まあ、名物というのは「現地で食べた」という体験こそが重要なんだ。

自然食の店・桐花〕というお店だ。
 結論から言うと、とても美味しかった!
 けど入る前は「どうかなあ……」と悩んでいた。
 正直、自然食を謳ったお店で、美味しかったことなんてあまりない。
 おしゃれっぽい盛り付けだけが特徴で、量は実にケチくさい。
 そういう類のヘルシーさは、意識高い系のおばさんとかに任せておけばよいのだ。

 しかし、お店のおばちゃん達は、実に対応が親切だった。
 テーブルに飾ってあった風変わりな松ぼっくりに興味を示した母へ、
「どうぞ持っていって。いくらでもあるので」
 とプレゼントしてくれたりもする。

 放っておいても観光客が来る立地で、少し意外に思った。
 あるいは、わたしが妙な偏見を持っていただけなのかもしれない。

内装の雰囲気も、よき

 わたしと母は、ゆば丼。
 蕎麦(あるいはうどん)の小鉢がついてくる。
「わたしは、ご飯を少なめでお願いします」
「あ、わたしは大盛りで!」
「ええ、それなら、お母さんの分を、お嬢さんに移しておきましょうかね」
 実に融通を聞かせてくれる。

おすすめメニュー
ゆば丼、ミニ蕎麦、山菜、おしんこ

 実物は、優しい風味のあんかけ丼で、ふわふわのゆばの周囲にはしめじ等が取り巻いている。
(甘そうだなあ……)
 天津飯を連想しながら、いざ実食してみると、危惧していた甘味はふんわり漂う程度で、むしろ生姜がぴりりと、よい仕事をしている。

ふんわり優しいゆば丼

 予想外に満足できたわたしは、また車を走らせ、奥日光へ。
 この霧雨の中、中禅寺湖も降り煙っていた。
(滝、見せられなかったな……)
 そんな無念さをかかえたまま、中禅寺湖から離れた、そのとたん。
「あった、見応えのある滝が、もうひとつ!」

 つづく(次回、竜頭の滝の茶店で一服)

霧雨の中禅寺湖

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