【日光】霧雨に隠れる華厳の滝と、ふんわり優しいゆば丼
両親が、北関東へやって来た。
日光旅行したいというので、案内役をした。
お天気アプリでは、曇りのはずなんだけど、現地は霧雨にけむっている。
そんな中で華厳の滝を見に行ったのだけど……。
「音だけはすごいね」
「想像力が掻き立てられて、いいね」
普通の雨なら、まだよかったと思う。
霧雨は細かすぎて、ほぼ霧である。
乳白色の帷に隠されて、まったく見えやしない。
そんなわたし達の横をすり抜けていった子供が、親へ向かって元気に言っていた。
「下に降りたら、ますます見えなかったね! 上の方がマシだったね!」
◯
日光といえば、湯葉が名物とされる。
京都も湯葉が名物だけど、両者には違いがある。
どう違うの、と母に質問されたので、答えた。
「トイレットペーパーに例えると、シングルが京都で、ダブルが日光」
実にわかりやすかった、と褒めてくれた。
そんな湯葉を是非とも食べさせたい。
観光地で営業しているお店は、値段だけは立派だけど質がちょっと……ということが多いのは覚悟の上で、
「えーと、華厳の滝の駐車場から歩いて3分のとこで食べます」
まあ、名物というのは「現地で食べた」という体験こそが重要なんだ。
〔自然食の店・桐花〕というお店だ。
結論から言うと、とても美味しかった!
けど入る前は「どうかなあ……」と悩んでいた。
正直、自然食を謳ったお店で、美味しかったことなんてあまりない。
おしゃれっぽい盛り付けだけが特徴で、量は実にケチくさい。
そういう類のヘルシーさは、意識高い系のおばさんとかに任せておけばよいのだ。
しかし、お店のおばちゃん達は、実に対応が親切だった。
テーブルに飾ってあった風変わりな松ぼっくりに興味を示した母へ、
「どうぞ持っていって。いくらでもあるので」
とプレゼントしてくれたりもする。
放っておいても観光客が来る立地で、少し意外に思った。
あるいは、わたしが妙な偏見を持っていただけなのかもしれない。
わたしと母は、ゆば丼。
蕎麦(あるいはうどん)の小鉢がついてくる。
「わたしは、ご飯を少なめでお願いします」
「あ、わたしは大盛りで!」
「ええ、それなら、お母さんの分を、お嬢さんに移しておきましょうかね」
実に融通を聞かせてくれる。
実物は、優しい風味のあんかけ丼で、ふわふわのゆばの周囲にはしめじ等が取り巻いている。
(甘そうだなあ……)
天津飯を連想しながら、いざ実食してみると、危惧していた甘味はふんわり漂う程度で、むしろ生姜がぴりりと、よい仕事をしている。
◯
予想外に満足できたわたしは、また車を走らせ、奥日光へ。
この霧雨の中、中禅寺湖も降り煙っていた。
(滝、見せられなかったな……)
そんな無念さをかかえたまま、中禅寺湖から離れた、そのとたん。
「あった、見応えのある滝が、もうひとつ!」