【富山】大岩山の清らかなそうめん その1
夏のひと時、人から「遊びにおいでよ」と誘われて、富山県へ行ってみた。日本海側にある、北陸地方だ。
「大岩山のそうめんを食べに行こうよ」
と誘われるままに、一路、山道へ。
大岩山は、とても水が豊富な場所で……というより、富山全体が水に潤う土地だけど、ここはとくに清冽な水に溢れている。
大岩山は不動尊を祀っている寺院で、線香と蝋燭の香りがただよい、本尊の中には、巨岩に刻まれた不動明王が鎮座していて、圧倒的迫力を放っている。
本堂の脇には七つの細い滝が流れ落ちていて、滝行をしている人たちがいる。
滝行には、惹かれる。
かつて地元の山寺で予約し、たった一人で滝行をしにいったこともある。
その時は、お坊さんに導かれるままに寺院の奥から山道を登り、その奥にある滝に打たれてきたものだった。
手間もお金もかかった。
が……この大岩山では、もっと気軽に滝行ができるようになっているらしい。
なんとたったの2000円で、予約もなしで受け付けているとか。
「や、でもタオルや着替えもないしなあ」
看板には「白衣の下には水着を推奨しときます」みたいな文言が書かれている。
当然、水着なんか持ってきているはずもない。
そんなに迷っている時間はない。
どうするか……。
とかためらっている間に、私は脊髄反射的に、申し込みを終えていた。
やるかどうか、ではない。やると決めた瞬間に、その行動は終わっているのだ。
更衣室から白衣で出たわたしの写真を後で見せてもらったら、自分で思っている以上に、うきうきしていた。
一礼し、裸足で滝行の場へ。
ちょうど他の人たちが終えたところで、その場でプチ修行をしているのは、わたし一人だけ。
とたんに、無関係な観光客たちが、わたしを狙い撃ちでスマホ撮影をはじめやがる。やめてくれ……!
それは放っておいて、ただ無心に般若心経を唱える。
(3周くらい唱えとけば、いいかな)
中学生の頃に、般若心経は暗記済みだ。
終わって、意気揚々と引き上げようとすると、一緒に来ていた家族が何やら叫んでいる。
「透けてる、透けてる!」
その後のことは、書きたくない。
◯
大岩山では、何軒かの茶屋がある。
茶屋というより、旅館らしい。
昔は交通の不便な山の中までお参りに来ると、宿泊場所が必要だったに違いないし、たぶんその名残りなんじゃないかという気がする。
さて、メニューを見ると、目当てのそうめんばかりではなく、
・岩魚の塩焼き
・山菜の煮物
・白玉だんご
・くずきり
などがある。ああ、夢がひろがる。
そうめんは当然としても、
「岩魚の塩焼きは、絶対だ!」
わたしが決断するのと同様、みんなもそれぞれくずきりや白玉だんごも頼んでゆく。
まずは、そうめんが来た。
つけ麺ではなく、つめたい汁にそうめんがひたっている。
その汁もきわめて上品で、そうめんの清々しさにつきづきしい。
市販のめんつゆを薄めた代物などとは、大いに違う。
この大岩山に湧き出る清水を、体内にとりこむような清らかさを感じた。
さて、他のメニューが出てくるのも楽しみだ。
つづく
おまけ
あのそうめんが忘れられず、自宅でも作ってみた。
うん、悪くない。
今後はこのそうめん汁を、うちのスタンダードにしてゆきたい。
まずは手鍋に湯を沸かし、料理酒を投入。
アルコールが飛んだところで、火を止める。
昆布の顆粒出汁をいれる。これはケチらない。
塩をひとつまみ。
最後に、ほんのわずかに醤油をひとたらし。
生姜は生のものをちゃんとすりおろす。
チューブ入りのは、なんか薬臭いしね。
ネギをそえて、中央にとろろ昆布を鎮座。これはわたしのオリジナル的工夫ってことで。
美味!