【ハノイ】ベトナムその6 ベトナムのつけ麺と、たまごコーヒー
ベトナム最後の夜を、美味しいご飯でわいわい過ごす。
〔ブン・チャー〕というのは、ベトナムのつけ麺みたいなもの。
当然のように、麺は米粉。
◯
夕方、Yさん達とわいわいおしゃべりしながら、夕食へ向かう。
時に細い路地を通り抜けたり、あちこちぐねぐね曲がったり、ついに辿り着いた先は、とても庶民的で安い感じの、小さな食堂だった。
変に小綺麗な店より、こういうところこそ大好き。
人によっては「衛生的じゃない」と嫌うかもしれないけどね。
昔話で盛り上がりながらも、Yさんの方で手慣れた感じで注文してくれる。
出てきた〔ブン・チャー〕は、フォーと同様に澄んでヘルシーな魚醤ベースの汁に、肉団子がぷかぷか浮いている。
油っけは、あまりない。
こういう料理が多いから、ベトナム人女性はスリムな人が多いんだろうな……。
ちな、うちの実家のおかんは、職場で仲良くなったベトナム人の友人が多いらしく、たまにベトナム料理をつくってもらって食べることがあるらしい。
「こないだ、バンチュン(笹巻き)青豆粉を作ってきてくれて美味しかった。お正月にたくさん作って食べるんだって。私はベトナムの料理は中国料理より食べやすい」
というようなことを言っていたっけ。
さて、ブン・チャー。
付き合わせのパクチーとか、テーブルに用意してある各種調味料で好きな感じに味を整える。
わたしはやっぱり、唐辛子を多めに浮かべたい。
ブン(米粉の麺)をそこへひたしては、啜る、啜る、啜る。
途中、揚げ春巻きのようなものも出てきた。
これもブン・チャーに含まれるっぽい。
これは、ハノイなどの北部で「ネム・ザン」と呼ばれているものらしい。
ザルに持ってあるレタスもつまんで、汁へひたしては、ばりぼり食べる食べる。
◯
まんぷくになったところで、お店を出て、夜風に吹かれながら、ゆっくりYさん宅へ戻るが、
「たまごコーヒーの店があるんだけど、飲んでみる?」
という話になった。
たまごとコーヒー。
妙な取り合わせなので、好奇心が刺激される。
少し入り組んだ住宅街を抜けた、そのどんづまりに、カフェはあった。
内装は、ちょっとお洒落風な、バーともカフェともつかない雰囲気。
メニューにはいろいろとあったけれど、普通のベトナムコーヒーよりも、話題にでたエッグコーヒーを選択する。
出てきたカップをみると、下が褐色で、上が白いクリーム。
ガラスなので、上下二層に分かれているのがよく見える。
すぐに混ぜてもいいけれど、味変が好きなわたしは、そのまま口をつける。
まずは、濃厚な卵黄クリームが舌を満たす。
「なんか、プリンみたい」
さらにカップを傾けると、下の層のコーヒーがクリームを割って口へ流れ込む。
甘味が効いているものの、とてもビターで、力強い味わい。
上のクリームは、卵黄と練乳をホイップしたものらしい。
そりゃ、プリンっぽい舌触りと味わいになるわけだよね。
最後には、ゆったりかき混ぜて、上下が融合した状態で飲み干す。
カフェでまったりすごし、会話も途切れることはなく、やがて夜の9時。
さすがに、そろそろ支度をして空港へ向かわないといけない。
本来は、この2〜3倍の日数が欲しかったなと思いつつも、忘れられないようなベトナム最後の夜をゆったりと過ごし、後ろ髪をひかれる思いで、さよならを告げた。
◯
空港での行列にて。
舌でくちびるの上を舐めてみると、ほんのわずか、エッグコーヒーの名残りを味わえた。
ばいばい、ベトナム。