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【ガチ中華】秋葉原 香福味坊

 ガチで現地の味が好き。
 特に中華料理は、実際に数ヶ月も現地を渡り歩いただけに、わたしにとっては懐かしい味でもある。
 ここ最近、ガチ中華のお店が続々と誕生しているらしい。
 わたしの時代が……来た!

 できるなら、日本人の舌へいっさいの忖度のないお店であってほしい。
 調べてみると、新大久保の西側や、上野のアメ横にそういうお店が集中しているらしい。
 他には新宿や渋谷などの、日本随一の繁華街。

 そんな中で、やたらとネットで取り上げられているお店が、秋葉原にある。
 秋葉原……?
 しかも、日本人によるレビューが多い。
 このお店、本当にガチ中華なん?

 とか首を傾げているうちに、秋葉原での用事ができた。
 どうせなので、おそるおそるその〔香福味坊(XiangFuWeiFengしゃんふーうぇいふぁん)〕なるお店へ足を運んでみた。
「本当にガチの中華なら、こんなにも日本人ウケするとは思えんのだけど……あるいは、あらゆる日本人の味覚が、ついにわたしの舌へ追いついたんだろうか……」
 傲慢なことを心の中でつぶやきながら、店内への階段を降りた。
 店は、地下にあった。
 秋葉原駅の昭和通り口から出て、歩いてすぐの一角にあるお店だった。

紹興酒の壺

 地下へと降りる階段には、紹興酒の壺がならんでいる。
 このあざとい演出、ますます味への疑念が深まる。
 店構え自体も、綺麗すぎる。
 わたしが求めているのは、ひとめで「中国人以外おことわり」な雰囲気をぷんぷん漂わす雰囲気なのだが。

香福味坊のランチメニュー

 小綺麗な店内で、中国語なまりの日本語で案内されながら、席へ着く。
 ランチメニューを見た瞬間、
「君に決めた!」
 炒烤羊肉
 羊肉の炒め物だ。

 羊は、日本ではどうしてもマイナーな肉だけど、世界的、歴史的に俯瞰すれば、人類が最もたくさん食べてきたと思われる肉。
 他にも、日本でもおなじみの油淋鶏や坦々麺などもあったけど、迷わずこれを選んだ。

 惣菜は、好きなだけ取ってよいらしい。
 サラダや唐揚げ、もやしなどを小皿へてんこ盛りに。
 周囲を見渡すと、その小皿をふた皿以上もがめている人がいて、
「あの、すみません、これってもう一皿盛ってもいいんでしょか?」
「いいよ」
 愛想もなく、店のおばさんが答えてくれた。
 この愛想のなさで、ちょっぴり店への信頼度が高くなった。
 ガチ中華であるなら、このくらい無愛想な方が「らしいね……」と期待値が高まる。

取り放題の惣菜

 やがて、羊肉の炙り焼きが出てきた。
 炙るというか、炒めてある。
 おそるおそる、その一切れを口へはこぶと……とたん、口中に、香りが拡がった。
「これは、西安の街角の風味……!」
 一瞬で、現地へ飛んで行った気がした。

「すまん……疑ってほんとすまん……すごくガチ中華で、好き」
 心の中で謝りつつ、味を堪能した。

炒烤羊肉
水餃子

 ガチ中華は、あくまで「ブーム」らしいから、いずれはどうなるか、わからない。
 でも、こういうお店が存在してくれているかぎり、なるべく、
「足を運んでおきたいな」
 ちょっぴり浮きたった足取りで、ライブ会場へ向かった。
 この後は、推しのネットラッパーのライブだ。
 昼間から夜へとかけて、延々6時間、演者がへべれけに酔っ払ってもラップを強行する、過酷で楽しいライブが待っている。

ネットラップ・ありまつさん主催の「ハローネガティブvol32」

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