【ダナン】 ベトナムその3 五行山・あるいは秘密結社の要塞?
日本に例えるなら、東京から広島あたりへ日帰り旅行するようなもの。
片道1時間半のフライトで、その日のうちに戻ってくる強行軍。
K美さんは超絶寝不足。
わたしの咳が一晩中ずっと鳴り止まなかったらしい(寝てたので自覚なし)。
一路、風雅な伝統的土地である、ダナンへ。
◯
〔五行山〕と聞くと、西遊記的イメージがふくらんで、わくわくする。
その名の通り、だいたい5つくらいの険しい岩山がそそり立っている場所なのだ。
あたかも、神仏が手のひらを地上へ押し付け、それが巨大な岩へ変じたかのような。
そんな岩山には空洞が広大に拡がっていて、そこかしこに仏像が安置してあったりもするし、
観光客向けにライティングされていたりもするのだが、洞穴中央にそそりたつ石碑なんて、赤い光のせいで、
「封印されたる邪悪な何かが、今にも復活をとげちゃいそうな……」
素敵な雰囲気をかもしていたりもする。
断崖絶壁の脇に建つエレベータへ乗るべく、長い長〜い列にならぶ。
2月末でも、南国は強烈な炎天下。
ようやく順番がきて、一気に岩山の上へ移動すると、そこは海が近い南国リゾートの爽やかな景色と風。
とはいえ、各所は狭くて急で不安定に摩耗した石段でつながっていて、ここを移動するにはとても体力を消耗する。
K美さんは、なぜだかすでに疲労困憊。
しかし、わたしは五行山の中をまるっと見て回りたい。
各所の寺院や洞窟の仏殿があちらこちらに配置してあり、その様子はさながら、
「秘密基地感まんさい!」
なので、
「ごめんK美さん、ここで20分ほど待ってて!」
宣言し、わたしはダッシュで急勾配の階段や通路を走っていった。
なお、ここでは普通に会話しているような感じで書いてあるけれど、昨夜の楽しすぎるおしゃべりタイムのせいで、ただでさえ傷ついていた声帯にとどめをさしちまったらしく、声がまったく出なくなっていたので、スマホによる筆談で会話をせざるをえない状況になっていた。
それ以外はいたって元気なので、つるつると丸く摩耗している大理石の階段を駆け上がったり下りたりで、とにかく制限時間ぎりぎりまで見物しまくる。
岩壁にぽっかり空いた洞窟の中へ飛び込むと、むっとするほどの線香の煙の中に、ぽつんと仏像が安置してあったりもする。
さながら、諸星大二郎の世界観だ。
またもや飛び出して、広場のはしっこの深い割れ目を覗き込んでみたり。
中国風のあずまやを見上げて、かつ売店で売っている冷たくて美味しそうなジュースを尻目に、猛ダッシュで岩窟内の岩寺院を眺めてみたり。
その岩窟寺院は、天井に空いた穴から日光が差し込んでいて、まるで、映画のワンシーンのような神秘性をかもしていた。
通常なら二時間くらいたっぷりかけるであろうコースを、可能な限り体力だけで回収してゆく。
地図を片手に、スマホの時計を確認し、
「ああ、ここまでだな……」
一応は半分以上いけただろうか。
「アサシン・クリードとかに出してくれてもよさげな構造だったよね。ていうか、マシャフみたいなアサシン達の要塞みたいな作りだし」
脳内で、わたしの好きなゲームのシリーズを想起しながら、待ちぼうけをくわされているK美さんの元へともどったのだった。
次の目的地は、風光明媚な古都・ホイアン旧市街だ。
つづく