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[Q&A]非特許調査の「論文コピー代」とは?

Q:論文(非特許)を対象にした無効資料調査を依頼した場合、
見積額とは別に、文献コピー代の実費が必要、と聞きました。
1)文献代は調査案件ごとに変わる、と考えてよいですか?
2)ざっくりと 〇円くらい、といった費用感を知りたいです。

・・・というご質問を頂きました。

調査会社によって対応は違う可能性がありますが、
弊社の場合は、次のようになります。

A1:はい、文献代(実費)は調査案件毎に変わります。
A2:例えば海外論文を10件取り寄せると、
   40ドル×10件 = 400ドル ≓ 48,800円(2022.3.25時点)
   で、5万円程度の実費が発生、という費用感です。

ずっと知財業務を専門にされている方の中には
「え!論文コピーってそんなに高いの?」と感じられた方もいるかもしれないですよね。(私も最初は「高!!」って思いました)

そもそも、どうして論文コピー入手が必要なの?

特許情報は全文がデータベース化されていて、全文検索もできるし、
各国特許庁のデータベースで全文PDFを入手できるのが「普通」です。

ですが、論文の場合は「全文データベース」「Webでの全文閲覧」って、
そこまで一般的ではありません。
抄録を検索して「良さそうかな」と思ったら全文を入手するのが普通、です。
私「これって電子書籍を買うときに似てるかも!」って思うんですよね。

論文調査 ≓ Amazon Kindle ?

みなさん、読書は「紙の本」派ですか?電子書籍派ですか?
二択ではなくて「両方使い分けてるよー」って方も多いかもですね。
ここでは Amazon Kindleで電子書籍を買うとき、を例に説明を進めます。

たとえば「世界史」の本を探していて、最近出版されたらしいこちらの本が目に留まった、とします。

面白そう? 役に立ちそう? 
買って「うっ、失敗した!」ってならないかな??

・・・と考える時、検討材料は

・「試し読み」に目を通す
・レビューを参考にする
・著者や出版社を手がかりにする

位のものではないでしょうか?
Amazonではリアル書店や図書館のような「立ち読み」ができないので
「試し読みやレビューが良さそうだったら、えいやっ!と購入」
という状況になりがちかな、と思います。

非特許文献(論文)調査もAmazonと似ていて

論文立ち読み(全文確認)はできない状況の場合、
データベース上に表示される抄録等を頼りに、
良さそう(調査テーマに関連しそう)だったら、
「えいっ!」と入手して、全文を確かめるしかありません。

そうなのですが・・・
概ね10~20頁程度の論文が40ドル(4,800円)前後。
もちろん「ハズレ」もあるわけで、
時には「しくしく・・・高い、高いよ・・・」となるわけです。

論文って無料で見る事はできないの?

最近は「自分の論文を、所属する大学のサーバー上で公開」といったケースも多くなっています。
Google Scholar で見ると、横に [PDF] と表示されるのは
「無料のPDFが公開されている」という意味です。

また、COVID-19の流行以降は「研究成果をなるべく速く共有する」という目的で「プレプリントサーバー」の利用が増えています。(詳しくは下記の記事をご参照ください。)プレプリントは無料で見れるものが多いですね!

「闇の存在」海賊版サーバーのお話

日本で暮らしていても、ある意味「論文コピー代、決して安くはないな」と感じるくらいですから、発展途上国の学生や研究者は、一層「コピー代が痛い・・・」と感じるであろう事は、想像に難くありません。

ということで・・・

学術論文の世界には「海賊版サーバー」と言われるサイトがあります。
コミックに例えるならば「漫画村」的な存在、と言えるかもです。

海賊版サーバーでは、実に数千万件の学術論文のフルテキスト(全文)を誰もが無料でダウンロードできるようになっています。
とある調査によると、2015 年 9 月から 2016 年 2 月までの半年間に この海賊版サーバーからダウンロードされた論文 は延べ 2,800 万件。国別に集計すると中国(440 万件)、インド(340 万件)、イラン(260 万件)の順でダウンロードが多かった、という結果も出ています。

※ 海賊版サーバーが隆盛する背景として
「著者ですら自分の論文にアクセスできなかったりする現状」「著者には殆ど原稿料が入らず、論文出版社に収益が入っている」「論文検索サイトが使いにくい」「オープンアクセス化の流れ」など、
多くの問題点がある、と指摘されていますが
今回の主題ではないのでこの記事では省略させて頂きます。

当分結論が出そうにない「海賊版サーバー問題」。
私もオープンアクセスの流れには賛成!です。
ですが、だからと言って海賊版サーバーを使うのは、
多分きっと「電子万引き」的な行為。。。
現状では
 ・著者自身による公開やプレプリントサーバーは
  ありがたく利用させて頂く
 ・上記が存在しない場合は、正規の複写機関から入手
という線引きで考えています。

まとめ:非特許文献と無効資料調査

以上、この記事をまとめますと・・・

・非特許文献調査は「Amazonで本を買うようなもの」
 事前に全文を確かめる事はできない。
・抄録等で検索 ➡ 全文を入手(有料/無料) ➡ 内容確認
・最近は論文のWeb無料公開も増えている。
   (著者自身による公開、プレプリントサーバー)
・海賊版サーバーと著作権保護を巡る問題

・・・といった内容でした。

論文検索に使えるWebサイトについては、こちらの記事もご参考にどうぞ。


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