日本の防災の目指すもの ~ 「事前防災」の拡充と認知促進に向けて ~
昨年の10月に大臣に就任し、3か月が経ちます。警護対象者になり、SPさんといつも一緒の生活だったり、地元の自宅にも一度も泊まれなかったりなど、大きく生活が変わりました。そして何より、この短期間の仕事を通して、警察と防災、国土強靭化という担務は、国民の安全と安心に直結する極めて大切な職務であると改めて実感しています。
今月は防災担当についてお伝えします。
■ 災害対策に注力する石破政権
石破総理は防災庁設置を政策の柱として打ち出すなど、災害対策には大変関心があると同時に、予算や人員などを実際に拡充し、具体的に動いています。今後の防災庁の設置準備の担当大臣は経済再生担当大臣も務める赤澤大臣ですが、目の前にある災害の復旧・復興と現在進めている事前防災の取り組みなどは私のもとで行っています。
12/27に令和7年度の予算案を閣議決定しましたが、その中で内閣防災の予算と人員は文字通り倍増となる案になっています。一言で「倍増」と言っても、仕事は3倍、4倍の量をこなし、新たな方向性を生み出していくなど、次元を変えたと言われる取り組みも目指したいところです。
■ 大臣として目指す防災の在り方
私が現在考える内閣府防災の方向性は、一言で表現すると「『事前防災』の拡充。その重要性を認知させるべし」です。
日本では残念ながら、東日本大震災以降も毎年と言っていいほど豪雨災害をはじめとした災害に見舞われています。それぞれの教訓から、10年前と比べると国の災害対策や対応も進化してきていると実感しますが、ステージを変えていきたい点がいくつかあります。
①全国の対応の統一
日本では地方分権が叫ばれ、国の様式などを標準化することを批判し、様々なことを自治体に任せてきた経緯があります。しかし、それでは立ち行かないものもありました。
もっとも典型的でわかりやすいのが、デジタル化です。それぞれの市町村で使っているシステムがバラバラなので、市町村で入力したデータはその市町村でしか使えず、県が利用したいときは一度すべて紙に出力し、もう一度県のシステムに手入力して使うという、手間のかかることをしていました。
数年前から全国の市町村、県、国と同じシステムでデータのやり取りができる仕組みの導入を進めていますが、完了するまでにはもう少し時間がかかります。
災害対策にも似たところがあります。大きな災害の際、多くの市町村や県から職員に応援に入ってもらいますが、それぞれの行政で手順ややり方が異なり、混乱要因の一つになっています。また、資機材においても、自分の地域で使ったことのない機械の場合、うまく使いこなせないことがあります。
災害対応に関して、よくイタリアが引き合いに出されますが、イタリアでは全国でマニュアルが統一され、機械の展開方法も使い方も同じで、日本で見られるような現場の戸惑いがないようにしているそうです。
ここはデジタル化同様、地方分権の例外として、国でやり方を決め、全国統一のものにするという形に、批判を覚悟して思い切りステージを変える必要があると考えています。
②防災知識を持った職員の育成
同様に大切なのが、各都道府県に防災・災害対策情報や手順を漏れなく伝えていくことです。そのためには、それぞれの地方自治体に災害対応に関しての一定の知識と能力を持った職員が必要であり、その職員育成のために国では防災研修を何種類か提供しているのですが、問題はその研修に職員を出している県と出してこない県があることです。昨年も「話が通じる職員がいない」と支援に入ったNPOから窮状を訴えられました。
つまり、事前の災害対策や災害時の対応も 各首長任せで、常日頃は目に見えないだけで、実際には全国の自治体間で大きな差があるのです。
来年度の予算案で増える人員で、各都道府県の担当者を決め、全国すべて最低限の人材(職員)育成をし、統一した事前防災を行うよう働きかけ、全国で事前対策が行われている日本にしていきたいと思います。
③備蓄と配送の強化
そしてやはり、国レベルでの備蓄とそれの配送に関しても、もう一段前へ進めていきます。
今、国の備蓄庫は立川に1ケ所ですが、それを全国各地に7か所増やし、全部で8か所にし、備蓄の中身も拡充させます。
また、現在、被災地への道路状況も迅速にわかり、適切なタイミングで届けることができるシステムを導入しています。そして県や市町村レベルの備蓄もある程度は国で把握し、災害時には全体の分布なども勘案してプッシュ型で(被災地からの要請がなくとも)物資を搬入するようにしていますが、その精度をより一層上げていきます。
④事前協定の徹底
事前の協定などで災害時に誰がその仕事を担うかを決めておくことが重要です。
例えば今回の補正予算で、国は1回に400人分の温かい食事が用意できるキッチンセットを40個用意します。全部集結させれば16,000人までの避難者の食事が一日3食提供できる能力が備わります。
しかし、調理をしてくれる人や、それを配達してくれる人がいなければ、何より、毎回食材が届かなければ、計算通りにはいきません。そこで、事前にお願いして段取りをしていくことが重要になります。もちろん災害ですからそれでも予定外のことは起きるでしょうが、事前に議論しておいたのとしていないのではその混乱にも大きな差が出ます。
また、「協定を結んで終わり」ではダメで、それに基づいて定期的な訓練を必要とすることが今回の能登地震でも指摘されています。訓練していた自治体には、驚くほど早く物資が届いていることが確認されているのです。
■ 防災庁に必要なこと
今回、基本的には「統一」と「事前」というキーワードで防災の方向性をお伝えしましたが、これらに関してはすでにいくつもの動きがあります。
そして今後の防災庁には、目の前の対応に終始するのではなく、こうした方針を掲げて、それを推進していける余裕のある組織になってほしいと願っています。現場を見て、実は一番足りない点がここだと思っています。今までの人員と災害対応の多さでは、求められる体制に変えていく仕掛けをする余裕はなかったと思われます。
増員していただいたメンバーがやりがいを感じて、全力で日本の防災体制を変えていける環境をつくっていけるよう、私も尽力していきます。
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