フリスク1個ずつ出せるん知らんの?|超短編小説
「1個もうてええ?」
「ええよ」
俺は自分の持っていたフリスクの蓋を外して彼女に差し出した。
彼女は一瞬目を丸くさせた後、笑いながら「いや珍し過ぎるやろ」と言った。
俺が「何が?」という顔をしているのを見て彼女は「え?ほんまのやつ?」と訊いて来た。
だから俺は「何が?」と実際言ってみた。
「いや、フリスク1個ずつ出せるん知らんの?」
「1個ずつ…」
「え?スライドできるんは知ってる?」
「スライド…」
「めず!多分知らんの世界でアンタだけやで」
「…」