NY競り見学記/酒井剛志

アメリカのニューヨーク市の中心部「マンハッタン地区」の対岸、「ブルックリン地区」の川岸に1987年暮れ、「フィッシュポート」が店開きしました。

ボストン沖のヒラメ、イカ、アンコウ、はるかノルウェーからのサケなど、横付けした漁船から次々に運び込まれてきます。

売買成立の様子

大学の階段教室に似た部屋で競りが始まりました。ここでは日本と反対に“競り下げ”です。値段を示す時計の針が最高値から安値へとピコピコと回ります。仲買人が手元のボタンをぽんと押します。針が止まって、「はい、売買成立」となるのです。

売り手も買い手も終始、無言。魚種、数量、金額の表示から、契約書の印刷まで、すべてコンピューターがたちどころにやってくれます。「世界最先端のハイテク市場」でした。

ニューヨーク・ニュージャージー港湾局(ポートオーソリティ

この市場の主は「ニューヨーク・ニュージャージー港湾局(ポートオーソリティ)」という公社。両州にまたがる橋やトンネル、空港などの管理が本業ですが、不動産業、通信産業にまで手を広げ、なかなかの商売上手として知られていました。

こうした本格的な魚の卸売市場はマサチューセッツ州のボストン、ニューベッドフォード、メーン州ポートランド、ハワイのホノルルと全米で4カ所しかありませんでした。ニューヨーク都市圏では初めてでした。

酒井剛志