30年間おつかれさまでした
30年前、とにかくお金がなかった。スライサーすら買えなくて廃業した店のスライサーを機械屋に引き上げてきてもらって安くで買った。きっと腕の良い職人さんが一生懸命掃除していたのだろう。手入れが行き届いていた。
ときどき故障するものの、しっかりメンテしてカスタマイズしながら30年使い続けた。もう少し頑張ってくれそうだが、あまりにも僕の癖がつきすぎているので若い子たちが扱うには難しい。定休日の本日、オーダーメイドで組んでもらったスライサーが搬入されます。市販のものではなくあえてオーダーメイドにしたのには訳がある。
数日前、了平がSNSに書いていたが肉屋の仕事を極めるには、いかにすき焼きの肉をうまく切れるかだと思っている。すき焼きの肉こそ肉屋の仕事であり花形なのです。焼肉やステーキのカットはそれほど難しいものではない。すき焼きの肉は機械(スライサー)が切るので誰でもできそうだが、じつは知識と技術、テクニックとセンス、そして少しの経験が必要なのです。
このあたりは個人の考え方、地方による牛肉の捉え方によって違うと思いますが、おそらく僕と同世代で関西のご同業の方は頷いてくれるんじゃないかな。
30年間おつかれさまでした中古で買ったスライサー。僕の最後の仕事は牛肉ではなく愛農ポークでした。最後にビシッと霜降りのロースを切って終わりたかったのですがそれもまた今の僕を象徴しているかのようです。
昨夜は愛農ポークのしゃぶしゃぶを食べましたが、いままででいちばんおいしかったです。木曜日からは真新しいスライサーで切ったお肉をお届けします。それもまた楽しみ。30年後は90歳です。できれば現役でやっていたい。
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