子どもが病気になった時に、親が「休ませてください」と言える町を作る
2024年の都知事選に立候補したタレントの清水国明氏が、公約のひとつとして「病児保育の強化」を挙げていました。親が仕事と育児の両立ができないことが少子化の最大の要因と考えているらしく、体調が悪くなった子どもを預ける施設を充実させることができれば、親は安心して仕事に臨めるという発想のもと、この公約を掲げたようです。
このマニフェストを聞いた時、「本当にそれって親が幸せなのか?」ということを考えてしまいました。
体調が悪くなった子どもを施設に預けてまで働きに出ることは、親としては苦渋の選択と言えます。可能であれば、子どものそばにいてあげたいのが親の本心であり、病児保育を強化することで、さらに親は子どもを預けざるを得ない環境に追い込まれます。
清水国明さんの年齢は73歳。そのくらいの高齢になってしまうと、親の現実的な心理とのギャップが、政策に露骨に出てしまうと思いました。
栄町と東京都では立地も人口も財政もまったく違うので、実現できる政策で比較することはできません。しかし、子どもが病気になった時でも、親が安心して会社を休める制度が栄町に充実していれば、周辺の自治体から栄町に移住したい若い家族が増えるかもしれません。
たとえば、リモートで副業を希望する町民に対して、オンラインの在宅ワークの業務をレクチャーする講座を無料で開催したり、町がオンラインの仕事を斡旋する業務を展開したりすれば、子どもが体調を崩した時でも、親は子供のそばにいながら、自宅で仕事をすることが可能になります。
また、子どもが病気になった場合、看護休暇だけではなく、親を休ませてくれた会社に対して、補助金を出す制度を導入すれば、会社も休みやすい環境を整えてくれると思います。親も突然の休みを申請しやすくなるので、お互いに「休ませやすい」「休みやすい」環境を整えることができます。
要は「突然の休みを言い出しにくい」という職場環境に問題があるので、そのあたりの根っこの部分を改善していけば、「栄町の企業は子供を持つ親に対して優しい」という評判が広まり、栄町に移住する人と、栄町に事業所を構える法人企業が増えて、ともに税収を増やすことが可能になります。
もちろん、働く親にとって、休んだ場合の「代わりの人がいない」ということが、「子供が病気になっても休みにくい」という根本的な問題なので、完璧な解決には至らないところがあります。
しかし、共働きがスタンダードになった今、「子どもの数を増やす」ということが無理ゲーに近い施策になっているところがあるので、企業側と行政側が意見交換しながら、親が休みやすい環境を整えることが、少子化対策以前の「子を持つ親が幸せに暮らせる町作り」になるのではないかと思います。
「病気になった子どもを預ける施設を増やせばいい」という、身勝手な発想ではなく、病気になった子どもに対して、親が「休ませてください」と言いやすい町を作ることが、これからの自治体の政策には必要なのではないかと思います。