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「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」

2022年9月某日

「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」
監督:フレデリック・ワイズマン
2017 

映画館で観たかったけど結局逃していた作品。
アマプラにあってもこの長さ、家じゃな…と尻込みしてたけど、
まもなく終了ってことで慌てて観ました。

良かった。終了までにもう一度観たいし、
なんならDVD買って日常的に家で流そうかなって悩む。

戦争や人間関係や恋愛やと、
人間の動物的な衝動の方ばかりを観ていたことにハッと気付く。

知への欲求、欲求と必要性、
それを求めて図書館に集う人々の多様性に驚かされる。
アメリカ、更にニューヨークにいた事がある人なら普通なのだろうけど、
改めて凄まじい多様さ。「全ての人が共存する」場所。

老若男女、人種や民族、障害の有無、
目に見える貧富の差、ファッションによって想像する文化的な背景や興味の違い、
地球上の人類図鑑がここにある様に思える程。

そして同じグラウンドにいることで、これは平和を象徴する場所であるように感じる。
お金、格差、差別と分断と暴力のニュースが目立っちゃうけど、
これもまたニューヨークの顔なんだな、と改めて憧れを感じる。
「知」は戦争の反対語なのではという感覚を深める。

それぞれが欲しい、または好きな、または必要な情報を取りに来たり、あるいは休息を取りに来たりしている様子に静かに興奮する。

ただの本を借りる場所、所蔵されている場所に留まらず、
様々な企画や催しが行われる様子が淡々と次々と映される。

「図書館は民主主義の柱だとトニ・モリスンは言った」
こういう言葉の数々が、図書館でのイベントの映像として
あまた溢れる。

その幾つものシーンの中で、繰り返し出てくる図書館職員による会議。
本館と90の分館(!)を運営する資金をどうするか!(行政からの資金と寄附をいかにして集めるか!)
それはさながら企業の経営戦略会議の様で、
「公共」って「公立」じゃないのねと気付く。
なかなか厳しそうだ。
(気になって調べたら東京都内のTSUTAYAの数より多い分館!)

代表らしき男性はしかし、
あくまで「図書館の社会的責任」という太い軸からはブレない。
「知の殿堂」の長たる高い信念と実績の持ち主なのだろうけど、
なんだか見た目は民間企業の社長みたいな雰囲気。
そういう(?)イメージとのギャップが随所に溢れてる。
とにかく、図書館に行きたくなった。
(もちろんNYのここに行ければ最高だけど!)

障がい者、高齢者、インターネットに繋がれない生活の人々、
誰でもがQOLを保てるためにどうすべきか図書館は考え、行動する。

中でも黒人に関する場面が多かった。
アフリカ系の黒人が多く暮らす地域の分館の様子や、
黒人文化研究センター(分館)での取り組みやイベント、
アメリカにも、日本と変わらず、差別の歴史を消し去る教科書が蔓延している事も知る。

アフリカ系黒人はその昔、仕事を求めてアメリカに「渡ってきた」
と書かれていると!(実名で出版社名指し!)
(奴隷貿易で“強制的に運ばれて来た”のだよね?)
しかも欧州からの労働者は「過酷な環境での労働を強いられつつもアメリカの発展に貢献した」と。
(いや、アフリカ系黒人の過酷な労働と貢献どこいった!?)

2017年はトランプ政権発足の年、
これを撮っている間に決まったという頃からしら?

この映画に政治的メッセージがあるかないかと言ったら、
確実にある。
公共のものは中立じゃなきゃなんて、日本みたいな発想は無い様子。
むしろそれは利用して資金に繋げようとハッキリと言っている。

だってそう。
労働者や貧困層の味方になろうとすれば自動的に左派になっちゃうんだから。
「真ん中」なんてないよ。
「中立」は強権と分断を後押しするだけだ。

印象的だった講義があるのだけど、
ある女性講師が、書類も講演台もなく丸腰で話すのだけど、
身振り手振りが情熱的でラッパーのような身体状態なのだけど、
語っているのは労働者と資本家の関係性の話、
奴隷制をどう捉えるかの話。
マルクスがそれをどう否定して、リンカーンはどう受け取って行動したか、
それが現代にどう影響しているのか

っていう難しい話を、
滔々と、何も見ずにずっと話す姿が圧倒的で、
難しいのに、なんだか心に入ってくる。
知識が血肉になっているってこういう事なんだろうか?

高校の時、あんな感じのやけに暑苦しい先生いたんだけど、
まじめに受けてたら面白い授業だったのかなぁ、
本当にもったいない時間を過ごして来てしまったのかも。

でも生涯、死ぬまでずっと、
知への好奇心を満たしに来てね、
と図書館に言われた様で、
すごく楽しかった。

映画館でまた上映してくれないかしら。
長すぎて途中寝るかもしれないけど、
それもまたいい時間になるかも🤭

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