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全人類の心とコミュニケーションを健康にしたい。そのために僕ができること

僕は精神科の看護師としての経験を活かして、経営者や医療従事者、対人援助職向けの精神的サポートを仕事としています。手法はさまざまで、研修やワークショップ、カウンセリング、コーチングなどがあります。

ただ、僕の目的はすべてひとつのところに収束しています。それは、全人類のコミュニケーションが今より少しでもよくなるように力を注ぐこと。僕が、手の届く人たちをできる限りサポートし、その人たちがさらに周囲の人と良い循環を起こしていく。それを続けていけば、幸せや安心感や愛やつながりが、着実に広がっていくと考えています。

コミュニケーションをよくするためには、まず自分の心のケアが必要です。そのうえで、対人関係も同時に改善していく。「心」と「対人関係」がぐるぐると好循環を作るようサポートすることが、僕の使命だと考えています。

そう考えるに至ったのは、僕の幼少期からの経験が大きく影響しています。

毎日のように口論が続く家族で育った

僕が育った環境は、両親と僕、弟、妹に祖母を加えた6人家族。両親は、毎日のようにケンカをしていました。父は外では明るくテンションの高い人で、家では依存症に近いほどアルコールを飲み、ほぼ喋りません。母がそれに文句を言ってケンカになるのがいつものパターン。もちろんその火の粉は僕たち子どもにも降りかかります。僕は無視していましたが、弟は妹にイライラをぶつけていました。

そんな家族でも、冬は毎週のようにスキーに行っていました。でも、道中もずっと口ゲンカ。帽子を忘れたとか、道を間違えたとか、そんなことをきっかけとして、2~3時間ずっとケンカをしているのです。

小学校の時に友人の家に遊びに行き、仲のよさそうな家族を見て「僕の家族が変わっているんだ」と初めて知ることになります。「僕の家族はケンカばかりしている」とは、当時誰にも言えませんでした。

ネガティブな感情を誰にも出せない

心の中ではふつふつとした怒りがありましたが、家族にネガティブなことを言ってもぶつかるだけだとわかっていました。

いつからか僕は、感情を表に出さなくなっていきます。感情を出さずにコミュニケーションするのに一番いいのは、相手の話を「うん、うん」と聞くことです。

女性の話もよく聞くので、「優しい」と言われることもよくあります。ただ、女性とお付き合いしても、怒りや嫉妬などネガティブな感情を出さないので「本当に好きなの?」と疑われてしまう。僕の愛情を試すようなことを繰り返され、最後には浮気をされて関係が終わる……。そんな経験が何度かありました。

求めているものと、現実は全く違ってしまう。僕は「誰もわかってくれない」という孤独にさいなまれていました。今思えば、そもそも自分の感情を伝えていないから当たり前なのに、当時の僕は孤独に苦しめられていたのです。

感情やコミュニケーションの知識を付ければ解決できる

その後、医療系の分野に進み、学び進めるうち、「自分や家族には知識がなかっただけだ」と気が付きます。両親はお互いに嫌いあっていると思い込んでいましたが、本当はそうではない。母は父をずっと好きで、「もっと私を見て」というエネルギーをぶつけているだけだったのです。だけどそのコミュニケーションの仕方では、相手に伝わるはずもありません。さらに、父のほうも、母とずっと一緒にいるということは愛情を抱いているはず。父の受け取り方もまた、知識と技術が不足していました。

ただし、できなかったことも、知識と技術を付ければできるようになります。それを伝えていけば、僕や僕の家族のような人を救うことができる。それが、僕のやりたいことに繋がっていきます。

精神科での対応は、すべての人の心のケアと同じ構造

僕たちは、ポジティブな感情だけでなく、ネガティブな感情も出していかなくてはなりません。その循環によって、心が健全になっていくのです。ネガティブな感情をため込んだままだと、流れが滞ってしまいます。

僕は看護師として精神科で働いていました。精神科の患者さんは、自分の感情が出せなかったり、受け取ってくれない人に出してしまったりと、コミュニケーションがちぐはぐ。そのせいで、孤独になってもっと感情を出せなくなるという悪循環に陥っている方が多いのです。

僕から見るとそういう悪循環の構造は、病院だけでなく、学校や家庭、会社などでもたくさん起きています。

精神科では、さまざまな症状の人を救う方法が研究され、ある程度確立されていますが、その情報が病院の外に活用されることは多くない。病名が付かず、病院に来ない人のコミュニケーションに応用できるのに、そうしようとする人が圧倒的に少ないのです。僕はそこにジレンマを感じていました。

僕の力を最大化するために、経営者と医療者にフォーカスしたい

僕は究極的には、全人類が心とコミュニケーションの知識を付け、世の中が今よりよくなっていけばいいと思っています。精神科で患者さんひとり一人と向き合うのもやりがいがありましたが、もっと違う方法があるのではないかと考えました。

それが、経営者と医療者にアプローチすることです。

組織のトップに立つ経営者は、非常に多くの方に影響を与えます。経営者の心の状態やコミュニケーションが悪いと、従業員全員に悪影響が出てしまう。そのため、経営者自身が心の状態を整え、よいコミュニケーションを取ることは、広くポジティブな影響があります。よい循環をどんどん作り、広げていけると言えるでしょう。

一方で、心とコミュニケーションの循環がうまくいかず、病気になるほど苦しんでいる人がいた場合、その人をケアするのは医療者となります。医療者は、何人もの患者さんを相手にしますから、彼らも世の中に対する影響が大きい。医療者自身の心とコミュニケーションをよくしていければ、患者さんをよい状態にするだけでなく、患者さんのネガティブをそれ以上広げないための役割を担うことができます。

経営者と医療者が直接関わる人々を通して、好循環が広く伝播していくこと。それが僕の野望であり、理想の世界です。

こうやって言葉にできたのは最近のことです。僕は知らず知らずのうちに、「経営者と医療者のサポートをしたい」と思っていました。心の奥底にあったその理由とは、「僕の小さな力を最大化するため」だったのです。

話し手:坂本岳之
ライティング:栃尾江美
カバーイラスト:金子アユミ

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