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デンクシフロリ 女将 橋本恭子さん Interview

今年9月、表参道にオープンした「デンクシフロリ」。「傳」と「フロリレージュ」のコラボレーションレストランとして注目を集める同店の、女将橋本恭子さん、シェフ森田祐二さんはどんな方でしょうか? プロフィールと今のご自身について伺いました!

行動が引き寄せたフロリレージュとの出会い

編集部――こんにちは、本日はよろしくお願い致します。早速ですが、恭子さん(橋本氏)は、フロリレージュさんから、デンクシフロリさんに移るのをご自身で希望されたそうですが。

橋本さん――はい、本当なんです。移ることが決まってから、親しい人に話したら、もったいない、という感じですごく言われたんですけど。……あの肩書って、けっこう、大きいじゃないですか?

編集部――フロリレージュのマネージャー。そうですね。

橋本さん――でも、私の場合、経験がどうのでなれたわけじゃないんです。本当に、たまたまの縁でひょっこり入ってしまって、あの肩書がついたっていう。だから、もちろん一生懸命やりましたけど、普通はね、私みたいなのは、なれないはずなんです。

編集部――私は、恭子さんがお店にいらしたら、空気が変わったように思っていました。

橋本さん――いいほうで大丈夫ですか?(苦笑)

編集部――もちろんです(笑)。あ、でもそれまでがどうの、ということではないです。どうしてデンクシさんに移ろうと思ったのですか?

橋本さん――私、フロリレージュの前にいたのが、カジュアルなお店、ビストロだったんです。正直に言うと、フロリレージュは私が目標としていた世界ではまったくなかったんですよ。ビストロとレストランのサービスって、お客様に心地よく感じていただくという目的地は同じなんですけど、でも、お客様やお店から求められることや、表現方法が違うと思っていて。しかもフロリレージュは、私にとってとんでもない高いところにあるお店でしたし。

編集部――じゃあ、どうしてフロリレージュさんで働こうと思ったのでしょうか?

橋本さん――お客さんとして行ったことがあって、とても感動したからです。たまたま予約したディナーだったんですけど、もう、食事が終わって帰りにその足で知り合いの店に行って、感じたことを熱く話して、その感動が冷めやらぬうちにもう一度予約を入れたくらい(笑)。

編集部――(笑)すごいですね。どんなところに感動したのですか?

橋本さん――料理のおいしさはもちろんなんですけど、当時は海外のお客さんも多くて外国みたいな雰囲気だったのと、ドリンクもサービスも、完全に体験したことのないエンターテイメントでした。「劇場型」って言われるのも、行って理解できて。レストランの空間を、ずっと見ていられる(楽しめる)。エンターテイメント性のある飲食店って、騒がしいようなイメージがあったんですけど、大人のための最上級の質を感じて。

編集部――そのとき、川手シェフとは知り合いだったのですか? 以前、シェフのほうからスカウトしたと聞いたことがあります。

橋本さん――川手さんと知り合いになったのは、その後です。1か月後にもう一度食事に行って、そのときもまだふつうのお客さんだったんですけど、その半年くらい後に偶然会って。そのころ、私は前のお店に7年半いて、自分の中でちょっとくすぶり始めいた時期でした。前のお店が私のサービスマンとしてのスタートだったんですけど、「お客様にもっとこうして楽しんでもらいたい」とか思うことがあって、でもその気持ちと実際とのずれが出始めていて。何か不完全燃焼で終わっていく毎日の中で、仕事帰りに近くのお店に寄っていたんです。

編集部――そのお店、行ったことがあります。カウンターのお店ですよね。

橋本さん――そうです。カウンターだと、知らない人とその場だけの話をすることもあるじゃないですか? 仕事でもなく、気分転換になるし、でも一期一会を大切にしようと思ったらちょっと頭も使うしで、それが妙に心地よかったんですよね。

編集部――何か刺激を求めていたのかもしれないですね。

橋本さん――はい。無意識でしたけど。そこで川手さんに出会ったんです。本当に偶然なんですけど、ちょうどその翌々日くらいに、私、自分の誕生日でフロリレージュのランチを予約していたから、そんな話をしたりして。そのお店のシェフは、私が近くのお店で働いていることを知っていて、たしかそれを川手さんに話したんだと思うんですよね。そしたら、その数週間後に川手さんから突然メッセージがきて、「相談したいことがある」って。それが、フロリレージュで働かないかというお話でした。

編集部――いろいろなタイミングが、運命ですね(笑)。

橋本さん――(笑)本当に。私、あそこに行ってなかったら出会うことがなかった。行動しないとダメだなって思いました。……でも、くすぶっていても、前のお店をやめるのに覚悟が必要だったし、フロリレージュに入るのも不安しかなかったです。

編集部――そうなんですか?

橋本さん――フロリレージュのサービスには、カジュアルさも感じますよね? でも、レストランのサービスマンは、一見カジュアルな身のこなしに見えても、さっき話した、レストランで求められるものや表現方法を基礎から学んで身につけて、そこからお店に合わせてカジュアルダウンしているんです。私は、そのレストランでの経験をしてきていない。だから、川手さんにお話をいただいたときに、「本気ですか?」って聞いたんです。「私はシェフが知っているような、『レストラン』のサービスマンではないのをわかっていますか?」って。

編集部――そうしたらシェフは何と?

橋本さん――「それでも大丈夫」って。

編集部――そういった不安を抱えていて、でもフロリレージュさんで働きたいと思ったのはどうしてでしょうか?

橋本さん――前のお店は、私はやめるわけがないってまわりのみんなも思っていた、ホームのような場所だったんですけど、そこから出た先に、自分が何をどう思うかな、ということにすごく興味があったんです。それに、あんなに胸を打たれたお店だから、やってみようと思って。とりあえずがむしゃらに、体験したことのないことをやってみたら、何が本当に好きなのかわかる気がしたんですよね。

「もの」ではなく「空気」を作る人になる

編集部――それで、フロリレージュさんに2年半いらして、答えが出たということでしょうか?

橋本さん――はい。明確な答えが出ました。フロリレージュではサービスだけでなく、取材のやりとりとかイベントの対応とか、お店の中で専門の人がいない散らばった仕事を全部任されるようになろうと思ってやっていたんです。それが一番お店の役に立てると思ったし、自分にも合っているかなって。
それが結果的に、飲食業界にまつわる仕事の中で、自分が一番好きなものは何かを考えることになって、私は、お客様と作るコミュニケーション、コミュニティが好きだって思ったんです。私、目の前のお客様ごとに、作る空気を変えているというか……それぞれの方が一番心地よく感じられる空気を作りたいんです。

編集部――飲食店のサービスの目的地、とおっしゃっていた部分ですね。

橋本さん――はい。私がお客様とコミュニケーションを図ること自体が目的なのではなくて、それによって心地よい空気を作るという役割、ひとつの要素として存在したい。それは、今もすごく意識しています。フロリレージュは、とくに軸となるスタッフにクリエイティブな要素をすごく感じていて、入る前から、私はそういうのがないって思っていたんです。ものを作れるわけでもないし、ソムリエもちょっと違う。クリエイティブということに対して引け目を感じることもあったんですけど、切り替えて、じゃあ、空気を作るところを伸ばしていこうと思って。

編集部――フロリレージュさんだと、前にいらしたお店と、お客さんもきっと違いますよね。

橋本さん――全然違います。お店の用途も違いますし。ただ、お客様は、お料理のおいしさのほかに、そこで働いている人に安心感を持ちたいと思っていらっしゃるかな、と思うんです。だから「この人がいるから安心」というお客様との信頼関係を作ることは、前のお店のときから変わらずに意識していました。でも、やっぱり前のお店と全然違ったので、入って最初はてんやわんやでしたけど(苦笑)。

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編集部――ああ、知らないお客さんの層だからですか?

橋本さん――そう。前のお店からのお客様はほとんどいなくて、知らない方ばかりだし、その方たちの楽しみ方も知らないから。レストランって、フロリレージュってどういうものなのか……何をどう自分がアプローチしたらいいか、というのがありました。私は先輩が一人もいないで今までやってきているから、お手本にする人もいなくて。でも、リピーターのお客様だけじゃなくて、新規のお客様もいらしたから、そこは逆に関係を作りやすい部分もありました。苦しかったけど、とにかく今自分ができる最大のものをやろうっていうのを、毎日続けてた2年半でした(笑)。

編集部――それまでとは違うお客さんとの関係作りのほかに、フロリレージュさんで得たものはありますか?

橋本さん――とても学びがありました。取材の方とか、いろいろな人たちがお店に興味をもって次々にやってくる環境も、川手さんの仕事ぶりもすごく衝撃的でした。ああ、トップの人はこうなんだ、と。仕事への姿勢とか、仕事量とか、どんどん進化するのを目の当たりにして、進化の理由みたいなのもわかるというか。「そんなの、だれも追いつけないよな」って思うわけで。

編集部――たとえばどんなことでしょうか?

橋本さん――コラボとか、地方の仕事とか、お店から出たときに必ず何かを持ち帰ってくるんですよね。そしてまたそれを料理に昇華していくんですよ。川手さんが外に出るとお店が休みになって、自分は休んだりしていたんですけど、でも、その間にトップを行っている人は、また新たな出会いだったり、何かがあるわけじゃないですか? 「ああ、また持ち帰ってきた、どんどん置いてかれちゃうじゃん」と思って。それがすごく刺激になりましたし、世界中のシェフたちに出会ったり、アジア50にも運よく行けてしまったことも、本当にラッキーでした。ああいう、ふつうだったら見ることのできない世界を見られたのは大きいです。

編集部――そこに行くことができるフットワークもあるんだろうなと思います。

橋本さん――基本的に私、NOと言わないです(笑)。

編集部――(笑)そうした経験を持って、デンクシフロリさんに移られたんですね。

橋本さん――はい。私、フロリレージュが大好きだったけど、自分の居場所やあり方が「レストラン」とか、「ソムリエ」じゃないっていう気持ちがすごくあって、やりたいことが明確になるほど、そこに違和感を覚えていったんです。でも、「じゃあ今、フロリレージュ以外のどこで?」って考えてもどこも思いつかなくて。それで、デンクシフロリの話を聞いたときに、今までの、フロリレージュの前と、フロリレージュでの経験を足したものがここでできるかもしれないって。お店の空気感、楽しさを、伝えたい。シェフたちが作る料理も、「とにかく楽しんでほしい」という感じですし。

「その人の楽しさ」に寄り添うドリンク提案

編集部――今、デンクシフロリさんでは、ペアリングは恭子さんが考えていらっしゃるんですか?

橋本さん――そうですね。デンクシフロリでは、ペアリングにも単品メニューにも割りもの(サワー等カクテル)があるんですけど、最初、それを川手シェフが考えてくれると思ってたんですよ。でも、私がやるって聞いて、初めは「えっ、無理」って(笑)。ほかのお店に行ってもサワーってほとんど飲まなかったから。でも、それをやることによって、ちょっと楽しくなりました(笑)。

編集部――どういうところがですか?

橋本さん――フロリレージュだと、バーテンダーのスタッフがいて、本格的なカクテルを出しているんですよね。でも、こっちではもっとカジュアルにして、ワインとか日本酒とかも組み合わせながらいろいろ出していく。それを楽しんでくれている方たちがいるから、「これでいいんだ」って思うようになったんです。

編集部――割りものは、どこかに勉強に行くなどはされたのでしょうか?

橋本さん――メニューは、フロリレージュのバーテンダーの高田君とか川手さんに必ず相談しています。でも、「こういうサワーがあったら飲みたいな」っていうのが自分の中でありました。本格的なカクテルじゃないけど、でもジュースみたいに甘ったるくない、というもの。

編集部――もう少し詳しく伺えますか?

橋本さん――ジュースってたくさん飲むと飽きるじゃないですか? レモンサワーとかのさっぱり系も、延々と同じものは飲めないと思うんですよね。だから、1杯だけでも楽しめて、2、3杯続けて飲んでも味覚が楽しいものがいいなと思って。

編集部――味覚が楽しいとは?

橋本さん――たとえばスダチとワサビとか、たださっぱりしているだけじゃなくって、爽やかさとか、飽きのこない酸味と香りがあったり。

編集部――スダチとワサビのサワーですか。その組み合せ、どこから出てくるのでしょうか?

橋本さん――オープンが秋だったから、私、勝手に夏くらいから「料理にサンマとかあるかな?」って思っていて(笑)。サンマに、スダチをしぼるじゃないですか? そこにワサビの香りもあるといいなと思って。仕上げは高田君と相談しながら一緒にやってもらいました。
ほかにも、甘ったるくはないけどちょっと甘みがある、「そんなにお酒は得意じゃないんだよな」という女性が飲めそうなもの。あと、これはボツになってしまったんですけど、トマトと塩昆布みたいに、ちょっとうまみがあるものだったり。そういう枠の中で、味わいに変化をつけて、全種類飲んでも口が飽きないように揃えています。
でも、ここで「割りもの」って言われたとき、私が一番やりたかったのは、テキーラ。絶対テキーラのハイボールをやろうと思って、名ばかりだけど、急いでテキーラマエストロの資格もとりに行ったんです(笑)。

編集部――(笑)そうなんですか。そこまでテキーラを使いたいと思ったのはどうしてですか?

橋本さん――これはね……(笑)3年前から温めてたんです。いつかこのおいしさを知ってもらいたいと思って。お蕎麦屋さんの、ドンフリオ(テキーラの銘柄)と鴨鍋の会に誘ってもらったことがあって、私もそのときに初めてテキーラのハイボールを飲んだんですけど、食事を邪魔しない炭酸ものだなと思ったんですよ。香りも味わいもあるんですけど、食事と合わせても心地よいというか。

編集部――テキーラのハイボールなんて、デンクシさんで初めて聞きました。

橋本さん――テキーラって、バーテンダーさんがカクテルに使うか、あとはショットで飲むことが多いですよね。でも、このお店が「新しい料理」をやるじゃないですか? 傳とフロリレージュの両店にない料理が上がってくるし、初めて楽しむおいしさがあるなと思って。だから、飲みものも、「知っているけど飲んだことがない」っていう初めてのものを入れてみたいなって。
実はフロリレージュのときも、いつもペアリングを頼んでくれるお客様に、テキーラをすすめてみたことがあったんです。でも、「飲んだことないよ~」って、断られていて(苦笑)。飲んだら悪酔いしちゃうんじゃないかとか、危険なものっていうイメージがあるのかもしれないんですけど。でも、それが「飲んでみたらすごいおいしかった」となったら、とても楽しい経験のひとつになるんじゃないかなって。それもあって、テキーラを使っているんです。

編集部――今日作っていただいたお料理は、ペアリングはどんなドリンクを合わせているのですか?

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橋本さん――イワシのほう(イワシのつくねの炭火焼きと鶏レバームース)は、今はカーブチーという沖縄の柑橘のサワーで、最近は途中でワインもちょこっと出してます。イタリアの、トレッビアーノのオレンジワイン。イワシとレバーが、けっこうしっかり濃厚でボリュームがあるから、さっぱりするだけじゃなくて、途中からワインの余韻があるといいなと思って。それに、二つ(イワシとレバー)が絡み合うお皿だから、ドリンクも二種あったほうがいいかなと。

編集部――こちらのお料理は、コースの何皿目ですか?

橋本さん――二皿目です。一皿目はブーダンノワールで、シャンパーニュを合わせています。

編集部――もう一品は、がんもどきにキャロットラペですね。こちらのペアリングは何でしょうか?

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橋本さん――テキーラのハイボールです。今回のコースでも、どこかでテキーラを入れられないかなと思って、ここに(笑)。このお料理、ちょっと懐かしさがあって、私の中で楽しい一皿なんです。

編集部――揚げてあって、マヨネーズも添えてあるのにくどくないですね。カレーのような香りもします。

橋本さん――キャロットラペにクミンが入っています。かつお節のうまみもけっこうきいてますよね。くどくはないけど、油の要素があるから、それを炭酸で切りたいなと思って。あと、クミンのほかにタイムも入っているから、香りが重なってきてもいいんじゃないかなと。

編集部――(一口いただいて)テキーラは、炭酸水以外何も加えていないのですか? 味がしっかりしていて、いろいろな香りもありますね。

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橋本さん――炭酸水だけです。このテキーラ(写真左から二番目)は、樽熟成の甘やかな香りがあって、余韻に柑橘系の香りも感じます。テキーラは、もっとさっぱりしているものも濃厚なものもあって、香りが複雑でそれぞれ味わいも違うんですよね。全然違うものなんですけど、私の中でイメージ的にワインと重なる部分があるんです。

編集部――要素が似ている、ということでしょうか。でも酸味や果実味がない分、ワインを合わせづらいお料理にも合わせられそうですね。おすすめの飲み方は、ワインのように、余韻に合わせる感じなのでしょうか?

橋本さん――そうですね。お料理のうまみの味わいを伸ばすイメージです。

編集部――オープン時には、オマールのビスクにテキーラハイボールを合わせていましたよね。

橋本さん――そうです。あれは、その蕎麦会で知った「ドンフリオ」というテキーラで、今回のものより甘やかな香りが強いです。バニラっぽくて、だから、もし使うならここ(オマール)かなと。でも、相当チャレンジングでしたけど(笑)。

編集部――お店でいただいて、そのペアリングがすごく好きでした。お料理といろいろな要素がつながっていて。ほかにも、モッツァレラの茶碗蒸しにワインを合わせていたのも、とても楽しかったです。どちらかというと和のほうが強く感じるお料理だと思ったのですけど、それがワインで、食べたことのない味に広がっていく感じがして。

橋本さん――ああー、だしのうまみに合わせたやつですね。そういうペアリングをすごく楽しいって言ってくれるお客様と、ダメな方もいらっしゃって。でも、それもわかるんです。お客様によって楽しいものは違うから。だから、最初にみなさんに「何でも飲めますか?」と聞いて、何をお出しするか決めています。それに、ペアリングよりもボトルワインでゆっくりとした空気を楽しみたいお客様もいらっしゃると思うので、もう少しボトルのラインナップを増やしたいんですよね。

気持ちを言葉にしたら、何が好きかが明確に

編集部――デンクシフロリさんは、今は恭子さんが女将としてお店を引っ張っていく感じなのかな、と思っているのですが、フロリレージュにいらしたときと、考えや働き方で変わった部分はありますか?

橋本さん――フロリレージュにいる間も、2年半だったんですけど、私の中で考え方がものすごく変わったんです。どうしたらお客様に喜んでもらえるかを、より、無意識に考えるようになったんですよね。
それで、デンクシフロリに移ってまた、大きく変わったことがあって。自分の意見をスタッフに明確に言うようになりました。スタッフがみんなデンクシフロリで集まったメンバーじゃないですか? だから、私の勝手な考えなんですけど、何がよくて何が嫌なのか、とか、こういうことでお客さんがよろこんでくれると思う、とか、毎日言い続けてるんです。そんなの初めてで、今まで自分の気持ちを吐き出したこともなかったんですけど。

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編集部――もともと共有しているものがないから、でしょうか。

橋本さん――そうです。私は傳さんでの経験はないけれど、私から見た傳とフロリレージュ、両方のよさをここで体現したら、たぶんお客様はすごく喜んでくれるんじゃないかなって。でも、そのためには細かいことがたくさん必要で、それを共有するのに毎日毎日話して、怒るとかじゃないんですけど、伝える。一人熱い人、みたいな(笑)。

編集部――(笑)でも、言葉にしていると、きっと自分にも返ってきますよね。

橋本さん――そう。だから、それを言いながら、自分がどういう店が好きなのかとかを無意識に考えるようになりました。ほかのお店のことでも、「なんでこの店がはやってるのかな」とか、「ここがもっとこうだったらいいのかな」とか。そしたら、自分ももっとクオリティを上げていかなきゃとか、すごく、いろいろと見えてきて。そうするとまた、私はここのお店だけじゃなくて、飲食店っていうものが好きで、そこで楽しむお客さんたちがすごく好きっていうのを、強く思うようになったんです。

編集部――気持ちがより強くなって、これからについて考えていらっしゃることはありますか?

橋本さん――今はまだ、お客様もはじめましての方がすごく多いので、一からコミュニケーション、信頼関係作りをしている最中です。この先、通ってくれる方ができたりするとまた変わってくると思っていて。

編集部――フロリレージュさんと傳さんのお客さんだけではないですよね。お料理も価格帯も違いますし。

橋本さん――そうですね。知ってる方たちも来てくださっていますけど、傳さんのお客様は知らなかったりもしますし。リピーターの方が新しいお客様を連れてきてくださったり、メディアとか、何かで興味を持って来てくださる方がいらしたり。そこでまた新しいコミュニティができるというのが、いいなって思っています。

編集部――恭子さん、とても楽しそうです。またお話を伺わせてください。

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Fin. 橋本さん、ありがとうございました! 

>森田シェフのインタビューに続きます。



デンクシフロリ
東京都渋谷区神宮前5丁目46番7号 GEMS青山CROSS B1A


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