結末から書き出す
今回は、物語の中心人物について探って参りましょう。
中心人物は誰?
物事には中心があります。
中心があって形を成すのです。
前回に続いて桃太郎を変形します。
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今回の桃太郎は三人の部下を持つリーダーとして設定しました。どんな性格でしょう。面倒見がよくて頼れるタイプかな。
キャラが立つ
例えば、集団組織の中で浮いてしまった癖のある偏屈者たちを纏めるとか。
親から見れば意外と優しい息子なのかもしれません。故郷で待つ父母の姿が浮かびます。
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優しさを引き立てる厳しい状況が必要です。桃太郎を追い込みます。慕ってくれる部下を犠牲にするしかない局面──
いきなりクライマックス!
ここでなんと結末場面を書くのです。最後はどうなるのか。着地点ですね。
♡ ♡ ♡
「モモさん、オレ行くよ」
木陰から雉が前方の鉄扉を睨む。
「返り撃ちだぞ」
桃太郎は小声だが強い口調。
「これしか道はねぇ」
犬が光線銃を構え直す。
無言の猿。
軍服の肩口から鮮血が滴る。
「桃さん、覚えてるかい」
雉の声が緩む。
「オレを拾ってくれて嬉しかったよ」
言い残すと鉄扉へ飛翔だ。
放射砲が容赦なく襲い掛かる。
三人は鉄扉の蔭へ飛び込む。
「ここはボクだ」
猿が前に踏み出す。頷く犬。
「世話になった。出会えてよかった」
鉄扉を攀じ上り、放射砲の裏へ回り込む。
電子回路に侵入する猿。
鉄扉は上がっていく。
感電した猿が地面に落ちた。
「さぁ、おいらの番さ」
一旦上がった鉄扉が閉りかかる。
「さらばだ、桃さん。行け!」
鉄扉を肩で支える犬が吠えた。
桃は隙間へ潜り込む。
通路を駆け抜け、指令室へ飛び込んだ。
自爆装置に手が掛かる。
「母さん父さん、ありがとう」
♡ ♡ ♡
「おい、どうした」
「今、あの子の声が聞こえたわ」
老いた夫婦。窓から庭を見る。
ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
風は吹き去って行く。
桃の樹から一つ、実が落ちた。
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いかがでしたか
不思議ですね。書くうちに登場人物が教えてくれます。耳を澄ませましょう。なるほど君ってそういう人なんだ……
四人の繋がりや挿話まで浮かび、背景となる物語世界の細部が見えてくるのです。
どこまでも書けそう──
結末から書き出す。
お試し下さい。