水民マガジン 水泳用語のパラダイム・シフト
水泳の用語で 昔から 「プル」「プッシュ」という用語がある
クロール 背泳ぎ バタフライで ストロークの前半の 引いてくる動作を「プル」後半の押す動作を「プッシュ」という
普通に考えると プルは「水を」引いてくる動作 プッシュは「水を」押す動作 となる
たぶん プル プッシュという水泳用語は そのような意味合いで使われてきたと思う
相対性理論の入門書を読んだときに 書かれていたのが
北に向かって 時速60キロで走る列車の中に 南に向かって 時速5キロで移動する人がいる
彼は主観的には 車内を時速5キロで歩いている
しかし 線路の脇で 観察している人がいると その観察者からは 南に時速5キロで移動している彼は 北に向かって 時速55キロで移動している という話しだ
どんな文脈で書かれていたのか よく覚えていないのだが 観る視点を変える事で 見えかたは変わってくる ものの見かたは 絶対的なものではなく 相対的なものなのである
ということではないかと思う
水をかく手が 時速何キロで移動しているかは 知るよしもないが 主観的には 水をプルする あるいは プッシュする速度は 身体が前に推進する速度との間に関係はないことはないのだが(笑) かなり もってまわった 友達の友達は友達 みたいな関係だと思う
つまり 何が言いたいかというと どうやって水をかくか という事を意識するより どうやって体を前に進めるか という事を意識したほうが良いように思う
この時の 意識の変換だが
「プル」は 手を引いて水をかく ではなく
手で水を捉えた位置に 体を引き寄せる
「プッシュ」は 手で水を後ろに押す ではなく プルが終了したポイントから 体を前に押し出す という意識に変えるのである
トータルで考えるならば ストロークは 手で水をかく という意識より 手の位置を後ろに極力下げないで 体を前に進める という意識のほうが 結果的にかきの精度が増す
これは 水 というもののもつ特性に起因する
水にもう少し粘性があれば かいただけ前に進むという事があるだろうが(進みは遅くなるし かきは重くなるけど)かいた水のほとんどは 後ろに流れてしまう
それを無視して ピッチを上げようとすると ある程度までは 泳速は上がるが 疲労も貯まる
水をいかにして止めて 体を前に進めるか そこにこだわったほうが良い