水民マガジン  4つのフェイズ  背泳ぎ篇

クロール篇で述べたが クロール 背泳ぎ バタフライのストロークは 4つのフェイズで説明できる
今回は背泳ぎを説明したい
4つのフェイズとは
① プル
② プッシュ
③ リカバリー
④ エントリー
である
ヒトの体には 可動域があって どの部位 どの姿勢でも 同じような力が発揮できるわけではない
したがって 力が発揮しやすい姿勢で 力を発揮できる筋肉を使って力を出す のが正しい
具体的に言うと ざっくりと 力が入れやすいのは 体の前面である 大きな力を発揮できるのは 体幹である
背泳ぎを泳ぐ場合も これらを意識して泳ぐと かなり楽に速く泳げるだろう
体の面を基準にすると 身体の動かし方 筋肉の使い方は クロールとほとんど変わらない
クロールとほとんど違わない身体の動かし方 筋肉の使い方をすれば クロールとほとんど違わないパワーで泳げるはずだ が そうならないのは 多くの場合 クロールと背泳ぎは全くの別物と考えるからだ
しかし クロールと背泳ぎは 顔が下にあるか 上にあるか それだけの違いなのだ
では 4つのフェイズにしたがって 解説しよう
① プル
ヒトの身体の構造を考えるならば 背泳ぎはローリングが クロール以上に重要だ
体の傾きがなければ 水を体の前面で捉えるのが困難だからだ
しかし 過度のローリングは 姿勢の安定を崩す危険がある
したがって 最初の水のキャッチの位置は ローリングによる体の傾きの大きさ 水のとらえやすさ(力の入れやすさ)で決まる
往年の背泳ぎの名選手 ジョン・ネーバーには スネーク(ヘビ)というあだ名があったそうだ
彼自身の背泳ぎのストロークの説明で 
『スイムスーツの横のライン(時代である)が 上に来るまでローリングしなさい』
とある
つまりは 体の傾きを 90度近くにしろ ということだ 
これは何かというと そうすれば 身体の前面の 1番力が入れやすいところで水をキャッチできるよ
ということだ
プルは引くという意味だが 水を引いてくる と考えると 大事なものを見落とす
水を引いても 水が流れてしまっては 引いた分だけ 身体が前に進んでくれない
指の腹に力を入れ 手のひらの角度を後ろに向けながら肘を支点にしつつ 肘を曲げる 
クロール同様 手のひらがあった位置が 肘に置き換わる ということは 水が後ろに流れなければ 身体は手のひらから肘までの長さ分 前に移動するはずだ
つまり 身体が前に引き寄せられる
これがプルである
右腕でプルをやった時の体の傾きは 右である
クロールの場合 右腕でプルをやる時は 左オープンになるので 傾きは逆なのである

プルが終了したときの 手の位置は T字の骨つまり鎖骨の辺りで水面近く わたしはこの位置をTポイントと名づけている
肘を支点にした腕は 逆の『ヘ』の字なので 昔は背泳ぎの手のかきを 『ブーメラン・ストローク』または『V字ストローク』などと言われていた
② プッシュ
Tポイントを境に ストロークは 引き動作からおし動作 つまりプッシュに替わるのだが プッシュ動作は 水を後ろにまっすぐ押すのではなく 肘を支点にしたテコの動きの延長であり そこにさらに 胴体の外旋が同調しなければならない
ジョン・ネーバーは 腕相撲のような動き と言っている
つまり プッシュは 直線的な手のひらで水を後ろに押す動きではなく 肘を支点にしたテコの動きと 体の回転がシンクロした動きで かき終わりは 手のひらをプールの底に向けて圧しこむ動きになる
プルはアップスイープ プッシュはダウンスイープ アーニー・マグリスコは この後さらに 手のひらに水を当てつつアップスイープして手を抜きあげる みたいなことを『スイミング・イーブン・ファースター』に書いている
プッシュの終わり(フィニッシュ)のあとの抜き上げで 推進力を得るというこの執念
すごくねぇ?
ところが 次の『モア・イーブン・ファースター(だっけ?)』では この説明がトーンダウンしていて
『あ いや 身体がそのう 柔らかいスイマーだと こんなテクニックも えと 有効なんだけどお』
みたいな感じだ
しかし 思うに このテクニックの成否は 肩の柔軟性とかと言うより プッシュの後半のフィニッシュの位置じゃないかと思う

プッシュは 体の回転とともに行われるので プッシュの終了とともに 体の傾きは 右から左に入れ替わりその為 手は腿の裏の辺りに来る そしてそのまま留まることなく 親指から水面に対して垂直に抜け上げられ リカバリーがはじまる
③ リカバリー
リカバリーの腕はミケランジェロの天井画のように 手首をリラックスさせて空中に差しのべられる というギャグを わたしはレッスンの中で使ったりするが ミケランジェロの絵は肘が曲がっているので リカバリーのときは肘を突っ張ってロックする という事をお断りしなければならない
ロックしてのばした腕を高く上げる 腕だけではなく肩からしっかり上げるのが大事である
④ エントリー
エントリーは リカバリーの1番高い位置から 腕をしっかりとのばした状態で 最初に水を捉えるキャッチポイントに 一挙に持っていく 
この時重要なのは 肩を後ろに回すのではなく 体幹の左から右への切り返しで 腕を運ぶ ということだ
体幹が左から右ヘ切り返される ということは 左腕はプッシュ動作の局面であり 
左腕 プル    右腕 リカバリー
左腕 プッシュ  右腕 エントリー
左腕 リカバリー 右腕 プル
左腕 エントリー 右腕プッシュ
と シンクロする
 

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