水民マガジン 水泳 4つのフェイズ クロール篇
競泳の4種目のうち バタフライ バック クロールに関しては 4つのフェイズで説明できる
① プル
② プッシュ
③ リカバリー
④ エントリー
古くからあるタームで 目新しさはほとんどないのだが この4つで 語り尽くせる(いくつかの補助線は引く必要があるけれど)
クロールで説明しよう
まず 補助線として
プールの端から端まで移動する場合の 最短距離は 直線である
ヒトは右腕と左腕の間に巾があるので 平行する2本の直線をイメージしてもらいたい
それが水の中にある
約15センチから20センチの水面下に延びるレールである
片側のレールに 指先から腰までのラインを乗せて滑らせる
レールは水の中にあるので 水の中のレールに乗る ということは 体は乗せているレールの側に傾くことになる
のせているレールと反対側では 肩が水面上に出ることになる
右のレールに乗れば 左の肩が水面の上に出て 左のレールに乗れば 右の肩が水面の上に出る 以下 繰り返し
これがローリングである
これに 上記の4つのフェイズが絡む
どちらでも良いのだが 右からはじめてみよう
右のレールに乗ると 傾きは左オープンである 右腕をしっかりと前に出す
手のひらに圧を加えて 水を下に圧す そのまま 右肘を支点にして指先をプールの底に向ける これがプルだが 通常 プル(引く)というと 水を引き寄せる と考えるが 水を引くと水が動いて体が前に行くわけではない
そこで 意識としては 手のひらがある位置を肘に置き換える とすれば 指先から肘までのスパンの分だけ 体は前に移動するはずである
これがプルだ
プルが終了する時の形は 昔から『ハイエルボー』と呼ばれていて 手のひらのみならず 肘までのアームも使って水をとらえるのだが この位置 つまりプルが終了し プッシュ動作に移行するポイントは T字の骨(つまり鎖骨)のあたりにくるので わたしはこの位置の事を Tポイントと名づけている
正確なポイントで形をつくると ポイントが貯まるはずであり ひとつひとつは微々たるものだが 何ストロークも重ねると 大きなポイントになる
比喩的にギャグを使ったが 要するにストローク効率が良くなって 推進力が増す ということだ
プルの次にはプッシュが来るが プルの局面では 体の傾きは左オープンである プッシュの動作を単純に考えると 手のひらで水を後ろに押す だが プル同様 水を後ろに押しても 水の多くは後ろに流れてしまうので 手のひらの位置を極力固定しておいて 体を前に押し出していかなければならない
さらに重要な事は 手のひらで水圧を感じながらTポイントから大腿の前側まで 水を圧す と同時に 左オープンの胴体を腰から内旋しオープンサイドを右に入れ替える
これによって 体幹の筋肉を使って プッシュ動作がおこなわれる事になる
さらにこの事は 右から左のレールの乗り換えともシンクロしている
水を圧す腕の筋肉を使う動き 体軸の回転 逆側の腕のレールの乗り換え さらに(まだ説明していないけど)キックが加わって プッシュ動作は 最大の推進力を生み出す
プッシュが終わった時 体は右に開いていて プッシュの後半 すなわちフィニッシュ後 滞ることなくリカバリー局面に移行する リカバリーの腕は 大腿の前面付近から抜き上げられる
リカバリー動作は プッシュのときの体幹の内旋につながっているので レールの乗り換えができていれば リカバリー動作は自然に行われる リカバリーの腕は 無理に折り畳まないで肘から先の力を抜いて 肘のコントロールで前の方に運べば良い これは 体の開き(この場合は右オープン)をキープできるギリギリのあたりまで 止まることなく続けられる
このギリギリのあたりが レールの乗り換えポイントである
レールの乗り換えは イコール体の面の入れ替え イコールエントリーだが 乗り換えはスイッチを切り替えるように速やかかつスムーズなのが理想だ とわたしは思う
エントリー(入水)は 指先から水中のレールに着地して レール面にリードされて腕をのばしていく
この時 意識するべきは 重心の移動だと思う これに関しては いずれ詳しくやりたい
ここまでで 4つのフェイズについて説明したが これらは 胴体の向きと密接に関係している
体が傾いている時に開いている側をオープン側とする 右腕で説明すると
プル 左(オープン)
プッシュ 左→右
リカバリー 右
エントリー 右→左
となる
さらに左右のコンビネーションを説明すると プル局面とリカバリー局面 プッシュ局面とエントリー局面は シンクロする
が 各局面には始動と終動があるので それぞれのグラデーションの中で タイミングは微妙に違ってくるし そこがスイマーの個性である と思う
キックや呼吸については 別の機会に述べたいと思う
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