ジャズ評論にハマった頃
ジャズという音楽にハマったのは 自力ではなく そこに導いていった何らかの力が作用したからだ
そのひとつが ジャズ評論
植草甚一(J・J氏)の文章は 評論というより エッセイの気安さで読んでいた
ヒッチコックからジョン・カサベテスまで 守備範囲は広い
わたしが学生の頃は 映画を観られるメディアは 映画館とテレビしかなかったので 圧倒的に紙媒体の情報を手がかりにして 狙いすまして映画を観に行った
だから わたしがその頃観た映画は すべて傑作である(知らんけど)
J・J氏は だからといって 映画の評論ばかりしていたわけではない 例えば わたしの本棚に 現在 植草甚一の本が 5冊ある
『ヒッチコック万歳!』
『雨だからサスペンス映画を勉強しよう』
『映画はどんどん新しくなる』
ここまでは映画
『カトマンズでLSDを一服』
『モダンジャズのたのしみ』
と 異物が混入してくる
その異物のひとつがジャズだ
J・J氏は その他にも ミステリーについてとか アメリカの読み物についてとか 様々なカルチャーに 触れさせてくれた
ジャズに関しては 巷に出る入門書では あまり扱うことがない サン・ラやESPレーベルなど コテコテのフリージャズなんかも 網羅していたように記憶する
この人が 明治生まれと知り 驚きだ
随分と早くに亡くなったと思っていたが まあ しゃあない
そんな年令だったのだ
そして 恐ろしくモダンな人だった
先日 タモリが出てくるYouTubeの動画を見ていると タモリが影響を受けた人のひとりとして 相倉久人の名前を挙げていた
山下洋輔が ドシャメシャやっていた頃 もっとやれ と応援していたのが 相倉久人だったと言う
タモリが 山下洋輔の宴会に乱入して 才能を見出されたというのは 伝説となっているが 相倉久人の名前が最初に出たのに驚いた
驚いたというと 鈴木清順の映画『ツィゴイネルワイゼン』に ちょい役ででていたのにも驚いた
誰のコネなんだろうか?
わたしは ジャズの通史を 最初にこの人の本で読んだが 色々と彼の評論を追いかけているうちに ジャズの評論をやめてしまい 歌謡曲とかロックの評論を始めた
理由は ジャズは死んだ からだそうだ(知らんけど)
しかし わたし的には デビッド・マレーもいるし アート・アンサンブル・オブ・シカゴさんも健在だし AIRも良いし スティーブ・コールマンも気になるし
まだ ジャズには死んで欲しくなかったし 相倉久人のジャズ批評も読み続けたかった
サザンなどを語る相倉久人の本なども 何冊か読んだが そちらに興味を引っ張られることなく 最近(といっても2015年)訃報を聞いた
寺島靖国の本に 一時期すごくハマった
著者は 吉祥寺のジャズ喫茶メグのオーナーだが 世間では評価されている名盤も含めて バサバサと 辛口のジャズ喫茶のおやじ目線で切っていくのが 新鮮で痛快だった
同時に あまり日の当たらないミュージシャンもフィーチャーして 様々なジャズメンの知識を増やしてくれた
そんな中で ハンク・モブレーや ソニー・クリスなどのミュージシャンを知ることができた
モブレーは ブルーノート・レーベルの常連なので そのうち行き当たるだろうが ソニー・クリスや クロード・ソーンヒルや ジョン・オーバニーや ダスコ・ゴイコビッチや
寺島なしには 行きあたらなかったであろうミュージシャンは多い
しかしながら 何冊か本を読んだり 雑誌の評論を拾っているうちに どうも 肌が合わない部分も かなりある事に気づく
まず ジャズにシュールという文体を持ち込んだ唯一無二の作品 エリック・ドルフィーの「アウト・ツゥー・ランチ」を全く評価していないこと
マイルス・デイビスの「ラウンド・ミッドナイト」を演奏するときのブリッジのあの部分が嫌いだと言うこと(ボク 大好き!)
ダスコ・ゴイコビッチの「フィッシャーマンズ・ドーター」が最高だ とエンヤレーベルのオーナーに言ったら 「あれは最悪だ」と言い返されたという話 (わたしは 最悪とは言わないまでも いまいちだと思うので エンヤに同感) といったことなど
それは彼の評論に 好き嫌い という判断基準が かなり濃厚に入り込んでいるからだし 故に 彼の本の価値を高めている部分もあるのだが 好き嫌いの判断基準で語られると 同意できる部分は痛快で 同意出来ない部分には疎外感を覚える
そんな靖国だが(気安いぞ)意外な接点があった
わたしはかつて 業界では まあまあ大手のスイミング・クラブの社員だったのだが その中の吉祥寺の店舗の会員だったことが 最近読んだ本でわかったのだ
その店舗には 直接関わったことはないのだが
その節は お世話になりました
と言っておこう
中山康樹の「マイルスを聴け」は 衝撃だった
時々現れる大阪弁が おもろうておもろうて
この本をガイドブックにして マイルス沼にハマる事になる
幸いにして それは膝下ぐらいで収まったものの 「マイルスを聴け」を読むたびに マイルスのCDを購入したくなる
この人も 最近亡くなった
ジャズだけでなく ビートルズやビーチ・ボーイズなどの評論も 深く面白いが
『超ブルーノート入門』
『超ブルーノート入門 完結篇』
前者をガイドブックに ブルーノート・レーベルの1500番台を聴き 後者をガイドブックに 4000番台を網羅する
時間があったら 来村多加史の『風水と天皇陵』をガイドブックに 天皇陵の占地を巡る事と並び やってみたい事のひとつだ