トランプを生んだのは誰か。

 日本では今回の米大統領選は「反トランプ対トランプ」「トランプか、そうでない人を選ぶか」が争点と言われていた。蓋を開けてみると「民主党への失望・不信と反トランプ感情のどちらを取るか」だった。
「外から見るよりも遥かに民主党への信頼が失われているんだな」と感じた。

 危惧しているのは、トランプの再選を機に世界の最も大きな枠組みが「国同士の結びつき」ではなく、個人に依拠した「大国を指導する指導者による個人的なクラブになるのではないか」ということだ。
  トランプは首脳同士の一対一の関係や取引を好むと言われている。
 トランプ、プーチン、習近平、ネタニヤフのような人間たちの個人間の取引や利害調整によってすべてが決定されていく。そういう世界になるのではないか。
 今までも大国同士の取り決めによって世界が動いていた。だが今まではあくまで「国」が主だった。
 だがこれからは個人が主になり、個人間のネットワークでその人の利益のために物事が決められる。それがあくまで国を代表しているように見せかけられる。そんな世界になるのではという不安がある。

 トランプやプーチンなどがそういうことを目論んでいると言いたいわけではない(陰謀論)
 トランプがどう考えているかは関係がなく、トランプのやり方を通してその発想が自然と今後の世界の標準的な枠組みになっていくのではないか
 今までの世界の枠組みが「グローバリズムの推進が正しく、民主主義が普遍的な価値観だ」と言われていたように。

「トランプがいなくなってもトランプのような人は現れる」とよく言われる。経済だけが理由ならトランプのような極端な人でなくともいいはずだし、エリートやセレブへの反発だというならトランプやイーロン・マスクも富裕層だ。
 一体、何がトランプのような人を生むのか。
 中下流層の人たちの「見捨てられた感覚」がトランプを生むなら、それはどこから生じているのか。

「トランプ的なもの」が生み出され支持される流れの根っこにあるものは、

ここから先は

3,037字

¥ 400

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?