「飯沼一家に謝罪します」全4話。ネタバレ感想。
というわけで、第4話まで見た。
ホラーにしては珍しく、作内でほぼ全部「何が、なぜ起こったか」が説明されていた。
「幸せ家族王」に出演して賞金を獲得するため、飯沼一家は、民俗学者の矢代に厄祓いの儀式をお願いした。
「自分についた悪運や不運を封じ込める儀式」で、長男の替え玉を引き受けた岸本良樹以外の飯沼一家の三人は、長男・明正の名前を書く。
明正は自らが封じられることを避けるために、家族三人を呪い返す(もしくは元々行っていたオカルトの儀式が呪詛返しとして作用した)
明正の儀式によって(番組内の紙飛行機によって)飯沼一家の三人+良樹は輪をくぐり、肉体が生きたまま彼岸(四十九日までの裁きの場)へ行く。
「現世とあの世の境」に近い場所を巡ったり、輪を作ってくぐろうとすることで、四人は何とか裁きの場から脱出しようとするが果たせなかった。
飯沼一家は火事によって肉体を殺すことで、裁きの場から逃れる。
良樹と良樹に寄り添う矢代は肉体が生きており、さらに矢代が行った「四十九日の裁き」も効力がないため、魂のみが未だに裁きの場をさまよっている。
明正は自分が行った儀式が、良樹にも作用してしまったことを申し訳なく思い、贖罪のためにりんごを送り続けている。
細かいところは違うかもしれないが(火事を起こしたのは誰かなど)大筋はこうだと思う。
元々、人を呪うと必ずその呪いは跳ね返ってくる、もしくは返された時のために、プロの呪術師は身を守る術をほどこしている。
「呪う(封ずる)」のはそれくらい危険な行為で、(こう言っては何だが)高度で専門的な技術なのだ。
良樹の母が言うように「素人が手を出していいことではない」
明正の家の玄関の脇に人形のようなものが貼ってあるのは、呪いを返されることを恐れてではないか(たぶん奥さんと子供のぶん)
明正は良樹に贖罪を続けたり、今の家族とは問題なくやっている姿を見ても、本当に父親、母親、妹から呪われるほどの問題児だったのかと思う。
「当時は反抗期だった」「三人ととりわけ相性が悪かった」「三人のほうが明正を過剰に阻害していたのでは」など色々な考え方ができるが、自分は「儀式で家族三人を『悪いもの』として封じたことで明正は穏やかな性格になったのでは」と感じた。
「家族は個人の寄り合いであると同時に、共同体としてひとつの人格を持つ(役割分担をしている)」
四人でいた時は「家族の『負』『悪』の引き受け手」だった(引き受けさせられていた)明正が、引き受けていたものを他の三人に返すことで、本来の「明るく正しい自分」に戻れた話という見方もできる。
制作者の「家族の幸せがテーマ」「ハートフルな物語」という言葉にも合致する。
家族は本当、難しい面がある。
そういう意味では「飯沼一家」という事象と素人の行った儀式に巻き込まれただけの良樹は気の毒だった。
三話の旅行の映像以外はそこまで怖くはなく、怖がりな自分も十分楽しく観れた。
「説明がつかないこと」があったほうがもっと盛り上がったかもとは思うものの、自分のような鳥勢には怖さはこれくらいがちょうどいい。「最後までわからないこと」があると怖さが跳ね上がる。
自分は自分にとって「不可解なもの」が大好きなんだけど、「不可解なもの」にはもれなく「怖い」がついてくる。なので「不可解さ」と「怖さ」のバランスが(自分にとって)絶妙なものを常に探している。
こういう面白いモキュメンタリーが観ることができると本当に嬉しい。
次回も楽しみだ(あるよね?)
※余談:「自分が怖いと思うこと」を「恐さ感度(?)」を研ぎ澄まして書いたモキュメンタリーホラー。芥川龍之介の「藪の中」のオマージュです。
良かったら読んでもらえると嬉しい。