【エルデンリングキャラ語り】串刺公メスメルは、なぜこんなにもエモいのか。
※本記事には「エルデンリングDLC」のネタバレが含まれます。
メスメルはエモい(エロいとも言う)
外見ではなく、設定や性格がエモい。
レラーナが、カーリア王女という地位を捨てて影の地までメスメルを追っかけてきたと聞いても「それくらい狂ったように惚れ込む奴が一人くらいいるだろう」と納得できてしまう。
メスメルは一見すると冷静に理知的な話しぶりなので、何となく聞いているだけだと「そんなものか」と思ってしまうが、よく読むと言っていることが矛盾だらけだ。
というよりも無茶苦茶である。
(戦闘前)
不躾な侵入者よ、貴公が褪せ人か。
母は本当に王たるを託したのか、光無き者などに。
だが、我が使命は不変なり。
黄金の祝福無きすべてに、死を
メスメルの火を。
メスメルは母親のマリカから「祝福(光)無きものに死を」という使命を与えられている。
だが褪せ人はマリカから王として選ばれている(とメスメルは考えている)
普通であれば「殺すか殺さないかどっちだ」と悩む。
しかしこんな問題はメスメルにとっては「レベル1」だ。
即座に「だが我が使命は不変なり」と答えを出す。
しかし、戦闘が進むとさらに矛盾が出てくる。
(中間ムービー)
あってはならぬ、光無き者が王になるなど。
母よ。許したまえ
褪せ人よ、お前を喰らいつくしてやる。
光無き深淵の蛇が。
「光無きものが王になってはならない」
「光無きものは殺さなければいけない、それが自分の使命である」
そう言っていたメスメルは、突然そのあと「自分も光無き蛇(もの)である」と言い出す。
つまりメスメルの使命には「自分を殺すこと」が含まれている。
(プレイヤー敗北時)
光無き者よ、燃え尽きるがよい。我と共に。
メスメルは「使命には自分を殺すことも含まれていること」に自覚的で、自分が最後に殺すべき「光無き者」は自分自身であるとわかっている。
マリカは黄金律という閉じた輪を形成する時に障害となるものを、影樹に封じ込めた。
メスメルの火を祝福によって封じこめようとしただけならまだしも、影の地で黄金律にとって不要なものを焼くように使命を与えた。
いわばメスメルに汚名を着せて利用している。
(メスメル敗北時)
母よ、マリカよ。私は呪う、貴方を。
とすると、この最期の台詞は「メスメルがマリカをずっと恨んで憎んでいてその心情を吐露した」のか。
どうもそうは思えない。
もしメスメルがマリカに負の感情を持っていたり、自分の使命に対して屈託を持っていたのであれば、もう少しマリカから与えられた使命に対して疑問を口にすると思うからだ。
メスメルが憎んでいたのは
自分自身ではないか。
メスメルは、「邪な蛇、火の幻視」という自分自身の運命、在りようを憎んでいた。「マリカを呪う」と言ったのは、「自分自身の運命」をマリカという産みの親に仮託したのではないか。
つまりメスメルが呪っていたのはマリカという人(母親)ではなく、もっと象徴的な「自分を生み出した者(運命)」だったのではないか。
「黒騎士長、アンドレアス」と「黒騎士の副長、ヒュー」のテキストからも、メスメルの性格が伺える。
メスメルの台詞や状況と合わせて考えると「蛇たるを知った」というのは、「黄金樹を裏切った」の暗喩ではなく、文字通り「蛇であることがわかったからには従えない」という意味だと思う。
ヒューのテキストを読むと、メスメルは反乱した二人に怒りを向けていない。「自分が蛇だから仕方がない」という気持ちだったのではないか。
「自分を蛇と見て裏切った友人」に怒りを向けるのではなく、ただ「友人に裏切られる『蛇である』自分自身」を嘆いた。
メスメルの台詞やテキストを追っていくと、「自分を否定することを使命として与えられた」という矛盾の中で整合性を取って生きなければならなかった苦しさが伝わってくる。
生きるのが大変だったろうなという同情と、その辛さや大変さを他人に転化しなかった誇り高さがいいなと感じる。
「邪な蛇」「光無き者」という与えられた運命に抗うように、友情や愛情、葛藤を持つ普通の人間(若者)として生きようとしていたところがメスメルの大きな魅力だと思うのだ。
◆レラーナのメスメルに対する距離感は絶妙だと思う。
「自分ではメスメルの心を救うことはできない」ということがわかっていても、レラーナはメスメルの側にいることを選んだ。
この距離感だからレラーナはメスメルの側にいれたんだろうと思う。
メスメルもレラーナのことが好きだったと思うが(恋人だったと思うが)たぶんもう少し近づいたら、突き飛ばされて全力で逃げられる。
エンシスの砦と影の城の距離感(物理)を保っているところに、レラーナのメスメルに対する愛情と理解が感じられる。
◆余談
これだけ書いておいて何だがティエリエのほうが好きである。
トリーナ様にガチ恋しているティエリエを離れた場所からずっと見ていたい(距離感)