今の時代は、ジャンルは好みの物語とマッチングするための検索機能なので、もう少し細分化したほうが良くないか。
「和風ファンタジー」の話から派生して考えたこと。
ジャンルは、以前は漠然としたイメージでざっくり分けても問題がなかった。
だが今は、膨大な数の作品の中から自分の読みたいものにマッチングするために最初に依存する実際的な機能になっている。
「こういう感じの話が読みたい」と思い自分が探す時、ジャンル、タグ、タイトルで探すしかない。
ジャンルが細分化されていないと、うまくフィットすることが難しい。
例えば「13日の金曜日」のようなパニックホラーと、「近畿地方のある場所について」のようなモキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)は同じホラーでも中身がまったく違う。
モキュメンタリーを読みたいときにホラーで検索しても、上位ページにパニックホラーしか出てこなかったらジャンル検索が機能していないも同然だ。
「一人一人の好みに合わせる」のは不可能だ(それはそれで機能不全に陥るから意味がない)けれど、もう少し細分化されてもいいと思う。
「モキュメンタリー」のように、下位ジャンル名がある程度定着している場合はまだしもマシだ。
「異世界ファンタジー」は下位ジャンルの概念がないため混沌としている。(ダーク・ファンタジーはあるけれど、作品のカテゴライズとして機能しているかというと雰囲気だけな気がする)
自分が好む「異世界ファンタジー」は「ゲーム・オブ・スローンズ」や「グイン・サーガ」のような「現実とは違う縛りがある世界で生きる人の人間ドラマ」である。
世界観も従わせることが出来るようなチート能力で無双するのは、読む目的が違う。
これを「舞台が異世界だから『異世界ファンタジー』」という枠組みでくくられてしまうと、マッチングするのが凄く大変だ。
「異世界が舞台で、さらに人間関係や能力的にもファンタジー色が強いもの」という意味で、「チーレムや無双、ざまあによって、読者の万能感を満たす目的のもの」を「狭義の異世界ファンタジー」にして、それ以外の「現実とは違う世界の成り立ちが縛りとして機能している場所で、ある程度リアリティのある人間ドラマが展開されるもの」は「異世界ファンタジー」のさらに下位ジャンルとして「異世界ドラマ」「異世界史」(余りピンとくるジャンル名ではないけれど例として)などが欲しい。
自分は昔からチートモノが好きではないが、「余り話に乗れなかった」「別の話を読めばよかった」と思うレベルではなく、「それならそうとどこかに書いておいて欲しかった」「その手のタイトルを見ただけでイライラする」くらい好きではない。(ルサンチマン文学が好きなので好みが真逆なのだ)
ただそれは(当たり前だけれど)作品が悪いわけではないし、それを書く人や好む人が悪いわけでもない。ただの自分の好みだ。(逆に、何で創作でわざわざ負の描写を見なきゃいけないんだという人も多いと思う。「不幸話耐性がない」という表現を見た時になるほどと思った)
自分が長文タイトルに肯定的(だから自分も使う)なのは、「それならそうとちゃんと書いてある」からだ。
長文タイトルは「書き手のエゴのみ」のように思われがちだが、読み手に対しても親切だと思う。タイトルだけで内容の方向性がわかれば、好みの話を探すことも避けることも出来る。
短いタイトルでも「蠅の王」などだと、タイトルを読んだ瞬間に「ホラーかサスペンスか、とにかく暗い話だろうな」と伝わってくる。長い短いは関係なく、読み手に「どんな方向性の話か」がひと目で的確に伝わるタイトルであることが(今の時代は特に)重要だと思う。
書籍であれば帯文、レーベル(小説であれば表紙の雰囲気)などタイトル以外の判断材料もたくさんあるが、Webの場合は最初のひと目で入る情報がタイトル(漫画であればプラス表紙)しかないので、タイトルで読み手に配慮するしかない。
自分は疑似百合を好んで書くけれど、「女の子×男の娘」の組み合わせなど最初からまるで興味がわかない、苦手という人もいると思う。
好みがわかれる(わかれそう)なものであればあるほど、「好みに合っているかどうか」をひと目で判断できたほうが(してもらえるほうが)いい。
今の時代はタイトルもジャンル名もただのイメージではなく「検索のための実際的な機能」になっている。
「作品数が膨大で、読み手がマッチングするのが大変」という現状に合わせて長文化したタイトルが出てきて検索機能を高めているように、ジャンルももう少し細分化したほうがもっと実際的に機能するのではないか。
「既存のジャンル≒大ジャンル」の中で作品の多様性も出てきて、既存ジャンルの枠組みでは包摂しきれなくなっているので、読み手に対する配慮の一環として、大分類の下の小分類のジャンルも統一的に考えられていいと思う。
そうでないと自分などたどり着く前に力尽きてしまう。(根性なし)
誰か(どこか)やってくれないかなあ。