遅らばせながら、安野たかひろのマニフェストを読んでみた感想。

 都知事選も終わった今さらだが、都知事選で五位になった安野たかひろのマニフェストを読んでみた。

 世代ごとの現状の課題をあげて、それにどう対応するかがわかりやすく書かれている。
 本来は当たり前のことだと思うけれど、二位になった人の公約動画は見ているのが苦痛なほど中身がなかったので、現状を把握して具体的に解決策を提示している。それだけでも好印象だ。

 例えば少子化対策では「一人も産まない人」と「本当はもう一人欲しいが産まない人」では原因が違う、そのため異なった対策が必要ということが書かれている。
「妊娠と出産と育児の中で、どの立場の人がどの箇所で何が要因で産むことをためらうのか(もしくは望んでいるのに産めないのか)」ということを可視化して、それぞれの層に見合ったアプローチしないと少子化対策は難しいと思っていたので、これはいいなと思った。

 また高齢化が著しい地域では自動運転を促進して、ドライバー不足の解消と高齢ドライバーによる事故の問題の同時解決を目指す、認知症や孤独死の予防(健康チェックや見守り)にAIを活用するのは面白いと感じた。個人的にAIは認知症の予防に凄くいいと思っていたので、やってみて欲しい。

 読んでいる途中で「これだけのことをするにはかなり予算がいるのでは」と思ったが、何と

  • 安野たかひろが今回政策の5本の柱で掲げている各種新規施策は、現行の都の年間予算約8.5兆円の1%未満・500億円程度で実現可能な見込み

  • 東京都の税収は年間おおよそ1,600億円程度伸長。経常収支比率を考慮しても使える予算は毎年373億円程度増えている

  • 都知事任期の前半2年に分けて新規政策を実行すれば、税収増分で増えた予算内で全ての政策の実現が可能

  • 加えて、デジタルの活用による無駄削減、既存政策の見直し(都庁プロジェクションマッピングの取りやめなど)により、更なる財源の捻出・余裕を持った財政運営を目指す

  • 大枠の予算配分は変えず、既存政策の良い部分はしっかりと踏襲していく

(引用元:安野やすひろ「政策リポジトリ」)

既存の政策の予算の大幅な見直しはせずとも、財源の1%未満で実現・維持出来るらしい。

「これはぜひ試して欲しかったな」と思ったが、気になる点が二つある。

①具体的な政策としては良いけど、その結果「東京都全体をどういう方向に持っていくのか」というグランドデザインがいまいち見えてこない。

「首都だから多機能、多面的であるのは当然」なのは、国内視点ではそうだ。
 ただ読んでいて「世界の中で東京という都市の強みを確立させたいのでは」と感じたのに、その「強み」をどこに置くかがよくわからなかった。
「学術都市のポテンシャルが大きい」ということが書かれていたので、大学や企業、研究施設を誘致して、都内の区市町村で実証実験(モデル都市化)できるというイメージを漠然と持った。
 人口減少対策(含少子化対策)雇用の創出、人材育成、高齢者対策がいっぺんに出来る……「スマートシティのモデルケースになることで、具体的な問題を解決していくことができる」という話かな? と思ったけれど、それが別々に書かれているように感じたので、もう少し全体像としてはっきり打ち出したほうがわかりやすいと思った。

②避けられないことだとしても、AIによるスマートシティ化が心情的に受けつけない。

 自分は超古典的なリベラルなので、個人の情報をAIが管理するという発想に強い抵抗がある。今も受け入れている(いれざるえない)部分はあるが、必要最小限にしたい。
 災害時の避難所の出入りをAIで管理する、人数や大まかな属性を管理することで必要な物資や人員を迅速に判断して分配できる。
 凄い便利だし、安否確認もしやすい。年配のかたや子供もいることを考えても、そうなったほうがいいよなと思う。頭では。
 でも自分の居場所をAIにチェックされ「その避難所に自分がいる」という情報を管理されるということに違和感を抑えきれない。

 自分が都民で、マニフェストを読んでこの人に投票するかどうかはここが最大の判断ポイントになると思う。

ということとは完全に矛盾するのだけれど、この政策を自分が住む自治体で試しにやって欲しいなと思った。
 例えば自分が気にしている(災害時の避難所などの)公共施設の入退所のデータをプライバシーを保護しながら管理できるのか、委託事業者の選定はどうするのか、予算は当初の目論見通りで足りるのかなど、実際にやってみないとわからないこと、やってみたら想定外だったことなどたくさんあると思う。

 まずは市町村規模で管理運営できるか、言い方はなんだけど実証実験をやってみたほうがいいのではと感じた。
 どうせどこかでやるなら、自分がいの一番に体験したい。
 自分の理念(偏見とも言う)より便利さやリスクへの安心感が上回れば、手のひらくるんして推進派になりそうな気がする。
 それくらい人口問題、高齢化社会への対策は待ったなしだ……というのはわかってはいる。いるんだけど。

 その実績をもって将来都知事選に臨めばいいのでは、とは思うが、まあそこは他人が口出しすることじゃないな。

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